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Paul McCartney「McCartney II」(1980)

ポール・ファンにとっては賛否両論、いや正直「否」のご意見の多いアルバムかもしれません。実際レココレ2011年8月号のこのアルバムの特集記事に、ライターの和久井氏は本作を駄作と指摘されていらっしゃいます。またこのアルバムは日本人にとってはいろいろな意味で興味深いアルバムとなってしまいました。

1980年、ウィングス初来日。1月21日の日本武道館を皮切りに、名古屋・大阪を周り、最後2月2日に再び日本武道館、計10公演という強行軍でスケジュールが組まれていました。そして1月16日、いよいよポールは日本にやってきました。ところが入国審査が下りない。麻薬所持の前歴があるので、念入りに手荷物検査を受け、そして・・・。日本人にとっては悪夢のような出来事が・・・。いや、それはポール自身がそう思ったでしょう。日本での検査の厳しさを知らなかった迂闊なポールと言ってしまえば、そうなんですけどね。

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この悪夢のような出来事のあと、ポールは自宅に篭り、そして1979年にプライベートにレコーディングしていた作品を発表することとなります。まあ、それが問題作だった訳で。

ファーストシングルの①「Coming Up」をお聴き頂ければ、よくわかると思います。当時流行していたテクノサウンドを大胆に取り入れたサウンドには驚かされますね。
この曲、実はウィングスでも演奏されてます。アップした映像は1979年12月29日のもの。そう、この流れでウィングスは日本で演奏する筈だったのです。この「Coming Up」はカッコいい。スタジオ録音バージョンでは伝わりきれなかったグルーヴ感が素晴らしいし、何よりポールのヴォーカルと唸りを上げるベースがスゴイ。それにしてもこの演奏が日本で聞ける筈だったなんて、なんとも残念。

②「Temporary Secretary」はもっとテクノしてます。
イントロのピコピコサウンドからビックリですね。ヴォーカルにもイコライズが掛かっているようで、これまたテクノっぽい。単調なメロディといい、やっぱりポールらしくない。

本作においては異色の、要するにポールらしい美しいバラードが③「Waterfalls」。
80年代のポールが作りそうな楽曲です。もちろんシングルカットもされた名曲。本作にはこうしたポールらしい佳曲も収録されているのです。

一瞬YMO??と思ってしまう⑥「Front Parlour」。
何の情報もなくこの曲を聴いて、誰がポールの曲と当てられるでしょう。インストだし、ポールの曲とは全く分かりませんね。しかもチープ感漂うアレンジ(笑)。

本作には⑧「Frozen Jap」という曲が収録されてます。
この曲について、それから一連の騒動についての、貴重なポールのインタビューがアップされてました。非常に興味深い内容なので、アップしておきます。

エンディングは一番ポールらしい曲が納められてます。⑪「One Of These Days」。
アコースティックな、これめたメロディの美しい曲。こうした曲が最後だと安心感がありますね。

本作発表後、ウィングスとしてのアルバム製作に入るわけですが、それが12月のジョンの死で、再び頓挫。ウィングスは自然消滅していきます。1980年はビートルズファンにとっては悪夢のような年だったのです。

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