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星のや沖縄 | 今ここにあるもの

「みんなで旅行しようよ。」と久々に集まった大学時代の友人6人で盛り上がった。そのうちのひとりが年末から海外赴任が決まり、集まれるうちに行こうよ、ということで話が決まった。わたしは正直なところ、大人数での旅行がちょっと苦手。でも、なんだかみんなとのとっておきの思い出を作りたいと思い、とりまとめ役を買って出ることにした。日程調整がうまくついたわたしたちは沖縄旅へ出ることにした。目的地は「星のや沖縄」になった。

女6人の旅である。羽田と成田からそれぞれ那覇空港に集合し、今回はレンタカーで移動する。6人乗りのちょうどよいレンタカーがなかなか見つからず、わたしたちはanycaを利用した。anycaはエアビーの車版みたいな感じで、オーナーがそれぞれ価格や条件を設定している。良心的な価格でつけてくれている方や、引き渡し場所も臨機応変に動いてくれる方が多くて、重宝している旅のお供アプリである。

読谷村へ向かう途中、アメリカンビレッジへ寄り、お昼ご飯。まるでアメリカのようなテンションがあがる空間に、わたしたちははしゃぎながら、エリアを回った。こんな風にはしゃいでいると、大学生のころに戻ったみたいだ。くだらないことで笑いながら、買い物したり、写真をとったりした。

15時のチェックインを目指して星のや沖縄へ向かう。平日だったからか、渋滞することなく無事に到着。レセプションへと案内してもらった。深い、深い海のような、どこまでも深い青。さっきまで強い日差しの中を歩いていたせいか、余計に深く感じた。その青の深さが心を落ち着けてくれた。

室内にはいくつか不思議なかたちにうねった木のオブジェのようなものがあって、恐らくサンゴをイメージしてるのだろうと思った。じっと見ていると、スタッフさんが本物の木を使っていることを教えてくれた。まさに、非日常へいざなわれる空間だった。

レセプションを抜け、カートに乗せてもらい、白く大きなグスクウォールの中へ。このグスクウォールこそ、星のや沖縄の象徴だ。”グスク”とは琉球王朝時代の城のことを意味する。

「もしも海岸沿いにグスクがあったならば」というのが星のや沖縄の発想のはじまりだそうだ。その時代、グスクは山の中や高台に作られることが多かったらしい。何故なら、グスクは争いから生活を守るための場所であったから。だからこそ、もしもこの平和な時代にグスクを作るなら。海が見えて、風を感じられる、自然海岸に沿ってグスクをつくり穏やかな生活をはぐくんでいけるのではないか、という発想なのである。今でこそ、沖縄はどこまでも平和なイメージがあるけれど、かつていかに壮絶な時代を歩んできたのかという、その歴史のかけらをどこかに感じた。

グスクウォール

グスクウォールをくぐり抜けると、豊かな緑が広がる庭に出た。開業から間もない星のや沖縄の植生はまだ発展途上だという。それでも沖縄らしい花々がわたしたちを出迎えてくれた。

今回泊まる部屋は、ハルとフゥシ。ハルとは「畑」、フゥシは「星」を意味している。全室がオーシャンフロントの設計で、客室からは鮮やかな青が広がった。レセプションの深海から、上にあがってきたようなすがすがしさがあった。季節は冬に入るころだったけれど、半そででも十分な気候だった。

壁の色がすてきな掘り炬燵の空間
11月とは思えない海の輝き

さて、ウェルカムドリンクを施設内の「道場」で楽しめるとのことでわたしたちは早速道場へ向かった。わたしは幼少期、剣道を習っていたので「道場」と聞くと、稽古場を思い出し少し背筋がシャンとしてしまう。

星のや沖縄に道場が建てられたのは、武道のひとつである空手が沖縄発祥であること、も理由のひとつだそうだが、それだけではなく、沖縄の「公民館文化」からも着想を得ているらしい。沖縄には地区ごとに公民館があり、集会や発表会、いろんなことで人々が集まる。星のや沖縄の道場も、そんな風にときにアクティビティをしたり、ときにお茶を飲んでまったりしたり、ときにただ景色をながめたり、人々がいろんな目的で道場を使えるように、という目的もあるようだ。

一歩踏み入れると、杉のかおりが全身に感じられ、そこから外を眺めると海が広がる。波の音が心地よく、わたしたちは沖縄伝統の「ぶくぶく茶」を心ゆくままに楽しんだ。同じ景色、同じ感動を分かち合う、その喜びこそがこれが友人との旅行の醍醐味のように思う。

ぶくぶく茶とちんすこう、そして海

間もなく日が落ちる。わたしたちは水平線にむかって落ちてゆく美しい夕日を眺めるためプールへ向かった。星のや沖縄のプールは加温式のインフィニティプールで、1年中、朝から晩まで楽しめる。まるでお風呂に入っているくらいに温かく、わたしたちは思いのほかはしゃいでしまった。

水平線に夕日がかかった。今日という日をみんなで過ごし終えようとしている。学生の頃、わたしたちはみんなひとり暮らしをそれぞれしていて、でも徒歩10分圏内にはみんながいて、朝から晩まで一緒にいることもよくあった。酔っぱらったあの子を迎えに行ったり、誰かの恋沙汰に集まり、缶ビールを飲みながらいつまでも話したり、誕生日を祝い合い、いいときもそうではないときもいつも一緒にいた。今思えばなんてことのない日々が、あの頃は毎日がイベントで、喜怒哀楽を分かち合って、本当にキラキラしていたんだと思う。今を生きるということに、執着できていた。今という時間をめいいっぱいに生きていたんだと思う。わたしたちはまるであの頃のようだった。目の前にある自然の姿に感動して、心を委ねて、自由だった。沖縄に吹くおだやかな風が、あの頃のわたしたちを少しだけ思い出させてくれた。

今ここにある景色、もの、きもち、それをずっと抱きしめていく。

毎度のことながら、思い出を振り返ると長くなってしまう。今日はここまで。


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