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万葉週話no.6《番外編》ドラ○もん的ポケットな耳を有する蟹の王子が、ポジティブMAXに話を進めるインド民話「蟹の王子」

こんにちは。
暑くなると何故か暑い国の民話を読みたくなる、絵本作家のまつしたゆうりです。
今日は万葉集を飛び出し、リクエストいただいたインド民話の中でも1番のお気に入りのお話をご紹介したく!!

インド民話、ご存知ですか?

「インド神話なら少し…」という方もいらっしゃるかもですが、「民話」と言われてパッと思いつくのはなかなか難しいかと。

インド神話でいえば、首をチョン切られても
他の体にポンッとくっついて平気だったりする
謎展開を思い出しますが(ガネーシャの話)
民話の方も、まあ、似た感じのぶっ飛びっぷりが大変
魅力的です。(笑)

今は絶版になっている渋沢青花氏著の『インド民話集』

この中に収められている「蟹の王子」が
特に!とーくーに!!お気に入り&オススメで!!!

読んですぐ蟹王子の魅力に囚われてしまい、
蟹のポーチに蟹の帯留めを買い、
「蟹の王子の着物コーデ」をするほどの狂いっぷりでした。
(あと、CVを(キャラクターボイス)想像したりしてました(笑))

「蟹の王子」とは

「蟹の王子」の物語は、一人の後家さんの登場から始まります。

夫に先立たれ、身寄りがなく、家も無くした婦人は
川辺のあばら家に辿り着きました。

そこには一匹の赤い蟹が住んでいて、
婦人は蟹を息子のように可愛がり
蟹も婦人を「お母さん」と呼んで仲良く暮らしました。

「蟹の王子」というからには
「蛙の王子」的な展開を想像してしまってたのですが…
婦人と蟹は「親子」なのですね。

まあ、蟹が息子ってどうなんだというツッコミはさておき。

ある日、婦人は泣きながら蟹に言います。

「ああ、お前は息子のように優しいけれど
実の息子のように養ってはくれないかねえ。」

お母さん…蟹に何て無茶ぶりを!
蟹なんだから、むしろこっちが養うというか
飼う方では。

すると蟹は
「なんだ、そんなことか。
それなら心配しなくていいよ!
一生困らない分の食べ物を持ってくるから、
安心して床でも掃いてなさい。」

なんて自信満々なの蟹なのに!
(なんかもうこの辺りで
蟹の只者じゃなさが気になり始めてます(笑))

蟹は市場に行くと、小麦売りの男に言いました。

「お兄さん、僕の耳で持てる分の小麦を売ってくれよ。」

…はい?

耳と仰いましたか。
蟹の耳。
耳?!

ここから数十分、Google検索で
「蟹 耳 インド」などで調べまくりましたよ…
(成果なし)

耳って何。
耳って何処。

の、疑問を軽くすっ飛ばしながら話は進みます。

小麦売りのお兄さんは笑いながら答えます。
「耳で持てる分なら、どうぞタダで持ち帰っていいよ。」

そこで蟹は小麦売りの隙をみて
山のような小麦を耳に入れて家に帰り、
床にぶちまけました。

「ただいま、これで食べ物に困らないね!」

……いや、もう、ツッコミが追いつかない…(笑)

「耳で持てる分はたいしたことない」っていう
当時のインドの一般常識はあるのね。

で、蟹はその常識外の耳を持ってて
何故か四次○ポケット的に使えるのね?

で、床にぶちまけるために、婦人に
「床でも掃除してなさい」って言ってたのね…
(何で食べ物を床にぶちまけるの?!)

そもそもこの蟹のサイズ感って
どのくらいなんだろう…。

沢蟹レベルだと思ってたけど
タラバ蟹くらいあるの??

もう、脳の中で映像化できなくて
バグってきたよ……

話はここから
まだまだぶっ飛び展開を続けます。
(蟹王子のポジティブ発言もエスカレート!!)

話型としては

このお話の話型としては

異類婚姻譚+難題婚+貴種流離譚

な展開をとっています。

異類婚姻譚は、日本では「元の姿」が人外であるゆえ
悲劇的結末になるのですが、
他の地域では「元々が人間」という場合が多く、
「美女と野獣」「蛙の王子」のように
ハッピーエンドを迎えるようで。

インドもその例にもれず、
超が付くほどの大大大ハッピーエンド展開です。(笑)

なんで皆がこんな自分勝手なのに
みんな幸せになれるの?!

と、ツッコまずにはいられないのですが
蟹王子のポジティブしかない発言が
一周まわって物凄く素敵に見えるというか
「蟹なのに何でこんな自己肯定感強いの?!」
というくらい無敵メンタルなんです。

蟹でいることがハンディキャップではなく
むしろ強みに見えるというか…。

結局、蟹の姿も趣味でされていたような感じで(笑)
人でも蟹でも、「彼」の中身は変わらないから
行動も変わらないんですよね。

外見の違いで行動を変えることをしない姿は
「もうちょっと考えようよ…」という気持ちも湧きますが、
何だかんだでオールオッケーになるところを見ると
「まあ、何とかなるのか!」
という謎の「メンタル満ちる感」を与えてくれます。

自分で自分につく嘘は
一番気付きにくくて
一番ダメージが大きい。

そう思うと、
「自分に正直に生きる」ことが
何より幸せへの近道かもしれないなと
幼い頃の無敵万能感をどどーんと
思い出させてくれる作品です。

皆さんも蟹王子を見習って
お家の中、自分ひとりでいるときくらいは
自分に真っ直ぐポジティブGOGO!思考を
してみてください〜!

📺アーカイブ動画はこちら↓

🦀蟹の王子の続きの解説は
本屋発の文芸誌『しししし2』にてエッセイを寄稿しております📗
よかったらご笑覧ください〜*

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