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2021.4.11 明治安田生命J1リーグ 第9節 ヴィッセル神戸VS清水エスパルス マッチレビュー

3連勝で迎えた清水エスパルス戦。ロティーナ率いる清水に勝ち星を上げたかったが勝ち点1を拾うのがやっとという内容だった。試合での良いところは後半35分からの10分間のみ。虚無感しかない試合内容だった。

[スターティングメンバー]

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サンペールがベンチ外となり、ボランチには郷家、トップには藤本が起用された。

[清水の狙い]

前半から清水の狙いは一貫して神戸の選手を引きつけながら裏を狙うこと。神戸が前からプレスに来るのを分かっていて勇気を持ってつないでいくことで自分達のボール保持と優位性を保っていた。

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清水はGKの権田を交えて最終ラインから菱形を形成してビルドアップを行う。神戸は2トップが猛然とプレスに行くわけだが必ずどちらかのCBがフリーになる。そこから清水はボールを運んでいく。神戸のSHはCBと背後のエウシーニョか中村の両方を見る形となり安易にプレスにいくことができなくなる。来なければ運ぶし、来たら空いてるところにパスを出す。

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神戸のプレスを空転させればハイラインを敷いているのでシンプルに裏をついて行く。サッカーで点を取るための原理原則とも言える背後へのパスを清水はどのように送るかをチーム全体で共有できていた。特に背後へのボールは中村から出ているのがほとんどで非常に厄介だった。酒井が中山を前から捕まえられているときは神戸がボールとれていたが捕まえられなければ確実に酒井の背後を突かれていた。清水は神戸の2トップとSHに迷いを生じさせるポジショニングを取ることで優位性を保ち、プレスを空転させるのが狙いだった。

[サンペール不在]

この試合、サンペールはコンディション不良によりベンチ外だった。しかし、神戸がやろうとしていたサッカーはサンペールありきでのサッカー。これを今節も継続していた。山口と郷家がサンペールの位置でボールを受けようとするがボールが渡っても前を向けない。前が向けないのでボールは前進しないし、サイドを行ったり来たりするだけ。そして相手を引きつけて味方にスペースを与える余裕がないのでボールを出したところで詰まるのが落ちという最悪な状況。前半後半通して、サンペールの重要性を再認識するだけの試合となってしまっていた。

さらに神戸のビルドアップでプレス回避する際は前川を経由することを理解しており、必ずチアゴ・サンタナがGKへのボールを遮断出来る位置で牽制していたことにより下げてもなかなか繋ぐことが出来なかった。結果的に清水に8本ものシュートを許してしまい、前半は終了する。無失点に終えられただけがポジティブに捉えられる唯一の要素だった。

[ロストフの悲劇再来]

後半15分に神戸は交代カード2枚を切る。藤本と中坂の代わりに増山と初瀬を投入。そしてトップに郷家、ボランチに井上の位置に変更する。藤本に関してはこの試合も無得点だったわけだったが彼のせいでは無いと個人的に感じている。それは前から行くと言うことに関しては遂行していたし、清水が絶妙なポジショニングのおかげで神戸はシュートすらも打たしてもらえない状況だった。さらに言えば古橋のように落ちて受けるような選手ではなくペナルティエリア内で勝負する選手である。そのような特徴を踏まえればゴール前まで運ばせてもらえない状況では藤本も仕事を果たすことが出来ないだろう。決定的なシーンがなかっただけに藤本の使い方の問題のような気がする。

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そして後半29分に試合が動く。神戸のコーナーキックを権田がキャッチしそのままロングカウンターで運び最後はチアゴ・サンタナのクロスに合わせたエウシーニョがゴールに流し込み先制する。このゴールはロシアW杯ベルギー戦の逆転ゴールにシチュエーションが似すぎており、まさにデジャブだった。この失点は個人的に防げる失点だったと思う。1つ目は初瀬のキックだ。時間帯を考えればカウンターを食らうことを考えてボールは蹴らなければいけなかった。ファーを狙っていたのか、あの場所を狙ったのかは定かではないがGKが安易にキャッチできる範囲に蹴ることは判断として誤っていたと思う。2つ目はGKがキャッチした後、イエローカード覚悟で邪魔しに行って欲しかった。あそこでそのようなプレーが頭の中にあり、選択できるか否かで失点したか防げたかは決まっていた。すべての判断にミスが重なりあのようなゴールを許したことを見てもまさに「ロストフの悲劇」の再来だった。

[負け試合を引き分けに出来る力]

しかし、清水の体力もかなり落ちてきており、神戸がボール握れるようになってくる。するとサイドでフリーな選手を作ることが出来るようになっていた。

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そして後半43分、神戸が同点に追いつく。右サイドでフリーの櫻内がクロスを上げ、逆サイド初瀬に渡る。そこからにニアに飛び込んだ古橋が合わせてゴールを奪う。櫻内が投入される前から山川がフリーで受けるシーンが何度かあった。クロスの精度で言えば櫻内の方が高いのでこのカードの切り方と時間帯は良かったと思う。そして古橋は神戸を救う4戦連続となるゴールを決める。いつものかわいいルックスからは想像できない「ゴール前は戦場」と言わんばかりのエゴイスティックさに驚きを隠せない。そして同点後にも郷家がドンピシャヘッドをお見舞いするがここは日本代表GKの権田による好セーブで追加点を挙げられない。キックオフから80分までの試合の流れでは想像できないような展開で神戸が立て続けに決定機を作った。試合はこのまま終了となり、神戸は4連勝とはいかなかったものの4試合無敗をキープした。

[まとめ]

清水は試合を上手く支配してゲームコントロール出来ていたが最後のところで詰めが甘かった。このような勝ちゲームを落とすところは昨季のフィンク神戸と重なるところがある。野戦病院化し、連戦による体力消耗でゲームコントロールが出来なかった時、勝ち点を積み上げることが出来なかった。ロティーナ監督も今年就任したばかりで最後までゲームコントロールするためにどうすれば良いのか頭を抱えているのだろうと思う。

神戸としては負けゲームを引き分けに持ち込んだ。強いチームは試合内容が悪くても負けないというのはよく言われる話だが神戸も粘り強さは存分に出た試合だった。しかし、これで良いと言うことではない。無秩序にゲームを進めていく姿には目も当てられない状況だ。いま勝ち点が取れているのも一種のガチャ要素であるに過ぎない。フィンク期では適切なポジショニングでゲームをコントロールするというコンセプトのもと試合を戦っていただけに勝ちゲームは勝ち、負けゲームは負けといった不確定要素がかなり取り除かれていた。しかし、三浦監督になって無秩序さが露見していることによってオープンな展開によるチャンスメイクなどの不確定要素が含まれるようになっている。だからこそ清水のように勝つ確立を高めていく戦い方をするチームに個人の能力と無秩序さで引き分けに持ち込むことが出来ているのだと思う。逆に勝ち点を落としているゲームはシステマチックな戦い方をしてくるチームとの対戦というのもまた皮肉なことだ。徳島、名古屋、川崎、清水はどれも自分達のコンセプトを明確にしながら戦っていくチームである。このようなチームに勝つことが今後の課題であるのは目に見えているのだ。試合内容は目も当てられないくらいひどい有様ではあるがとにかく残留ポイント稼ぐことが先決である。それを達成すべくアウェー湘南戦に臨んで欲しい。

ヴィッセル神戸1-1清水エスパルス

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