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Miles Davis「E.S.P.」(1965)

愛犬が重病で入院、今週退院出来るといいのですが、その関係で今年の年末年始は外出することもなく、久しぶりに音楽&読書三昧の休日を過ごそうかなと思っております。

今回ご紹介するマイルス・デイヴィスの「E.S.P.」は、昔、ブックオフで購入したもの。個人的にはマイルスの音楽は苦手なのですが、この名盤がオフで500円で売られているのは珍しく、また不思議なジャケット(この女性は誰でしょう)に惹かれて購入した次第。当時、このアルバムをよく聴いておりました。

私が好んで聴いているマイルスのアルバムは、やはり「Kind Of Blue」でしょうか。モード手法の代表的なアルバムとして有名ですが、ここでピアノを弾いているのがビル・エバンス。私が大好きなピアニストで、ビルがピアノを弾いているから「Kind Of Blue」が好きだと言い換えることも出来ます。

つまり私自身、それほどマイルスの音楽が好きではなく、むしろ苦手意識さえ持っております。特に70年代のフュージョン志向のアルバムは、一回聴いて、それっきりというものも結構あります。
私の音楽嗜好がポップスを敬愛する傾向にあり、こうしたジャズにメロディアス性を感じさせない点が食わず嫌い的になっているのかもしれません。

その私がこの「E.S.P.」はよく聴いておりました。
このアルバム、1965年発表の、マイルス・デイヴィス・クインテット、つまりマイルス、ウェイン・ショーター(T-sax)、ハービー・ハンコック(P)、ロン・カーター(B)、トニー・ウィリアムス(Ds)の俗に言う「黄金のクインテット」による記念すべきファーストアルバムなのです。もちろんジャズに疎い方々でも音楽好きなら一度は聞いたことのあるミュージシャンの名前かと思います。のちにウェインはウェザーリポートで活躍、ハービーはソロでファンキーな音楽で商業的な成功を収め、ロンやトニーもジャズ界を牽引していく活躍をしております。本作、この5人が奏でる極上の空間が素晴らしいんですよね。

またメンバーそれぞれが持ち寄った楽曲が素晴らしい。タイトルトラックの①「E.S.P.」はウェイン・ショーターのスピーディーな楽曲。③「Little One」はハービー・ハンコックの美しいバラード。そして④「R.J.」はロン・カーター。それぞれが帝王マイルスに臆せず、オリジナル楽曲を披露しております。

それら楽曲はすべてジャズにおける名曲なのですが、私を驚かせたのが⑤「Agitation」。マイルスのオリジナルですが、イントロからトニーのドラムソロが爆発します。それは約2分。当時ト二ーは若干20歳。収録時は19歳でしょう。帝王マイルスを差しおえてドラムソロを披露するとはたいした度胸です。
アップした映像はイントロのドラムソロはないのですが、トニーの暴れ馬のようなドラムが聴けます。途中、ウェイン・ショーターの後ろで叩くトニーの姿、なんとカッコイイことか。そして優等生然としたハービー、知的なピアノソロですね。

本作中、一番のお気に入りは⑥「Iris」でしょうか。
ウェイン・ショーターのバラードです。ここでもハービーのピアノソロが実に美しい。心に響く旋律を弾いているわけではないのですが、彼等が紡ぎだす空間に、うまくピアノソロが溶け込み、よりいっそう美しさが際立っております。

エンディングトラックの⑦「Mood」はロン・カーターとマイルスの共作ですが、「Iris」と同様に静かななかにも何か強烈なものを感じます。特にミュートを効かせたマイルスのトランペットは脳天をつんざく様に響いてきますね。

なんとなく物思いに耽りたい夜、こうしたジャズはその空間にぴったり合いますね。


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