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2021.3.6 明治安田生命J1リーグ 第2節 徳島ヴォルティスvsヴィッセル神戸 マッチレビュー

今シーズンリーグでの初アウェイは徳島ヴォルティスとの一戦。7年ぶりJ1復帰を果たした徳島は史上初のJ1ホーム初勝利に向け、なんとしてでも勝ちたい一戦だったはず。結果的にドローで神戸としてはなんとか勝ち点1を得たというところだろう。内容的には完敗で仮に負けたとしても敗者に相応しい試合だった。その試合を振り返りたいと思う。

[スターティングメンバー]

神戸が前節のガンバ戦との変更した点は藤本→田中のみ。フォーメーションは前回と変わらず4-4-2で試合に入った。

[地の利を活かす徳島]

強風が吹き荒れる中、キックオフした一戦は神戸がボールを保持し、徳島がプレッシングを行う形に。神戸はいつものように山川を残して3バックでビルドアップを行う。両チームともGKを使ってビルドアップを行う点は同じだが向かい風の神戸はロングボールが強風に煽られコントロール出来ずに立て続けにピンチを招く。神戸としてはフェルマーレンから田中に向けロングボールを送り込み、セカンドボールを回収するというのが一つの狙いだったように思う。しかし、その狙いは強風によって上手くいかない。徳島としては神戸のCBがボールを持った際、両SHが食いつかずにコースを消す立ち位置を取っており浜下が酒井にボールが出てから対応していた。

右サイドは山川が3バックの一角に入るため大外で古橋のアイソレーションができあがる。しかし、後ろが重いため古橋は背負いながらのプレーが多くなり前を向かせてもらえなかった。それでも前を向くと相手を剥がしてクロスバーを叩くシュートを放つ。質的にぶん殴れたのは試合を通して古橋だけであった事を考えるとさすがの一言である。前半の早い段階でサンペールが徳島の2トップの背後に立ちCBに時間を作りながらビルドアップを行う。ストロングである左サイドでは内側に井上を配置し、時には山口と入れ替わりながらボールを受けていた。この日の井上は上手くコントロール出来ずにボールをロストするシーンが散見され徳島にボールが渡ってしまう。浜下と藤田が内側に絞り神戸の中盤に時間とスペースを与えないため上手く収めることが出来なかったのだ。そのまま徳島はショートカウンターを発動。岸本が上がりゴールに迫るシーンもあった。

[徳島の秀逸なビルドアップ]

徳島も同様に吹ケを残しての3バックでビルドアップを行った。2ボランチを含めた5人でビルドアップを行うのが基本というのは神戸とさほど変わらなかったが徳島の方がビルドアップは上手かったと言わざるを得ない。特に最終ラインの運び方は秀逸で神戸の選手が迷うようなプレーを常に取っていた。DFの福岡のコンドゥクシオンは素晴らしかった。後半11分に見せた運び方は神戸の守備を1人で崩壊させ運ぶ姿を見ても神戸がやりたいサッカーを徳島にされていた象徴的なシーンだった。

右サイドは岸本が大外、浜下が内側を担当して菱形を形成しながら前進していく。前半は風上ということもあり積極的に背後を狙いながら神戸のバックラインを押し下げるプレーなども見られた。浜下がCB-SB間裏抜けし、フリーで岸本が受けるといった一連のプレーも狙いの一つだあったように思う。

しかし、昨年J2を勝ち抜いた徳島もJ1のプレー強度や個人の質で上回られることが多々あり、シュートまでいけるシーンはあるもののゴールを取れる匂いがしなかった。面白いサッカーしているだけに旋風を巻き起こして欲しいとは個人的には思っているが選手個人の差で負けることも少なくないのかもしれないとこの試合を観て感じたのが正直な感想でもある。

[風上に立った後半の神戸]

前半をスコアレスで終え、後半へと突入する。後半は神戸が風上に立つためシンプルにドウグラスを使うシーンも何度かあったように思う。しかし、後ろからつなぎ相手を押し込むことが出来ない。

後半15分、この試合初めてサンペールが最終ラインに落ちて山川を押し上げ徳島を押し込むシーンが見られた。サンペールがボールを持ち運びながら井上と山川でトライアングルを形成し、徳島のラインを押し下げることに成功。そして左サイドで酒井がフリーで受け、郷家のクロスバーを叩く決定機を作った。このシーンを見てもいかにサンペールの必要性が重要か認識できる。全体を見ながらビルドアップをデザインしていくのはイニエスタとサンペールの2人だからこそ出来ることなのだと思う。

[その交代、戦況に見合ってる?]

神戸はサンペールと井上に変わって佐々木と増山を投入する。古橋が前線に入り、郷家がボランチに落ちるいつもの形だ。この直前にサイドから決定機を作り出していたのでサイドからの攻勢を強めたいと言う意図なのだろう。

しかし、この交代の直前に郷家の決定機を生み出したのは紛れもなくサンペールだ。遅功から決定機を生み出せる人物を失ったことにより神戸の攻撃は整理されなくなっていった。72分には郷家、山口の両ボランチが脇に落ち、中央でボールを受ける人が不在となり徳島にボールを奪われるシーンが見受けられた。サンペールが交代したことによりサイドから攻める前の組み立てでビルドアップが崩壊してしまったのだ。

その後陣地回復をするのも佐々木や増山、ドウグラスの単騎突破しかできなくなった神戸は後半30分に徳島に先制を許してしまう。スローインからのボールを奪われショートカウンターで垣田にシュートを決められてしまった。ペナルティエリア内に5人のもの神戸の選手がいる中で決められてしまうことからも慌てている様子が伺える。

[前線で仕事をする古橋享梧]

先制されてから神戸は山川に代わり初瀬を投入。後半42分にCKのこぼれをエリア外で受けた古橋が強烈なミドルシュートを放ち、上福元が一度は弾くものの、菊池が押し込み同点とする。古橋が前線で躍動すればやはり脅威となることをこの試合でもしっかりと見せた。試合はこのまま1-1のドローで終了し、神戸はアウェイで勝ち点1を手にすることとなった。

[まとめ]

試合を通して徳島がゲームを支配していた。ビルドアップやプレッシングは精度が高く通用すると感じた。一方で最後の局面で精度が足りないことは気がかりである。個人個人でプレーは光っているが重要な局面でやはり個人の質の部分が低いと感じてしまった。

逆に神戸は個人の質は高いがチームとして活かせていない点が多すぎる。似通ったプレースタイルを志向するチームと対戦したときにより自分たちの劣っている部分が如実に表れてくる。強風の中でのプレーはやりにくいことは理解するがそれが本当の理由でビルドアップ出来ていなかったのだろうか?サンペールが交代してからまともにビルドアップが出来なかったことは忘れてはならない。某SDはフィンクの評価を個人を活かすことができなかったと評していたが今のチームがフィンク神戸よりも個人を活かせているとは到底思えない。監督含めフロント陣が考えているサッカーは個を活かすサッカーではなく、個に頼るサッカーだということだ。それは今のサンペールの現状と神戸のビルドアップ時の現状を見れば一目瞭然である。リーグ戦ではこれから昨年の上位陣と対戦することになる。勝てば官軍負ければ賊軍。目の前の一戦に食らい付いていくと共に山積している課題を一つずつクリアしていってもらいたい。

徳島ヴォルティス1-1ヴィッセル神戸

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