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特定のアーティストを好きにならない私がなぜKing Gnuを好きになったのか

 2019年、一気にスターダムにのしあがったKing Gnu。今やもう、知らない人はいないバンドとなったでしょう。かくいう私も大ファンで、昨年初めてライブにも行きました。

 「今一番ライブのチケットが手に入らないアーティスト」とも言われるKing Gnuですが、私は抽選運がいいのか昨年も今年も当選。今年のライブは残念ながら中止となってしまいましたが、8月30日にはオンラインライブがあるので、全力で楽しみたいと思っています。

 なぜ、私はKing Gnuにのめり込んだのでしょうか。普段は、特定のアーティストを好きになることがほとんどなく、曲そのものを愛すことが多いんです。もちろんその曲を作った、歌ったアーティストも好きですよ。ただ、ライブに行ってまでそのアーティストを追いかけることはしないです。曲単位ではなくアーティスト単位で好きになったのは、ぼくのりりっくのぼうよみとKing Gnuだけ。

 そんな私がKing Gnuにのめり込んだ一番の理由を話す前に、まずはわかりやすく「King Gnuの良さ」を語りたいと思います。

①楽曲の良さ
②天才集団の演奏
③個性的なキャラクター
④古さと新しさの融合

 簡単にまとめると、こんなところでしょうか。

①楽曲の良さ
 曲がいい。これはアーティストを好きになる一番の理由ですよね。King Gnuはギター・ボーカルを担当する常田大希さんが全ての楽曲を制作しています。その溢れ出るセンス、突き抜けるセンス、ほとばしるセンス、光り輝くセンス。センスの塊でしかない。

 King GnuでJ-POPの頂点を目指すに当たり、米津玄師さんから「日本で売れるためにはサビを作らないと」というアドバイスをもらったという常田さん。King Gnuの前身であるSrv.Vinci(サーバヴィンチ)時代に発表した楽曲は、個人的にはめちゃくちゃ好きですが確かに万人受けする感じではありません。

 ポップとは言えないですよね。

 そして、常田さんが「Aメロ、Bメロなどもサビになり得るような曲を作った」という『白日』が昨年大ヒットしたわけです。やっぱりJ-POPにサビは必須なんですね。それ以上に、この曲は本当に歌詞もメロディーもリズムも演奏も全てにおいて素晴らしいのでヒットするのもわかります。

 このようにまったく新しい曲を生み出すときもあれば、Srv.Vinci時代に発表した楽曲に手直しを加えてKing Gnuで再リリースしたりもしています。

 この『ロウラブ』もKing Gnuになってからも歌っていますね。ちなみにこちらのMVの撮影場所は常田さんのおばあちゃんの家だそう。なんだか素敵なおうちですよね。常田さんのセンスの良さは、血筋なのかもしれません。

②天才集団の演奏
 King Gnuには4人のメンバーがいます。

常田大希(つねただいき)
担当:ギター・ボーカル・チェロ・ピアノなどできる楽器は数知れず
 井口さんと幼馴染でKing Gnuの楽曲すべてを手掛ける天才・鬼才。ダビデ像のような外見を持つ。お母様がクラシック、お父様がジャズのピアノ奏者だったということで、幼い頃から音楽と共に育った。東京藝大に入学、チェロ専攻も1年足らずで中退。藝大出身と言えば周りの食いつきも良くなるから一度入ろうということだったらしいが、本当に合格できるのがすごい。兄は東大出身でバイオリンを弾く。

勢喜遊(せきゆう)
担当:ドラム・サンプラー・コーラス・打楽器いろいろ
 お父様がドラマー、お母様がシンガーの元プロミュージシャンで、常田さんと同じく幼い頃から音楽と共に育った。ダンスをやっていた時期もある。高校生から本格的にドラムを習いはじめ、セッションバーに通いジャズ、ファンクなどのセッションで力をつける。若手ドラマーの有望株として業界でも注目されている。名前は本名。勢い・喜ぶという名字も素敵だが、そこに遊ぶを続ける辺り、ご両親のセンスの良さを感じる。いつも奇抜な髪形、服。

新井和輝(あらいかずき)
担当:ベース・コントラバス・シンセベース・コーラスなど
 個性の強すぎるメンバーの中で、この人がいるからグループがまとまっていると感じる唯一まともな空気をまとっている人。服装もいつもひとりだけかっちりしている。だが、14歳でベースを始め、大学時代には師匠の家に2年間住み込みでベースの修行をさせてもらうなど、行動は大胆。ジャズセッションで力をつける。

井口理(いぐちさとる)
担当:ボーカル・キーボード・タンバリンなど
 他の3人より1つ年下。常田さんとは中学時代同じ合唱部に在籍していた幼馴染。東京藝大で声楽(テノール)を専攻し卒業。幼馴染ふたりが藝大に行けるなんて、どんな街だよ。3男1女の末っ子。次男は声楽家。末っ子らしい人懐っこさがある。七色の声を持ち、曲ごとに相応しい歌い方をする。藝大の学祭で幼馴染の常田さんと再会し、Srv.Vinciのレコーディングに誘われたことがきっかけで後に加入。お芝居もできる。ふざけるのが得意。でも繊細。トークも上手。

 細かく説明していたらキリがないので軽く紹介しましたが、とにかく天才の集団なんですよね。まず、サラブレッドが多い。それからセッションバーで武者修行していて対応力が半端ない。東京藝大を卒業し自由自在に声を操れるという私たちからすれば天才にしか思えない井口さんが、他の3人の音楽的知識やセンスに劣等感を抱いたりと、天才集団にしか起こりえないレベルの高いことが起こったりもします。

 これだけ個性的なメンバーが揃うとぶつかり合ったりしそうなものですが、みんなとても仲良しで、今年のはじめ頃まで新井さんと井口さんは築50年のアパートに一緒に住んでいたんですよね。私は、この天才集団が魅力的な演奏ができるのは、個性と実力がありながらも自己主張しすぎずお互いを尊重し合えているからだと思っています。

③個性的なキャラクター
 
②でも触れていますが、とにかくみんなキャラが立ちすぎ。常田さんはイケメンで音楽的センスも抜群でギターも上手く、欠点がないのではないかと思うほど。でも時間にルーズで何時間も遅刻してきたりするそうです。

 勢喜さんは、奇抜な見た目と奇抜な発言が特徴。言ってはいけないことを言いそう(笑)。昨年、井口さんの代打で「オールナイトニッポン0」のメインパーソナリティーをやったことがありました。メールが紹介されたリスナーひとりにつきアルフォート10箱をプレゼントするというコーナーがあるのですが、普段井口さんはじっくりと数人だけ紹介するのに勢喜さんは怒涛の勢いで紹介していってしまいスポンサーが合計100箱くらい送る羽目になった、という事件に。そのときの、メールの内容を一言でバッサリ斬っていくシュールな面白さが忘れられません(笑)。

 新井さんは、プロフィールでも紹介しましたが、唯一まともっぽく見える人。みんながやんちゃするのを見守る係という感じです。井口さんと住んでいた時は、ズボラな井口さんに代わって家事をしてくれたりと、もしかしたらKing Gnuの母なのかもしれません。

 井口さんは、とても繊細な人だと感じます。でもサービス精神旺盛で、みんなを楽しませようと音楽以外の部分でも常に何かしてくれる。面白動画を撮るために、駅の通路で周りの人にじろじろ見られながら泣き叫ぶ演技を全うしていたときはすごいなと思いました(笑)。「井口理のオールナイトニッポン0」はほぼ毎週聴いていましたが、お世辞じゃなく本当に面白かった。私もトークをする仕事をしていますが、話し方、切り返し、言葉のチョイス、すべて絶妙で勉強になるなと思うくらいでした。

 たぶん、前情報なくテレビで初めてKing Gnuを見ると「感じ悪い人たちだな。調子に乗ってるんじゃないの?」と思う人が少なからずいると思います。ちゃんと座っていなかったり、ちゃんと質問に答えなかったり、ニヤニヤしていたり、態度が悪いと思われても仕方ないときがあるんですよね。でも、決して調子に乗っているのではなく、それが彼らの普通です。イラついたときは新井さんを見てください。ちゃんとした姿勢で座ったり立ったりしゃべったりしていますので(笑)。

 態度が悪いと思われるのは致し方ないですが、本当は無邪気で素直なお兄ちゃんたちです。

④古さと新しさの融合
 
King Gnuはとても新しい音楽を作っていると感じます。どの時代にも新しい音楽が出てきて、それが一般的になり、過去になっていくわけですが、今の時代の新しい音楽の一角を担っているのがKing Gnuだと思うわけです。

 ですが、King Gnuの音楽はどこか懐かしい感じもするんですよね。

 ここで、私がKing Gnuにのめり込むきっかけとなった曲をご紹介します。『Vinyl』という曲です。

 この曲はもう、King Gnuを知った時から今まで何千回聴いたかわかりません。とてもオリジナリティあふれる曲なのに、どこか懐かしい感じがしませんか。'70~'80年代のような懐かしさです。

 実は『Vinyl』に出会ったのは、このツイートが先でした。

 アコースティックVer.なのですが、初めてこの常田さんのギターと井口さんの歌声を聴いた瞬間、感動しすぎて「うわぁー」と自然に声が出ていました。

 メロディー、歌詞、ギター、声という曲の部分が良いのはもちろんなのですが、ロケーションと二人の格好も含めてすべてが芸術的で、繊細で、それでいて猛々しい感じもあって、とにかく素晴らしい作品だと思いました。オリジナリティがあるのにどこか懐かしいメロディーとギターの少し切なげな音色がマッチしており、そこに井口さんのちょっとかすれた感じの声(この曲用の声の出し方)が乗って、なんだか胸にズドンとくるんですよね。

 そして、あの目元に前髪がかかった髪形に不健康そうな体型の井口さんと、昭和にいてもおかしくないふたりの服装がまたいいんですよね。名曲『神田川』なんかが似合いそうな。これぞ古さと新しさの融合だと思いました。

 この辺りの曲たちも、古さと新しさの融合を感じます。ちなみに最後の『It's a small world』のMVに出てくる男は井口さんが演じています。

   そして、この曲たちはインディーズ時代に作られたものですが、曲自体はもちろんMVの完成度が高すぎます。

 「古さと新しさの融合」は、特定のアーティストを好きにならない私がKing Gnuを好きになった理由にも繋がってきます。

なぜ、私はKing Gnuが好きか?

 それは、King Gnuは昔の音楽、他ジャンルの音楽をバカにしないからです。

 これは音楽だけに言えることではないですが、新しいものを作っていこうとする人の中には、古いものを下に見る人がいます。私は野球に関わっていますが、野球をやっている人の中にも昔のやり方を全否定して新しいやり方を推奨する人が結構います。

 もちろん、間違っていることがあれば正すことは悪いことではありません。ただ、その歴史があったから正しいことを知ることができた。それから古いものの中にも、今でも廃れないもの、守っていかなければならないものもある。そのことを忘れてはいけません。

 音楽だって、その年代ごとの良さがあります。自分の好みではないものがあったとしても、否定してはいけない。それはジャンルにも言えます。King Gnuの音楽はどこにも分類ができないオリジナリティのあるものなので「トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイル」なんて言われたりもしますが、元々J-POPの頂点を目指そうと作ったバンド。

 井口さんは藝大で学んだクラシック以外では主に日本の音楽を聴いて育ったようですが、他の3人は海外のPOPS、ロック、ジャズなどにも精通しています。必ずクラスにひとりはいると思うのですが、海外の音楽に詳しい人って、日本の音楽を下に見てきますよね。「俺、J-POPは聞いてらんねぇ」みたいな。

 King Gnuは昔の音楽も、自分たちに馴染みがない音楽もバカにしません。すべての音楽をリスペクトしているのがわかります。常田さんもインタビューで「昔の音楽があったから今の音楽がある」という趣旨のことを言っていましたし、4人でトークをするような場面でも、他のジャンルを少しでも悪く言うところを見たことがありません。

 これがもうひとつの私がKing Gnuを好きになった理由にも繋がってくるのですが、King Gnuはとても素直です。

 どんなジャンルの音楽も悪く言わず受け入れる素直さがあるからこそ、自分たちが今までやってきたものと違うJ-POPにも素直に挑戦できていると思います。俺たちジャズとかやってきたしJ-POPなんてだせぇよ、じゃないんですよね。「日本でトップとりたきゃやっぱりJ-POPか、じゃあやろうか、J-POPはサビが大事なのか、じゃあサビ作ろうか」なんですよね。

 全部素直に受け入れている。自分たちがトップを取るための条件を素直に受け入れた上で、自分たちの色、自分たちの音を出せるから天才なんですよね。

 ・昔の音楽、他ジャンルの音楽をバカにしない
 ・素直に受け入れて、その中で自分たちの色を出す

 このふたつが、私が曲単位ではなくアーティスト単位でKing Gnuを好きになった理由です。

 最後に、生でKing Gnuのライブを見て感動した曲をご紹介します。

 『The Hole』という重いテーマの曲なのですが、ライブで聴くとボーカル井口さんの歌の本当の凄さを知ることができます。歌は技術だけではないと思うし、独学だって素晴らしいアーティストはたくさんいますが、井口さんの良さを語る上でやはり東京藝大できちんと声楽を学んでいることは外せないと思います。

 これぞ藝大という歌の基礎の強さを感じ、そこにポップスの歌い方の技術と井口さんの個性、感情の乗せ方、すべてのレベルの高さを感じることができます。生で聴ける機会があったら、ぜひじっくり聴いてみてください。

 King Gnuは態度や言葉遣いが悪いこともありますが、音楽を愛するすべての人たちのことをちゃんとリスペクトし、他人の意見を受け入れる素直さを持っているちょっとやんちゃなだけの優しいお兄ちゃんたちです。それを感じながら、今後もKing Gnuの音を楽しんでいきましょう。

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