Silk Sonic「An Evening with Silk Sonic」(2021)

ついに発売となりました。シルク･ソニックのデビューアルバム。というかブルーノ･マーズとアンダーソン･パークのプロジェクトですね。
私自身はアンダーソン･パークはよく知らない方だったのですが、ブルーノ･マーズは大好きなアーチストです（特にアルバム「24k Magic」は大好き）。彼の80年代ソウルを感じさせるメロウチューンは、多くの80年代洋楽マニアを虜にしましたね。そしてシルク･ソニックも期待に違わず、3月にリリースされたそのデビュー曲「Leave The Door Open」はまさに70年代ソウル！

本作は素敵なシルク･ソニックのデビュー･アルバム。全9曲、わずか31分強。最近の楽曲を詰め込み過ぎた70分近くあるアルバムとは違い、本作はあまりにもコンパクト。これも昔のアルバムを連想させます。そしてどれもキャッチーで懐かしのソウルのオンパレード。

プロデュースはブルーノ･マーズとD･マイル。多分、私も含めて最新の洋楽を聴かない方にとってはD･マイルなる人物は全く知らないと思いますが、彼は2019年にデビューしたラリー･ダイエの大ヒットアルバム「Painted」のプロデューサーで、そのアルバムを耳にしたブルーノがD･マイルとのプロデュースを望んだという経緯。
ちなみに2014年にデビューしたアンダーソン･パークは2017年にブルーノのツアーのオープニング･アクトを務め、歳もあまり変わらないブルーノと意気投合。その時から一緒に何か作ろうとしていたらしい。

オープニングはシルク･ソニックのテーマを連想させる①「Silk Sonic Intro」。
これがまたカッコいいのです！まさにアルバムのイントロ、幕開けに相応しいナンバー。ちなみにジャケットにも記されている通り、このアルバムのホスト･ゲストとして、あのファンク界の大御所ベーシストのブーツィー･コリンズ（御年70歳）が参加。ブーツィーはジェームス･ブラウンのバックやPファンクでベースを弾いていた大御所です。そのブーツィーがこの曲でホスト役を務めてます。エンディングでシルク･ソニックを紹介しているのがブーツィーですね。ブーツィーはベイビーフェイスの名付け親としても有名ですが、シルク･ソニックという名前もブーツィーが提案したようです。

そして続くのが…、もう聞き飽きた方も多いと思いますが、彼等のデビューシングルの②「Leave The Door Open」です。超絶メロウソウル！万が一、まだ聴いたことがない方、もしくはこのMVをご覧いただいたことがない方は是非チェックしてみて下さい。とにかく素敵な70年代ソウル、スタイリスティックスを彷彿させるフィリーソウル。しかもキラキラした頃のメロウなソウル。映像でもお分かりの通り、アンダーソン･パークはドラマーです。アンダーソンとブルーノがヴォーカルが分け合ってますね。

こちらは80年代風のメロウなソウルの④「After Last Night」。サンダーキャットとブーツィー･コリンズが参戦しております。
サンダーキャットについては彼の昨年の新作「It Is What It Is」をレビューしてますので、ご参考下さい。サンダーもブーツィーもこうした楽曲がお好きなんですね。

⑦「777」は強烈なファンクチューン。こういう曲もご紹介しておかないといけませんね。
こうした楽曲もしっかりダンス･チューンになっているところがブルーノ･マーズらしい。サウンドはよりモダンなラッパー仕立てですが、これもまたカッコいいナンバー。3分以内に収まってしまう短い曲というのも…らしい。

彼等の7月にリリースされたセカンドシングルの⑧「Skate」は軽快なフィリーソウル。
ご機嫌なナンバーであり、驚くほどポップなチューンですね。このMVは見ているだけで、ワクワクしてきます。アンダーソン･パークのドラミングも非常にグルーヴィー。しかしこれだけの70年代フィリーを模した音楽が、このご時世、こうしてヒットするなんて誰が予想したでしょう。

アルバムのフィナーレはアーバン･ソウル風な⑨「Blast Off」。
歌詞の通り、空に、そして宇宙に吹き飛ばされる雰囲気が十分伝わるアレンジ。間奏のスペイシーなギターソロなんかも効果的です。曲のアウトロでのブーツィーの呟きも印象的。

如何だったでしょうか。ブルーノ･マーズが80年代ソウルをフォーカスしたのに対し、シルク･ソニックは更に遡り、70年代ソウルに回帰したような印象で、素敵なアルバムです。ただ全9曲、既に4曲は発表済でしたので、実際は5曲の新曲しか収録されていないので、もうちょっと新曲を聞かせてほしい…というのが正直な印象。飢餓感を煽るようなマーケティングなのかもしれませんが…。あと本作に関わったアンダーソン･パークやサンダーキャット、D.マイルの一連の作品なんか、新たにチェックしたくなりました。