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2021.4.17 明治安田生命J1リーグ 第10節 湘南ベルマーレVSヴィッセル神戸 マッチレビュー

前節、清水に圧倒されながらも勝ち点1を得た神戸。今節は苦手とするアウェー湘南戦である。あまり勝ってる印象がないスタジアムであるだけに今年こそは勝ち点3を持って帰りたかったが結果はスコアレスドローとなった。そしてケニア代表アユブ・マシカがJデビューを飾った。今回も振り返っていきたいと思う。

[スターティングメンバー]

今シーズン、初めてSHに初瀬をスタメン起用した。前節劇的ゴールをアシストし、今シーズン2つ目のアシストを記録。調子が良いだけに彼のクロスには期待が高まる。

[噛み合わないポジション]

湘南の基本的な立ち位置は3-5-2。4-4-2で守る神戸とは上手く噛み合わないため大外のWGがフリーとなる。しかし、神戸はゾーンで守れるわけでもないので前から人を捕まえに行く。湘南もちろん織り込み済みで対応し、WBに付いてきたSBの裏を狙う。右サイドは町野が裏に走り、小林との1対1を演出。

逆に左サイドはトップの大橋がフリーランするのではなく、IHの山田が裏抜け。左サイドからのこのパターンは非常に厄介だった。高橋は相手が来なければドリブルで誘ってくるし、山田は裏抜けしてボールを深い位置で受けるため山川は判断に迷いが生じていた。

さらには山田が背後に走り、そのスペースで大橋が受けるパターンも。そしてそのまま山田がもう一度サイドでもらい、最後は町野へグラウンダーのクロス。このシーンは惜しくもオフサイドとなるが裏に抜けるというシンプルな攻撃方法に神戸は何度もやられていた。


[右サイドの機能不全]

噛み合わせが悪いと言うことは湘南にも言えるわけで誰が出てくるかによってそのスペースを有効に使えれば良かったのだが、それが出来ないのが今の神戸。

神戸もSBが浮いてるのでそこに対して誰がアプローチに来るかで攻め方を変えることが出来たはず。しかし、昨季のフィンクの遺産は1つたりとも残っていないので裏狙いの一辺倒でボールを手放してしまう。湘南は神戸のSBにIHが寄せに行く。寄せが早ければプレスはハマるし、遅ければ剥がされる。基本的に神戸は古橋と郷家が背後へフリーランしてボールを受ける。しかし、IHが出てきたところを上手く突いていくことをもっと意図的に出来て欲しかった。偶発的にしか起きないのは選手間での約束事が無いという証左である。しかし、左サイドはある程度ボールを持ちながら時間を作っていた。そこからの展開が偶発的にしか発動しない。問題は右サイド。

山川から中央のサンペールにボールがなかなか入らずサイドの井上にしかボールが渡らない。井上がそこで受けたとしても背後からのプレッシャーが強く、前を向けない。山川自身にそこまでプレッシャーがかかってなかったとしても湘南の圧力を感じていたのか、体の向きが一向にサンペールの方に向かない。西大伍は体の向きが非常に良く、中央を経由しながら剥がすのが上手かった。サンペールにつなげれば逆サイドまでに持って行けるのにと言うシーンは何度も散見された。前半35分以降から初瀬と井上がポジションを入れ替えたことで中央を使うシーンは多く増えたがそこからどのように繋いでいくかは選手間で共有されていなかったように思う。

[クロスとサイドチェンジでチャンスを演出する湘南]

後半に入って湘南はクロスやサイドチェンジからチャンスを生み出すことが出来ていた。前半のように同サイドから相手の背後を狙うだけでなく、相手の視野外に飛び込むプレーは多くなっていた。

後半19分のシーンでは名古から逆サイドの岡本にサイドチェンジ。そこから神戸陣内深くまで侵入し、チャンスを作った。このシーンでは左サイドの大野のフリーランが効いていたと思う。大野がフリーランすることで菊池が大野に引っ張られ、その空いたスペースに町野が入る。小林は町野に付いていくため、酒井が山田を見る形でスライド。逆サイドの岡本がフリーとなり、SB裏に走り込んだ。名古にもプレッシャーがかかっていない状態であったので落ち着いて逆サイドを確認することが出来ていた。

さらに湘南は後半22分にこの試合最大の決定機を迎える。田中が空いたスペースにボールを呼び込み、岡本がドリブルで前進。この際、大橋が裏に走り込みラインを下げることで岡本の走路を確保する。そして大橋はサイドに流れ、フリーでボールを受ける。そして中央に走り込んだ町野に絶妙なクロスを上げ、ヘッドで合わせた。惜しくもポストの横に流れてしまったがプレーのテンポと流れは素晴らしかった。それだけに決めきりたかっただろう。そして、このシーンも大外の高橋がフリーだった。ここまでボールが届けられていたら郷家がカバーに行っていたとしても決められていた可能性は高い。湘南は相手を上手く引き出し、そのスペースを使うのが上手かった。ここ最近負け無しな理由も分かった気がする。

[マシカ投入と忘れかけていた優位性]

後半21分にマシカを投入し、流れが神戸に向いた。Jリーグデビューを飾ったケニア代表はその存在を遺憾なく発揮してくれた。もちろんマシカが入ったことで流れを持ってくることが出来たが流れを持ってこれた理由は彼の存在感ではなく、彼が作り出した優位性だった。我々が忘れていたであろう局面で優位性を作ることを意識したことでチャンスを作ることが出来たと個人的に思う。

後半24分、マシカが裏抜けして惜しくもチャンスになりかけたシーンではマシカの1列飛ばしたパスから山川がフリーで受けることが出来た。もちろん逆サイドはフリーで山川だけでなく、郷家も落ち着いて受け、時間を作ることが出来た。さらには逆サイドに出来たスペースにサンペールが上手く入り込みフリーで前を向く。そして最後はマシカが裏に走り込んだ。この一連の流れはこの試合で意図的出たプレーだろう。そして、マシカのスキップパスから全体がどこにスペースがあるのかを共有することが出来た。共有することが出来たのもマシカのパスによって時間とスペースを創出することができからではなかろうか。このようなプレーを偶発的に起こすのではなく、必然的に出来ていたのが昨年の神戸。

後半25分にもマシカのターンから相手を押し込むことに成功した。イニエスタを彷彿とさせるターンから前に運び、逆サイドの山川まで繋ぎ、相手陣内深くまで侵入する。ここまで来るとボールをロストしても前からボールを奪いに行きやすくなり、2次攻撃へとつなげやすくなる。そして最後は菊池のボールカットからマシカの強烈なシュートで相手ゴールを脅かす。実況はマシカがボール触りたいがために降りてきていたと語っていたが、別にあの位置で誰が触ろうと問題は無い。本質はそこではなく、その状況下において適切なタイミングとポジションでマシカが受けたことがこの展開を生んだことだ。マシカのプレーをよく見てみるとボールを受ける前に周囲を確認してボールを受け直していることが分かる。ということは無闇矢鱈にボールに触りたいのではなく、しっかりと周囲を確認した上でボールを受けることが最適解だと判断している。その結果、相手を押し込むことに成功している。

マシカ投入は第2の古橋が入ってきたと言っても過言ではなかった。ボールをキープしながら時間を作れることやスペースに走り込む動きなど似ている部分たくさん確認することが出来た。極めつけは後半38分に生まれたチャンス。前川から山川に繋いでIHを釣りだしたスペースを古橋が上手く使い、最後は裏出来たスペースにマシカが走り込んでシュート。またもや外れるがGKの前川から相手を見ながらプレーしたことにより、数秒でゴール前まで持って行くことが出来た。マシカと古橋は時折使いたいエリアが被ってしまうこともあったが新たなホットラインが出来るのも時間の問題なのかもしれない。このまま試合はスコアレスドローで終了。2戦連続の引き分けとなった。

[まとめ]

2戦連続の引き分けで5試合負け無しとなったわけだが、頭に入れておかなければならないのは内容では相手に上回られているため、勝ち点3を逃した引き分けよりも勝ち点1を拾ったという認識をしなければならないことだ。言ってしまえばこの2試合で勝つ可能性はほとんど無く、引き分けで乗り切ったからと言って次の試合への改善の余地は見られないという絶望だけが残り続ける。奇跡的に勝ち点を積み重ねて上位に位置づけては居るが負傷者も増えてきている。それが意味していることは選手の疲労と引き換えに勝ち点の前借りをしているに過ぎないということだ。相手チームにも手の内がばれ始め、対策されるようになってきた。それがこの2試合での引き分けを生んでいる。自分達が勝ち点の前借りで積み重ねてきたポイントも積み重ねにくくなっており、疲労だけが積み重なっていくことは予想できていたはずだ。それでもこのままスタイルを継続するのか、それとも策があるのか。その策がないことぐらい我々にもわかっているが希望的観測を抱きたくなるのがサポーターという生き物なのだ。三浦監督を評価できるポイントは勝って勝ち点を稼ぐというところだけ。きつい言い方をするが、勝ち点も稼ぐことが出来ないのなら評価できるところは何もない。それでもマシカという新たな希望を持つことはできた。イニエスタもそろそろ復帰することだろう。本当の三浦監督の正念場はここから。もう期待はしてないがそれでも何か形あるものをどこかで見せていただきたい。以上。

湘南ベルマーレ0-0ヴィッセル神戸

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