Linda Ronstadt「What's New」(1983)
関東は一時的かと思いますが、ちょっとだけ涼しくなりました。
もう少し我慢すると秋になってきますが、そういった際によく聴いているのがジャズ。秋の夜長に本当にぴったりです。
ジャズというとビル・エヴァンスやマイルス・デイヴィス等連想しますが、今日ご紹介するような1枚もなかなかです。
リンダ・ロンシュタットはご存知、ウエストコーストロックの女王。1972年にはイーグルス結成前夜の彼等を従え、名作「Linda Ronstadt」を発表。カントリーロック界において、金字塔を打ち立てます。その後の彼女の活躍は皆様ご存知の通りです。
そんなリンダが世間をあっと言わせたのが1983年に発表した本作。フランク・シナトラ等を手がけた大御所、ネルソン・リドルと組んだ本格派ジャズ・スタンダード集です。
実はリンダは1981年にジェリー・ウェクスラーのプロデュースで同様の作品を制作しております。これらはトム・スコット、トミー・フラナガン、ジョージ・ムラーツ等ジャズ界のスターたちを集めて作られたものですが、リンダ自身がその出来に満足せず、お蔵入りとなっていまいました。
ちなみに同年、カーリー・サイモンが同じ趣向のスタンダード集「トーチ」を発表してしまいます。
ひょっとしたらライバルに先を越されたという思いもあったのかもしれませんね。
私が洋楽を聴き始めた頃は、1982年発表の「Get Closer」がヒットしており、リンダのイメージは、特に表題のパンチの効いたロックに現れているような、力強いものでした。
↑ 今聴くと、渡辺美里の「センチメンタル・カンガルー」の元ネタであることがよく分かりますね。
ところが翌年発表された本作、一転、全く違う一面のリンダを見せつけられた思いでしたね。ただし当時の青二才の私には、このテの音楽が分かるほど成熟しておらず、殆ど興味がありませんでした^^。
本作、プロデュースは盟友ピーター・アッシャー、アレンジ&指揮は大御所、ネルソン・リドル。ジャケのデザインはジョン・コッシュ。
シングルカットされた①「What's New?」。あまりにも有名なこの楽曲、スィートなネルソン・リドルのオーケストラにうっとりしてしまいます。リンダのここでの唄法、従来とは全く違った、ジャズ歌手らしいしっとりした歌い方で、同じアーチストとは思えませんね。
ガーシュウィンの②「I've Got a Crush on You」は以前からリンダのレパートリーとして採り上げていたもの。こちらはセカンドシングルにもなりました。
こうして聞いてみると、リンダはもともとこうしたスウィングジャズやスタンダードナンバーが大好きだったんでしょうね。このアルバムはレコード会社やピーター・アッシャーでさえも消極的だったようですが、最後はリンダの意志を尊重して発表に至ったようです。
③「Guess I'll Hang My Tears Out To Dry」の貴重な映像がありました。
東京でのライブ映像のようです。この曲は1944年、ミュージカル「グラッド・トゥ・シー・ユー」のナンバー。
全く違うリンダが堪能できます。「Get Closer」の頃のリンダの映像と比較して頂ければ一目瞭然でしょう。
個人的にはジャズスタンダードナンバーには全く疎いのですが、 ⑦「What'll I Do?」は大好きな1曲です。
本作はあの「White Christmas」で著名なアーヴィング・バーリングが書いたもの。近年では1974年、映画「華麗なるギャッツビー」の主題歌でヒットしました。私の大好きなクリス・ボッティもカバーしてますね。
この曲は、まさに秋の夜長に聴いていたい1曲。このリンダのヴァージョンは本当に美しい。
このアルバムは1曲1曲を堪能するというより、アルバム通しで堪能して頂きたい。そしてシチュエーションはこの季節の夜に・・・。
本作は非常に好評で、リンダはネルソン・リドルと同種のアルバムを更に2枚発表しております。ネルソン・リドルは1985年に亡くなりますが、晩年、リンダと最高の仕事をされましたね。
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