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エッセイ / だからシーシャが好きなのよ

私はタバコは吸わないけどシーシャ(水タバコ)は好きだ。東京で一人暮らしをしていた頃は、マイシーシャを持っていたほどに。友達と遊ぶときも、友達が嫌がらなければシーシャバーに行くことも多い。

なぜタバコは嫌いなのにシーシャは好きなのか。その理由は、はじめは自分でもよくわからなかったけど、最近少しずつわかってきた。

ひとつ目の理由は、シーシャは深呼吸を促すものだからだ。呼吸って、意識を向けなければどうしても浅くなってしまうものだと思う。でもシーシャを吸うときは、自然とたくさん息を吸って、たくさん吐く。そうして深呼吸をすると、気持ちがリラックスしてくるのだ。

調べてみたら、実際に呼吸と感情とはそれぞれ影響し合う関係にあるらしい。脳内では、呼吸と感情を司る部分が同じ場所にあるのだそうだ。

他に何をするでもなく、自然と呼吸に集中ができるのは、シーシャの大きな特徴なんだと思う。そうしてシーシャを吸っていると、いわゆる「チル」な気分になってきて、なんともいい気持ちなのだ。

二つ目の理由は、シーシャそのものというより、シーシャバーが好きな理由なのだけど。シーシャバーという空間は、都会には珍しい「家」的空間だと思うからだ。

シーシャを吸っていると、それだけで場が持つ。居酒屋のように、「飲み物(食べ物)がなくなったから、次を頼まなきゃ」と考える必要がない。最初にシーシャさえ頼んでしまえば、数時間ずっとだらだらとできるのだ。

しかもシーシャ屋にはたいてい、座り心地の良いソファが用意されているし、灯りも暗めだし、人の話し声も大きすぎない。ドリンクバーが用意されているところも多い。ゆえにまるで家のような居心地の良さなのだ。

田舎だと、自然のなかとか、人気がほぼない公共スペースとか、人目や時間を気にせずだらだらできるスペースも結構あったりする。でも都会だと、そういうスペースを見つけるのはなかなか難しい。

だから私にとって、シーシャバーは都会には珍しい、安心してだらだらできる「家」的空間なのだ。

もちろん、シーシャはタバコと同様、身体によくない側面もある。だからそんなに頻繁には吸わないようにしている。でも、そのよくない面を踏まえたうえでも、シーシャを楽しみたいときもあるのだ。

私は今まで、喫煙者の気持ちがあまりわからなかった。身体によくないものだから、大切な人が吸っていたら心配になるし、控えてほしいとも思ってきた。でもきっと、喫煙者の人たちにも、私がシーシャを好きなのと同じくらい、それを好きな理由があるんだろう。デメリットを踏まえた上でも、得たい体験があったりするんだろう。

よくないとされているものを、よくないから辞めろとただ切り捨ててしまわずに、「よくないけど、あえてやっている」気持ちに思いを馳せる想像力。そんなものも、私はシーシャからもらったのかもしれない。



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