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2021.4.3 明治安田生命J1リーグ 第7節 ベガルタ仙台VSヴィッセル神戸 マッチレビュー

今節はベガルタ仙台とのアウェイマッチに臨んだ。3月はリーグ戦を5試合戦い、2勝2分1敗の勝ち点8を積んだ。昨年の上位陣との対戦が多かった中でこれだけ勝ち点を積めたことに驚きを隠せないことに加え、残留に向けて大きな一歩を踏み出すことが出来た。4月もリーグ戦5試合を控えているが清水を除いた4試合が今シーズン苦しんでいるチームである。逆にこの5試合は勝ち点3を全て取らなければならないと個人的には考えている。ここでどれだけ勝ち点を積み上げられるかで残留や上位進出に近づくかが明確となってくる。昨年の上位陣との対戦を良い形で乗り切れたからこそ是が非でも勝利を手にしたい。そんな4月の初戦がベガルタ仙台とのアウェイマッチである。最近は得意としている相手に勝って勢いをつけたいところ。結果は2-0での完封勝利となった。その試合を振り返っていきたいと思う。

[スターティングメンバー]

今節は古橋をトップで起用し、右に中坂が入った。山川は本職であるCBで起用し、右SBには櫻内がリーグ初スタメンとなった。

[非保持における仙台の迷いと欠点]

序盤から神戸がボールを握る展開。非保持にはCBに2トップがプレスをかけ、GKに戻せばGKまで追いかける。仙台としてはビルドアップ能力があまり高くないため、スウォビクまで戻してロングボールを蹴るしかないというのが序盤から立て続けに起こる。トップも西村と赤崎であるためロングボールを収めることが出来ない。菊池との空中戦には分が悪いため神戸がボールを回収していく。

神戸のボール保持は2CHが列落ちして数的優位を作る。山川の脇に山口が落ちて酒井を1列前に上げ、後ろ3枚でボールを回すのがデフォルト。おそらく山川が右利きであるため仙台がプレスで嵌めに来た際にフォローするためのものであったと思う。これによって松下が出ていくかリトリートを選択するかで迷いが生じる。右サイドは大外に櫻内がハーフスペースを佐々木が担当することに。

前半12分、サンペールが列落ちし、CBに時間できたところから佐々木に縦パスが入る。ここは惜しくも櫻内には渡らなかったがサンペールが列落ちすることで味方に時間とスペースを供給していき、ボールをクリーンに前進させることが出来る。しかし、櫻内は菊池にボールが渡った際に低い位置で受けようとしていた。本来はポジションを上げて受けるのが理想的で上図のような位置で受ければ佐々木も難なく繋げることが出来たはず。

櫻内が落ちずに受ける方法はCBがワイドに開くことも1つの解決策である。ワイドに開くことで氣田がアプローチに来れば佐々木の受けるスペースは広がり、櫻内にも角度をつけた状態でパスを出すことが出来る。もちろんサンペールの足の遅さとCBの能力的にリスクが大きいのも承知だが、引いた相手を崩すという点においてこのような個人戦術も身に着ければ幅は広がるに違いない。フィンク期にはそのようなことにもチャレンジしていたのでぜひチャレンジして欲しいというのが本音。

仙台はコンパクトにしてブロックを組んでいたが気になるのはスライドが遅いこと。逆サイドへのアプローチが遅いため簡単に時間を与えていることと全体的にサボりがちなため選手間の距離が開いている瞬間が多く散見された。ある程度ボール保持ができるチームであれば仙台の守備ブロックを崩すのはそう難しくなさそうと感じてしまった。

[狙いの形から2得点]

前半15分、神戸が先制する。ネガティブトランジションから櫻内がボールをカットし、サンペールが拾う。そしてそのまま左足で裏抜けしていた古橋にピンポイントでパスを出す。これを古橋が超絶トラップで収め、右隅に流し込んだ。神戸は序盤からポジティブトランジションの中で背後のスペースを狙う意図は見せていた。裏抜けの練習は何度もやったと三浦監督が語るように狙いの形から幸先良く先制点をものにすることが出来た。古橋とサンペールは素晴らしいが櫻内もまた素晴らしい働きを見せていた。相手に奪われてからのカウンター戻りながらカットし、味方に繋げたことであのようなゴールが生まれた。前半で得点を奪うことが出来ない今シーズンで早い時間帯でゴールを奪うことができたこともまた良かったと思う。

追加点はその5分後の前半20分にセットプレーから奪う。古橋のコーナーキックから菊池がヘッドで合わせてゴール。その前のコーナーキックでも同じようなスペースに山川が侵入し、合わせていた。セットプレーでなかなか点を取れない神戸だったが今シーズンはセットプレーにも力を入れており、その結果が早速身を結んだ形となった。前半を有利に試合を進めた神戸は得点後も体を張った守備で仙台にゴールを割らせない。このままスコアは動くことなく、前半終了となる。

[後半、前がかりになる仙台]

2点を追う仙台は得点を取りに前がかりになる。神戸としては相手のペースに付き合わず自分たちのリズムで試合を運びたかった。

後半4分、西村の裏抜けがわずかに合わなかったシーン。トランジションの局面から縦に早く攻めてくることが多くなった仙台。石原のパスがつながればあわや決定機という場面だった。神戸のCB-SB間と両CB間を西村が裏抜けし、ポケットに侵入する動きは神戸からするとあまりやられたくなかった。菊池が本来のポジションから外れると酒井が中央にスライドするため空中戦では分が悪い。実際、後半35分に訪れたオフサイドにより取り消しとなったゴールも西村の裏抜けによりディフェンスラインが下がり、蜂須賀がミドルシュートを叩き込んだシーンだった。おそらく手倉森監督もこの裏抜けから起点を作り、中で勝負させるために後半途中で高さのある皆川を入れたのだろう。しかし神戸も前からのプレスで前半同様、自由を与えないようにしていた。

後半は積極的にプレスをかける仙台に落ち着いてビルドアップすることは出来ていた。サンペールが2トップの間に立ち、CBに時間を与えながら徐々に前進。井上が投入されたことにより山口、酒井とのトライアングルでポジションチェンジを繰り返しながら背後を突く。この3人のコンビネーションも試合を重ねるごとに良くなっている。相手CHの裏を上手く突きながらビルドアップは行えていた。後半こそ得点は奪えなかったが安定した試合運びは出来ていた。試合もこのまま終了し、今シーズン初めてのリーグ連勝を達成した。

[まとめ]

今シーズン初の連勝を達成したことは素直に嬉しい。さらに無失点に終えたこともディフェンス陣にとっては喜ばしいことだと思う。狙いの形から得点を取れたことは三浦監督としても今後に自信になる勝利になった。しかし、仙台のクオリティーが低かったのもまた事実としてある。攻撃が単調である上に奪いに行くにしてもリトリートするにしても中途半端なところが随所に見られた。おそらくまだ勝利を手にしていないからこその焦りや自信の無さが一番大きいのではないだろうか。試合内容に関しては相手を上回ったもののこのままの戦術では選手の離脱は目に見えている。実際に何人かの主力は欠場しているので今勝てているのを良しとしてもこの先の夏の過密日程を乗り越えることが出来ないのは明らか。イニエスタや新戦力のマシカ、リンコンが今後加わるに当たって楽しみでもある反面、不安も同じくらいある。だからこそ今のうちに残留ポイントを貯めておけることは良いことなのかもしれない。代表から復帰した古橋と前川は早速結果を残すことが出来た。この試合、古橋は1G1Aの大活躍を見せた。抜け出し、トラップ、シュートどれも素晴らしかった。代表で初ゴールを決めたこともあり、これからさらにゴール前での冷静さに磨きがかかっていくのかもしれない。前川も開幕戦以来となるクリーンシートを達成。何度かキックでミスは見られたものの随所に持ち味を発揮していた。この2人が活躍すれば必然的に神戸の勝ち点も伸びていくので次の代表選出も目指しながら頑張って欲しい。さらに菊池の攻守における活躍は素晴らしいの一言に尽きる。彼一人が加わるだけでセットプレーに厚みが増している。今季3点目とFW並に活躍する菊池も代表はそう遠くないのかもしれない。

ベガルタ仙台0-2ヴィッセル神戸

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