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『Kotobuki焙煎』お客様に本物の一杯をー珈琲への情熱が生産者との絆を育む

兵庫県加古川市の『Kotobuki焙煎』は、ITエンジニアから転身した田村寿之(としゆき)さん・涼子さん夫妻が営む「珈琲のよろずや」です。常時30種類ものスペシャルティ珈琲を取り揃え、一般消費者から同業者まで幅広い支持を集めています。生産者との直接取引「ダイレクトトレード」にこだわり、珈琲を通じた社会貢献も実践。本物の一杯を追求する田村さんご夫妻の情熱と、珈琲がもたらす豊かな未来への展望に迫ります。


2度のうつ病を経験。救ってくれたのは、珈琲だった

ITサポートやSE(システムエンジニア)として10年近くキャリアを積んだ寿之さん。多忙な業務により心身のバランスを崩し、2度のうつ病を経験しました。

「気分転換に自分のために珈琲を淹れるようになりました。珈琲豆を挽くゴリゴリという音、ドリップしたときにフワッと立ち上がるアロマ。正解のない答えを探していくような面白さもあって……。徐々に自分で焙煎した珈琲を周囲の方々に配るようになりました。皆さんに飲んでいただいてフィードバックをもらい、そこから本格的にロースターを目指すようになったんです」と寿之さんは振り返ります。

独学で極めた焙煎技術ー理想の味を目指す日々

自宅でリラクゼーションサロンをしていた涼子さんの仕事部屋を、コロナ禍をきっかけに焙煎所に改装。数百グラムの珈琲豆を煎る小さな焙煎機からスタートし、徐々に業務用の大型機械へと移行していきました。

焙煎機を扱う技術を習得するのも至難の業。250度~300度の高温になる焙煎機からは、珈琲豆がハゼると周りを覆う薄皮(シルバースキン(チャフ))が剥がれ落ち、空中を舞い、換気扇のフィルターを目詰まりさせてしまうなど避けられない課題もあります。

寿之さんは試行錯誤を重ねながら、理想の味を求め独学で乗り越えていきました。

その後、IT業界で培った知識と経験を生かし、ECサイトをいち早く立ち上げ、オンラインで珈琲豆を販売する仕組みを確立。2020年に『Kotobuki焙煎』がオープンしました。


店舗は1階。お店の入口には「珈琲豆」の自動販売機を設置

この地域では珍しかった焙煎所の開業ということもあり、徐々に地域の方々がお店に足を運ぶようになりました。やがて、珈琲のことなら何でも相談できる空間として親しまれるようになり、コロナ禍の逆境を追い風に変えていったのです。

Kotobuki焙煎の3つのこだわり

Kotobuki焙煎が大切にしているもの。

それは、

1.珈琲豆の「鮮度」へのこだわり
2.お客様のニーズに合わせた「個別対応」
3.生産者との「ダイレクトトレード」

です。
それぞれについてさっそく見ていきましょう。

1.珈琲豆の「鮮度」へのこだわり

お客様に鮮度の良い本物を知る機会を提供したい」。そんな想いから、一杯1000円以上の希少価値の高いものから日常使いできるものまで、常時30種類の珈琲豆を取り揃えています。さらに驚くのは、すべての珈琲を試飲できるという点。

鮮度へのこだわりは徹底しており、常温の場合、深煎りの豆は2週間、浅煎りの豆は1ヵ月以内に使い切ることを心がけています。

寿之さんは鮮度の重要性をこう説明します。

「近年はスペシャルティ珈琲の普及により、お客様の味覚も洗練されてきました。多くの方が、本当に美味しい豆の魅力を理解し、楽しめるようになってきたのです。

珈琲の品質管理は、「減点方式」だと言えます。原料の生豆がどれほど高いポテンシャルを持っていても、輸送や保存状況によってクオリティは徐々に低下してしまいます。昔の船での輸送では、50~60℃もの過酷な環境に置かれ、鮮度が著しく落ちてしまうという課題がありました。

しかし、現在では生産者が厚手のビニール袋に包み、空調管理のできるリーファーコンテナで空輸するなど、鮮度を保つための工夫が重ねられています。これにより、生豆本来の品質を最大限に保ったまま、お客様の元へ届けられるようになりました」

こんなにも鮮度にこだわった珈琲、一度味わってみたくありませんか?

2.お客様のニーズに合わせた「個別対応」

顧客層の幅広さも、同店の特徴の一つ。「一般の消費者の方から、カフェや喫茶店のオーナー、同業のロースターまで、実にさまざまな方がいらっしゃいます。珈琲の相談に乗ったり、焙煎の技術を教えたり。お客様のニーズは千差万別ですから、個別対応には特にこだわっているんです」と寿之さんは微笑みます。

Kotobuki焙煎では、一杯ずつハンドドリップで丁寧に淹れることにも特別な価値をおいています。珈琲が入るまでの時間も、会話を楽しむ貴重なひととき。レコードから流れる音楽をBGMに、店内で相席したお客様同士の会話が弾むこともあるそう。まさに、珈琲を通じたコミュニティの形成が、ここで実現しているのです。

3.生産者とのダイレクトトレード

(写真提供:Kotobuki焙煎)

2050年問題」として、世界の珈琲生産量の7割を占めるアラビカ種が2050年には半減すると予測されています※。これは、日々珈琲を味わう私たちの生活に直接影響を及ぼしかねません。

この危機的状況に立ち向かうべく、Kotobuki焙煎が実践しているのが「ダイレクトトレード」。生産者との直接取引で厳選された最高品質の珈琲豆をお届けできるのはもちろんのこと、適正価格での取引により、生産者が丁寧に育てた豆本来の豊かな風味を存分に楽しめるのです。

さらには、一杯の珈琲を味わうことが、直接生産者の生活向上につながる消費活動であると言えるでしょう。そして何より、長期的な関係構築により、将来にわたって良質な珈琲の供給が確保できるというわけです。


(写真提供:Kotobuki焙煎)

「お客様に最高の一杯を楽しんでいただきながら、同時に生産者の方々の暮らしを支える。このWin-Winの関係こそが、私たちの目指す珈琲文化だと考えています」と、寿之さんは熱を込めて語ります。

(写真提供:Kotobuki焙煎)

2024年6月から取り扱いを開始したインドネシア産『ラヒャンコーヒー』も、ダイレクトトレードでの輸入が実現しました。フルーティーな香り。チョコレートのような風味で多くの珈琲ファンを魅了しています。


(写真提供:Kotobuki焙煎)

さらにクラウドファンディングを通じた現地の小学校への支援活動にも、多くのお客様が賛同しているとのこと。まさに、珈琲を通じた国際貢献の輪が広がっているのです。

Kotobuki焙煎で珈琲を楽しむことは、消費活動を超えた体験といえるでしょう。一杯の珈琲が、生産者の笑顔と持続可能な珈琲の未来につながっている……。そう思うと、珈琲の味がより一層美味しく感じられるのではないでしょうか。

※農林水産省資料:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/climate/attach/pdf/partnership_project-21.pdf

Kotobuki焙煎が描く、珈琲を通じた地域貢献とこれから

Kotobuki焙煎の焙煎機が紡ぎ出す香り高い珈琲は、飲み物の枠を超え、地域と珈琲業界の未来を切り開くカギとなっています。

「『加古川を珈琲のまちに』。この想いが実を結び、近隣3店舗のロースターさんと共に『珈琲市』を開催できました。また、加古川観光局とのコラボで『かこのちゃんブレンド』のドリップパックも誕生。地域の皆さまに、より身近に上質な珈琲を楽しんでいただけるようになりました」と涼子さん。

さらに、寿之さんは業界全体の発展も視野に入れています。「他地域のロースターさんとの連携で、珈琲業界を内側から盛り上げていきたい。同時に、ダイレクトトレードを通じた国際貢献も継続していく。この両立が私たちの次のチャレンジです」

10月に東京で開催されるSCAJ2024アジア最大のスペシャルティ珈琲のイベントにKotobuki焙煎が出展予定です。ここで、ダイレクトトレードの逸品「ラヒャンコーヒー」を現地の方と共に紹介していくそう。

「将来の珈琲業界を担う方々の育成も大切です。まず、広く知っていただける場に私たちから出向くこと。また、お店のシェアロースターを通じて、これから焙煎を始めたいオーナーさんを応援していきます。皆さまの珈琲に関するお悩みも、どうぞお気軽にご相談ください。一緒に、より豊かな珈琲文化を作り上げていけたら嬉しいです」と田村さん夫妻。

Kotobuki焙煎の珈琲は、ただ珈琲を飲む楽しみだけではなく、地域の発展や業界の未来、そして国際貢献までをも含めたまさに「未来を紡ぐ一杯」。珈琲がもたらす深い味わいとこれからの珈琲への可能性を感じさせてくれます。みなさんもぜひご堪能ください。

Kotobuki焙煎

・住所:兵庫県加古川市尾上町池田830-152 
・営業時間:10:00~17:00
・定休日:月・木・金・年末年始・お盆・GW等カレンダーに準ずる
・公式サイト:Kotobuki「寿」珈琲焙煎所 (shopinfo.jp)
・オンラインショップ:https://www.kotobukidiet.com/shop
・Instagram:https://www.instagram.com/kotobuki_roaster/
・公式LINE:https://page.line.me/013yyuhv?openQrModal=true




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