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松田聖子「Canary」8th (1983)

松田聖子の初期のアルバムは、従来のアイドル歌謡曲とは違い、ニューミュージックシーンで活躍している方々が書かれた楽曲、そして素晴らしいミュージシャンのアレンジが楽しめ、聴き応えのある内容が多いですね。

そして今回ご紹介するのは彼女の8枚目のアルバム「Canary」。当時の私は松田聖子のアルバムなんて全く興味がなく、洋楽オンリーの中学生でした。そんなとき、たまたま私の妹がこのアルバムを購入。全く興味がないと豪語していた私も、このジャケットに引き寄せられるように、ついついこのアルバムをターンテーブルに載せてしまいました。
う~ん、意外といいじゃないか・・・。当時素直にそう思いましたね。

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ドラマの内容は全く忘れましたが、石黒賢主演の「青が散る」というTVドラマが当時放映されていて、その主題歌が本作に収録されている⑨「蒼いフォトグラフ」でした。
作詞:松本隆、作曲:呉田軽穂(松任谷由実)、編曲:松任谷正隆のゴールデン・トリオの作品。
この曲を聴くと石黒賢を思い出します。ドラマの内容も覚えてないのに・・・。それだけ彼の印象が強いのでしょうか。しかしこの曲、今聴くとアレンジが秀逸ですね。スタッカートの効いたキーボードが非常に心地いいです。

このアルバムからは⑤「瞳はダイアモンド」がシングルとして発表されていますが、個人的にはこの曲、当時それほど好きではありませんでした。でも今聴くと、なかなかアダルトなアレンジが渋くて、いい曲ですね。余談ですがこの曲名、ダイヤモンドという表記ではないんですよね。松田聖子は確実にダイヤモンドと発音しているのですが・・・(苦笑)。

このシングル「瞳はダイアモンド」以上に魅力的な楽曲・・・、それが③「プライベート・スクール」です。作詞:松本隆、作曲:林哲司、編曲:井上鑑。井上鑑は当時稲垣潤一の殆ど全ての楽曲のアレンジを手掛けていた人物で、日本のフュージョンバンド、PARACHUTのメンバーでもありました。
この楽曲が非常にAORの香りを漂わせているのは彼の仕事によるところが大きいような気がします。ちなみにこの曲のギターは今剛。彼もまたPARACHUTのメンバーでした。そして突っ込み気味のタイトなドラムは島村英治。ホーンセクションなんかもAORフレイヴァーたっぷり。
とにかくシャッフルビートのポップナンバーで、楽曲・演奏共最高です。当時のJ-POPの最高の音ではないでしょうか。

そして「プライベート・スクール」と同じ作詞、作曲、編曲陣の⑥「LET'S BOYHUNT」。これもまた素晴らしい。このリズミカルなイントロは稲垣潤一そのものですね。エンディングで敢えて転調するところなんか、アレンジ凝っているな~と思ってしまいます。あとキーボードアレンジはローラ・ブラニガンの「グロリア」をパクッたかなと。
この曲を稲垣潤一が歌っても違和感はないかもしれません。そういった意味では松田聖子の楽曲はニューミュージックとクロスオーバーしているのでした。ここでのドラムは元シュガーベイブの上原裕
井上鑑は本作でいい仕事をしているのですが、なぜか松田聖子との仕事はこのアルバムのみなんですよね(以降の作品は詳しくは知りませんが)。不思議です

このアルバムで忘れてならないのが②「Canary」。
アルバムタイトルナンバーですが、実はこの曲、松田聖子が初めて世に発表した自作ナンバー(と思うのですが)。普通アイドル歌手が最初に挑戦するのは作詞が多いと思うのですが、彼女は作曲に挑戦したのでした。ちなみに作詞は松本隆、編曲は大村雅朗。大村氏は松田聖子と同郷で、彼女のよき相談相手であったと云われてます。そんな大村氏が実際は作曲も手伝ったのかもしれませんね。このアルバム発表前、松田聖子は「SWEET MEMORIES」をヒットさせますが、その作曲・編曲も大村氏でした。
(初期松田聖子のアレンジャーとして欠かせぬ存在だった大村氏は1997年に46歳の若さで亡くなってます)

キャンディ・ヴォイスの松田聖子。このアルバムではちょっとハスキーな声になっているような気がします。前述の「SWEET MEMORIES」で更にステップアップした彼女ですが、それに合わせたかのように声も変わっていったのでしょうか・・・。
最後にアルバム未収録の名曲「SWEET MEMORIES」をどうぞ・・・。


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