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大村憲司「KENJI SHOCK」(1978)

ハービーやTOTO等と対等に渡り合っている日本のフュージョン黎明期の超名盤

今月のレコード・コレクターズ誌の特集は「アルファレコード」。村井邦彦さんが立ち上げた、荒井由実や赤い鳥でお馴染みの個性的なレーベルですね。このnoteをご覧になられている方で、どれだけの方が「アルファレコード」をご存じなのか分かりませんが、時代を牽引していったレーベルであることは間違いありません。

アルファというとシティポップ、YMOのイメージが強烈ですが、実はフュージョンもいいアルバムを制作しております。カシオペアが代表格ですが、この大村憲司のセカンドも素晴らしい。上のカバー写真は彼のファーストの裏ジャケですが、ラリー・カールトンを彷彿させるお姿ですね。

プロデュースはハービー・メイソン。リズム・セクションはドラムにジェフ・ポーカロ、ベースにマイク・ポーカロ。ギターはスティーヴ・ルカサー。キーボードはグレッグ・マティソン。後にTOTOのメンバーとして名を成すミュージシャンが参加している貴重なアルバムなわけです。TOTOのデビューが1978年10月ですから、このアルバム収録時と、TOTOのデビューアルバムの収録時は重なっていたのかもしれません。

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本作はファーストアルバム「ファースト・ステップ」から4曲重複して収録されてます。もちろん演奏メンバーが違いますが、ファーストからセカンドと、時間もそんなに空いてませんし、時間のない中で制作された様子が窺えます。但し内容は素晴らしいの一言。
ファーストトラックの①「LEFT-HANDED WOMAN」から爽快なフュージョンナンバーです。彼の代表作でもありますね。特にジェフ・ポーカロのドライブ感漂うドラミングに乗せた、大村憲司の歌うギターメロディが素敵です。間奏のグレッグ・マティソンのオルガンソロもカッコいい。盛り立てるホーンのアレンジはご存じ、ラリー・ウィリアムスです。

ちょっとメロウな③「YUMEDONO」は同じ年に発売されたTOTOのデビューアルバムに収録された「Georgy Porgy」のテンポ、リズムパターンにそっくり。

ハービーと大村さんとの共作の④「SHOCK」。アルバムタイトルも連想させる、本作を代表する作品。とにかくリズムがタイト。もちろんジェフ&マイクのポーカロ兄弟のプレイですが、ジェフはこうした楽曲を叩かせたら天下一品です。マイク・ボディッカーのシンセも印象的。

クロスオーバー的な⑤「RHYTHM ROAD」。在りし日のジェフ・ベックがプレイしそうな楽曲。リターン・トゥ・フォーエヴァーもこうした楽曲やってましたね。ドラムはハービー・メイソン自身が叩いてます。ハービーが得意としていそうな楽曲ですしね。ベースはEmbambaとクレジット表記がありますが、アルフォンソ・ジョンソンのことですね。そしてデヴィッド・ペイチがキーボードで参加してます。これまた贅沢なメンバー。ちなみにこの楽曲は大村さんのオリジナルではなく、盟友是方博邦氏のペンによるもの。

本作中、一番心地いいフュージョンナンバーがファーストアルバムにも収録されていた⑥「BOSTON FLIGHT」。グレッグの心地いソロが素敵ですね。これはMartin Willweberの作品ですが、彼は松岡直也のバンドなんかでパーカッションを担当していた方。いい曲です。

大村憲司はこの後、YMOのツアーメンバーとして活躍。1981年には高橋幸宏さんや坂本龍一さんとタッグを組んで、テクノを取り入れたアルバム「春がいっぱい」を発表。後にハービー・メイソンはこのアルバムを聴いて、「俺があんなカッコいいアルバムを作ってやったのに、なんなんだ!」と激怒したという逸話も(笑)。
確かにアルバム・タイトル・トラックはシャドウズのカバーだし、この「KENJI SHOCK」のイメージが微塵も感じられないアルバムですからね(苦笑)。でもビーチボーイズが好きな私としては、「春がいっぱい」のような楽曲は大好きですよ。アップした演奏シーンも最高ですね~。


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