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バースデーランウェイはファッションショーじゃない

私が約3年前に立ち上げた「バースデーランウェイ」というイベントについて、改めて自分の思いを振り返ってみる。

思い描く未来の自分を表現するランウェイショー

バースデーランウェイは、「今の自分を変えたい」と感じている人が表現者としてランウェイを歩くイベント。当日のランウェイショーでは、それぞれが「自分の思い描く未来」をコンセプトに制作した衣装やヘアメイク、照明音響の演出の中でランウェイを歩く。

2021年 3回目のバースデーランウェイ

バースデーランウェイは当日まで1年という長い期間がある。
その時間で、表現者はスタッフと共に自分に向き合い、「自身が大切にする軸」「本当にありたい姿」を見つけていく。自分を知るためのワークショップを通して、今まで気づかなかった感情に触れるという体験をする。

なぜエンタメなのに、ここまで自分に向き合うのかというと、「ランウェイショーで思い描く未来を表現するためには、まず自分自身が描いている未来を知る必要がある」から。

自分を知るワークショップにて

自分のことを知らないのに、自分を表現することなんてできない。だから全ては自分を知ることから始まる。それは表面的な強みや個性などと一言で言えるものではなく、過去の出来事を振り返り、自身の家庭環境や経験から生まれた潜在の意識や思い込みを知り、今の自分にどんな影響を与えているのかを理解していく。そうやって自分の思いや考えを言語化していくことで、心の中にある大切な何かをしっかりと軸にしていく。これを1年間かけて行っている。

さまざまな環境で育った私たちだから、物事に対する考え方や価値観、感情が揺れるものもできることも違うはずなのに、なぜか同じ条件で人と自分を比べてしまう。そんな窮屈な人生は勿体無いと思うから、私は「自分を知るきっかけ」を作りたいと思った。

自分に向き合って深く自分を知れば、人と比べて落ち込んでいることがいかに意味のないことだと気づく。私は、自分と誰かを比べて苦しんでいる人を一人でも減らしたかった。

それは私が同じように悩んでいる一人だったから。
自分に自信を持ちたくて色んな趣味を初めてみたり、何度も転職したり、頑張って何かになろうとした。でも長くは続かなくて、また新しいことに手を出してみたりして、結局何も成し遂げることはできなかったから、他の人と比べられることが怖かった。

私は最後に務めていた会社を辞めようと思った時に、「自分に向き合う」ということを初めて経験した。


それはいつもの通勤の電車の中。
その時の私は、とても重たい心で「この先ずっと私は転職を繰り返して、何もないまま終わっていくのかな」と悲観的なことを考えていた。

ずっと私は、自分が表現することを仕事にしたいと思っていた。憧れていた画家のお姉ちゃんを近くで見て育ったから、手に職をつけて自分の世界を形にする人が羨ましかった。でも私はそれがどうしてもうまくできなくて、同じような道を辿ってきたのに、お姉ちゃんと同じようになれなくて苦しかった。何かを続けることも、自分が好きなことを見つけることも。

なりたかった自分とは真逆の、誰かの意見や顔色を気にしてばかりの自分を何度も嫌になったし、そんな変われない自分を隠している毎日が辛かった。

でもそんなことを考えているうちに、私は「自分が憧れていること」と「本当に幸せを感じること」が違うことに気づいた。

私は自分が何かを表現することよりも、「誰かが何かに挑戦しようとする姿」が好きだった。その瞬間だけ、胸がいっぱいになる感じがして、ワクワクした。それは昔から何も変わっていない。誰かが夢中で夢を話したくなるような人でありたいという思いが、ずっと自分の中にあったことに気づいた。だから私の幸せの軸は何も変わっていなかった。目に見える仕事や肩書きはたくさん変わったけど、ちゃんと自分の中に大切な思いがあったことを知り、私は初めて自分のコンプレックスに感じていた生き方を受け入れることができた。

私はこの時、自分のことを知るということがすごいことだと知った。でも、こんな風に自分に向き合うきっかけって日常の中にほとんどない。自分にとって大切なことに気づけないまま生きていくなんて、もったいなと思ったから、私はすぐに思った。

「自分に向き合うきっかけを作りたい」

初めて開催した3年前のバースデーランウェイ

そこから3ヶ月後に1回目のバースデーランウェイを開催した。
とても小さなイベントだったけど、私はイメージしたものを手探りで作った。お金も人脈もスキルもない。ただこのイベントをどうしてもやりたいということを伝えることしかできなかったけど、そんな思いを聞いて協力してくれる人たちに出会い、なんとか開催できた1回目。


次の開催は2022年12月17日。
これが3回目のバースデーランウェイ。ランウェイショーの来場者からすると、歩く人は全く他人の一般人。
「それって誰が見るの?」と思う人もいるかもしれないけど、ランウェイを歩く表現者と同じように悩んでいる人って実はすごくたくさんいる。
同じ悩みや葛藤を抱え、その壁を乗り越えようとしている人を見て、来場者は何を感じるだろうか。私が来場者だとしたら、ランウェイを歩く人が他人だなんて全く思わない。

誰かの人生の裏側をこれほどリアルに見る事なんてほとんどない。
情熱大陸のような有名人を追いかけるドキュメンタリーではなく、私たちと同じように毎日を生きる人たちの人生を見るショーイベント。私は、その人が決意を固めて、ここから踏み出す瞬間を見る日だと思っている。

人が勇気をもらう瞬間や踏み出そうと決める時は、誰かの「強い意思」が見えた時だと思う。だから、目の前に見えている人が他人であっても、その人の人生を通して、自分の大切なものに目を向けて欲しい。同じじゃなくてもいいし、違う必要もない。ただ「自分」だけを見てほしい。

私はバースデーランウェイで自分が必要としていた場所を作った。
あの時の私に必要だったのは、「自分を知る方法」と「背中を押してくれる存在」だった。だから今はそんな人ばかりがチームにも集まった。

立ち上げて3年たっても、私はまだ人前で話すことにも慣れずバースデーランウェイのコンセプトを伝えるだけでも緊張してしまうけど、このプロジェクトへの思いはしっかりと言語化できるようになり、思いも固くなった。

このプロジェクトで少しでも誰かが生きやすくなったり、一歩踏み出してみようという気持ちになれたら嬉しいなと思う。

3回目バースデーランウェイ終えた後の焼肉で


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