見出し画像

2021.4.21 YBCルヴァンカップ GS第4節 ヴィッセル神戸VS徳島ヴォルティスマッチレビュー

リーグアウェー湘南戦から中3日で迎えたルヴァンカップ徳島戦。大幅にメンバーを入れ替え、臨んだ一戦だったが0-1での敗戦。我々がやりたいことを試合全体通してやられてしまった印象である。そのため負けたと言う事実以上に悔しさや悲しさ、失望感など多くの感情を抱くことになってしまった。しかし、ポジティブな面もあったのでその点を含めて振り返っていきたい。

[スターティングメンバー]

アウェー湘南戦からは8人を入れ替えてきた神戸。徳島も過密日程により大幅なターンオーバーを行った。

[徳島のビルドアップ]

徳島のビルドアップのバリエーションは豊富で人も流動的に動く。しかし、即興で流動的に動いているのではなく、ある目的をもってビルドアップを行いボールと人を前進させているということだ。その目的は神戸のCHーSHの鎖を寸断し、ボランチ脇でボールを受けることである。

1つ目は吹ヶが3バックの一角となり、藤田征也を押し上げる形。神戸の2トップに対し、3バックで数的優位を作りフリーにさせる選手を作る。ここに対してプレッシャーが掛からなければ持ち上がったり、パスで相手をつり出す。この状態では増山と安井はピン止めされている状態なのでこのライン間に徳島の選手が入ることで前進する。また安井の位置をずらすことで河田へのパスラインも確保することが出来る。

2つ目は吹ヶが下りずにひし形でビルドアップする形。アンカーポジションにボランチの選手が1人入り、もう片方はIHの位置でボールを受ける。この時もGKを交えて数的優位を作り、ボールマンに時間とスペースを創出することと吹ヶと鈴木が神戸の選手を動かすことでライン間にボールを通す。この際、小西の位置に入るのは小西のみということでではなくて戦況に応じて西谷と河田も顔を出す。流動的に人が動いてボールを受けるが決まったポジションに選手が入るということは徹底されている。

[神戸と徳島の差異]

では神戸も立ち位置を気にしながらボールを回すことが出来ているのになぜ徳島のようなきれいな前進が少ないのか。それは適切なタイミングと相手を動かすという意識だと思う。

神戸のビルドアップも徳島同様、ボールの落ち着く場所を作るために変則的に3バックあるいはGKを交えたビルドアップを行う。しかし、そこからの前進の仕方は全く異なる。最も異なる点はボールを受けることを最優先に考えていることだ。本来の目的はボールを前進させることであり、細かくつなぐことではない。それはボランチだけでなく、ハーフスペースに立つ選手も同じことが言える。神戸のボランチはボールを受ける場所に既に入っているのに対し、徳島は受けたい場所には入らずボールがルックアップした瞬間やマークされている選手と距離が出来た時など適切なタイミングで飛び込んでいる。

神戸の選手がどのようにボールを受けるか渡すかしか考えていないのに対し、徳島の選手はボールを受けたい位置でどのようにすれば時間とスペースを確保して受けられるかを全体で共有できている。

[小さな妥協から失点へ]

前半30分、ビルドアップのミスから神戸は失点してしまう。中途半端にポゼッションしているチームの典型的な失点の形と言っても過言ではない。安井のところでボールをカットされたわけだが彼だけの責任ではなく、全体の責任である。パスを出した櫻内もパスを受ける前に受ける準備ができておらず、周りを見る余裕もないのでパスを出すことにしか考えていない。まさに爆弾ゲームの爆弾を渡してるようなパス回し。そのようなシチュエーションを作ってしまったのも時間とスペースを創出するための意識が抜け落ちているからだ。例えば失点する直前の初瀬のバックパスには意図があったのだろうか?フリーでプレッシャーもかかっていない。なのに前を向く仕草も見せずパスコースがないというだけで返している。そこにはバックパスを返した小林に少しでもフリーで渡してあげるという意識はなかっただろう。結果論にはなってしまうのだがこのような小さな妥協から結果的に大きなミス繋がっているのだ。前述した通り、ボールを受けるか渡すかしか考えていないからこのように自ら徳島のディフェンスにハマりに行っている。以前であればここも相手と読みあいを繰り広げながら高次元の戦いを見せてくれたに違いない。

[2CBと櫻井のプレー意識]

しかし、ある程度ボール保持しながら前進が出来ていたのは大崎、小林、櫻井のプレーによるものだった。この3人はこの試合できるだけ相手を引き付けながら前進することを意識していた。大崎に関ししてはそのようなプレーが持ち味であったが櫻井のプレー意識には脱帽した。キックオフ直後から最終ラインに落ちてボールを運んでいたが列下りしても運べたのは彼の中長距離フィードの精度とスペース認知能力の高さが影響していたと思う。

前半34分に見せた櫻井のプレー。大崎とのパス交換から前を向いて前進したシーンだが、彼のスペースを見つける素晴らしいプレーだったと思う。後ろから小西がついてきているのを確認し、大崎にボールを返した直後、周囲の状況を確認し自分がフリーと見るやバックステップを踏みながらパスを引き出し相手を置き去りにした。このバックステップこそが重要なプレーであると考えている。周囲の状況を確認しながらバックステップを踏みながらボールを引き出すことが出来るのは神戸の日本人選手では古橋だけだ。櫻井には古橋並みのポテンシャルがあるのではないかと個人的にこのプレーを見て思う。また、逆サイドへのサイドチェンジも精度が高いため、相手のスライドが間に合う前にフリーの選手を作ってしまうことが出来る。そして右足だけでなく、左足でも変らない精度でサイドチェンジできることも素晴らしい。右足で持ち替える時間がないことで相手はサイドチェンジの予測ができない。そのためスライドが間に合うまでの時間を数秒稼ぐこともできる。このようにサンペールの後継者として成長を予感させるプレーを見せただけに海外の優秀な指導者に育てて欲しいという気持ちは一層高まる。

また、大崎と小林も相手を引き付けながらのプレーを意識していたことを見るとこのコンビを見てみたいと思う気持ちもある。その反面、フィジカル強度に不安が残る。その点を加味してもやはり菊池を入れた3バックに回帰して欲しいという思いがより強くなった。

試合終盤に菊池を入れ、実質的には3人そろっていたが目的が違う投入の仕方をしていたので、、、。あの起用法に関しても以前の徳島戦のレビューで話しましたし、呆れて物も言えませんので今回はあえてスルーさせていただきます、、、。菊池投入も実らず、このままノーゴールで試合終了。グループステージ突破に一歩後退する形となっってしまった。

[まとめ]

直近3試合で2分け1敗の1得点とネガティブなニュースしかない神戸。負け試合の時に考えることは1失点までは許容できるということ。問題は点が取れていないことだ。点が取れなければいくら守っても勝ち点は増えない。リーグ戦も10試合を終え、カップ戦も折り返し地点に来たところ。これからシーズン中盤に向けて勝ち点を稼ぐことが出来なければACL出場も夢のまた夢。それよりもここ最近の勝ち点の推移をみても序盤戦勝てていたのは相手のコンディションや分析によって戦い方に対策がされてきたことだ。ハーフタイムに「何を怖がっているんだ。」と選手に向けて発していたそうだが三浦監督がやるべきことは勝つための最善の策を考えることだ。それを選手に気持ちの面でしか奮起させることが出来ないのは選手に策を投げているのと一緒である。ピッチに選手を送り出した以上、ピッチ上で起こるすべてのことは監督の責任にあるはずではないのだろうか。

そんなことを言ったって試合は次から次へとやってくる。次節の鹿島戦では久々の勝利をサポーターは望んでいる。選手やスタッフ、サポーターが笑える日が鹿島戦であることを祈るばかりだ。

ヴィッセル神戸0-1徳島ヴォルティス



この記事が参加している募集

スポーツ観戦記

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?