キングカズの客寄せパンダ問題
サッカーファンの間でよく議論が二分するのが、キングカズこと三浦知良選手の「最年長記録」問題。
日本サッカー界を担ってきたカズは54歳にして現役。いまだにサッカーファンたちをワクワクさせてくれる絶対的存在だ。
そんなカズは、もちろん出場さえすれば自然と「最年長記録」が更新されるため、メディアは毎度声高らかにそれを伝えてくれる。
それが注目されるだけあって、(ネットの声はごくごく一部だという前提だけれど)「最年長記録のために少しだけ出場するとはいかがなものか?!」という声を目に(ネットだから耳にじゃないよね笑)することがある。
こういった話はカズの最年長記録だけではなく、いろんなジャンル、特にスポーツや音楽・芸術の世界でよくある話だ。
同じサッカーでいうと2018年のW杯ロシア大会。ラスト10分間のパス回しによる時間稼ぎを覚えているだろうか。
28日深夜(日本時間)のほぼ同時刻に始まった日本―ポーランド、セネガル―コロンビアの2試合。「引き分け以上」で16強が決まる日本とセネガルだったが、59分に日本、74分にセネガルが失点し、両国が2位通過を争う展開となった。
ともに「0―1」のまま終われば、イエローカード数の差で日本が2位となる状況で、82分、MF長谷部誠選手(34)が伝令役を担って投入されると、日本は攻めずに自陣でのボール回しを開始した。
https://www.google.com/amp/s/www.yomiuri.co.jp/special/worldcup2018/news/3377/amp/
深夜にも関わらず大勢の国民が応援していて、これには「日本の恥だ」「いやいや勝ちにこだわった結果」などと大混乱したのをよく覚えている。
こういった議論がよくなされ、それもなかなか分かり合えないことの原因は、
「神聖派」と「エンタメ商業派」という二つの考え方があるからではないかと思っている。
キャッチーに派閥に分けて書いてしまったが、もちろん正か否か・白か黒かではない。
どちらの考えがより強いか、というグラデーションになっていると思う。
「神聖派」とは、スポーツを神聖なものとして見ていて、勝つことが何よりも大事。金儲けが先行するのは大反対するようなイメージ。
そして「エンタメ商業派」とは、スポーツをエンターテインメントとして見ていて、楽しむことが大事。スポーツもビジネスであると考えているイメージ。
もう一度言うが、どちらの考えが強いか…であって、極端に白黒つけるものではない。ついでにどちらが正しい・間違ってる、という話でも全くない。
それを踏まえて、ここからはわたしの嗜好の話。
わたしはどちらかと言うと、“プロスポーツ”においては「エンタメ商業」だと思っているほうだ。
“プロ”スポーツとして市場を活性化させる、あるいは“プロ”スポーツ選手として食っていくために商業化は逃れられない。
資本主義の世界では、スポーツ選手を職業にしない限りは、本気で打ち込む人たちも増えず発展していかないだろう。
わたしたちがこんなにも白熱してスポーツを観られるのは、スポーツがプロ・商業として発展してきたからだ。
もしサッカーが商業として発展してこなかったら、この世に埼スタも存在していなかったかもしれない。そう考えると恐ろしい。
それでいうと、「客寄せパンダ」という言葉はネガティブな意味で言われがちだけれど、究極プロサッカー選手であれば客寄せパンダである方がいい。と考えている。
ファンをつくり人を呼ぶことこそ「プロサッカー選手」だとわたしは思う。
ファンを作り国民の熱狂を生み、商業化して強化され、少しずつそれが「文化」になっていく。どのスポーツもきっと商業化という部分において苦労しているのだと思う。
日本サッカーができあがる頃、Jリーグ開幕のその瞬間なんかのことはまったく知らないが(めちゃめちゃ立ち会いたかった)、
日本サッカー界を盛り上げ、サッカー選手というブランディングまでをも担った、言わば「日本サッカーという文化」を創った人物はまさにカズだと思っている。
サッカー以外の、ファッションや振る舞いや生き様も含めてサッカー選手としてのブランドをカズは築き上げた。
わたしは決して、歴史をつくった偉人だから敬おうと思っているわけでもない。
こういうスポーツや芸術の世界は「良いか悪いか」「正しいか間違っているか」の話ではないはず。
自分が「好きか嫌いか」という軸でよくて、わたしたちはついついこっちの議論が苦手なようにも思う。
--------------
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?