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Boz Scaggs「Memphis」(2013)

ボズ・スキャッグスの永遠の名盤「Silk Degrees」。AORをこよなく愛する私としては大好きなアルバムの1枚ですが、このアルバムの本質は、AORというオシャレな音楽のイメージという覆いに隠された、かなりソウルな泥臭い音楽と捉えており、それは「Silk Degrees」以前の叩き上げのボズがあったから出せた音なわけですね。

ってことで、連休、音楽をじっくり聴く機会も結構あったので、ボズの初期の作品(「Silk Degrees」以前)を好んで聴いてました。何気なくボズの他の作品もチェックしていたところ、AOR以降のボズをスルーしていたことに気付き、早速チェック。「メンフィス」…、何か気になるアルバムタイトルを発見。メンフィスといえば、メンフィス・ソウル。初期ボズはアラン・トゥーサンに代表されるサザン・ソウルを好んでやってましたね。コレはまさかメンフィス・ソウルのアルバムなのでは…、そしてまさにそういった内容の素晴らしいアルバムでした。

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このアルバム、プロデューサーにはスティーヴ・ジョーダンを指名。コアのミュージシャンはスティーヴ(Ds)、ウィリー・ウィークス(B)、レイ・パーカー・Jr(G)。もちろんメンフィス・ソウルの聖地、ロイヤル・スタジオでの録音。ボズのオリジナル作品は2曲のみで、あとメンフィス・ソウル系の珠玉の名曲のカバー。このアルバム、なんとたったの3日間で収録してしまったとのこと。ボズの渋いヴォーカルと極上のプレイヤーが奏でるメンフィスソウル…、素敵です。

アルバム・トップはボズの作品の①「Gone Baby Gone」。いきなりアル・グリーンかと思っちゃいました。スティーヴ・ジョーダンらしい重々しいスネアとジム・コックスのオルガンが、メンフィス・ソウルを色濃く反映させております。コレ、渋いんですが、いいですよね。TOTOと一緒にグルーヴしていたボズとは一味違う、いぶし銀のボズ。結局、一回り廻って原点回帰…ってことですね。

今度は本家、アル・グリーンのカバーの②「So Good to Be Here」。
アルの1973年発表のアルバム「Livin' For You」からの選曲。もちろんアルのこのアルバムもロイヤル・スタジオでの録音。メンフィス・ソウルといえばハイ・レコード。アル・グリーンもハイ・レコードから多くのアルバムを発表しており、そのミュージシャンたちはハイ・リズムと呼ばれてました。実はそのメンバーのひとり、チャールズ・ホッジス(Key)が本作に参加しているんですよね。①②のオルガンもチャールズのプレイです。

トニー・ジョー・ホワイト作の名曲④「Rainy Night in Georgia」。
ボズの唱法からお分かりの通り、ブルック・ベントンが1970年に大ヒットさせたバージョンのカバーですね。たまにはこんな渋い曲を今宵、じっくり聴いてみるのもいいのではないでしょうか。

♪ I find me a place in a box car
  so I take my guitar to pass some time ♪

ボズが自分自身を重ね合わせて歌っているようです。

ザ・モーメンツのカバーの⑤「Love on a Two Way Street」。
これはもともとはアルバムの中の1曲だったものを、1970年にシングルカットした名曲。原曲はファルセット全開の、後のフィリーソウル系の音。甘くドリーミーなソウルです。これをボズはメンフィス・ソウル風にアレンジ。これもまたナイスな選曲とナイスなアレンジ。ボズのヴォーカルも素敵です。

なんとスティーリー・ダンのカバーの⑥「Pearl of the Quarter」。
大好きなスティーリー・ダンなのに、迂闊にも原曲を知りませんでした。早速チェックしてみましたが、原曲はジェフ・バクスターのスティールギターをフューチャーした、かなりレイドバックしたスワンプサウンド。初期スティーリー・ダンはこのテの楽曲が結構ありましたね。
ボズは比較的原曲に忠実にやってますが、チャールズ・ホッジスのオルガンとジム・コックスのピアノがメンフィス・ソウルっぽく演奏してますね。スワンプとメンフィス・ソウルって根っこは一緒なのかもしれませんね。

この後ボズは2015年に「A Fool To Care」、2018年に「Out Of The Blues」を発表。ますます渋くなっております…。


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