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Deep Purple 「Stormbringer」 (1974)

第3期ディープ・パープル、特に新加入したデイヴィッド・カヴァデールとグレン・ヒューズが活躍(暗躍??)し出す本作については賛否両論ありますね。やっぱりリッチーが本作を「最低!」と評したことでもお分かりの通り、特にリッチーも含めて第2期を愛するファンにとっては、この作品、最初聴いたときは違和感だらけだったのかもしれません。実は私も最初はそういった印象だったのですが、じっくり聴いた今ではいろいろな発見をしております。

邦題、嵐の使者の通りのジャケットが素晴らしい。パープルにとっての嵐の使者はデイヴィッドとグレンだったのかもしれません。

本作の1曲目、アルバムトラックの①「Stormbringer」。第2期パープルサウンドを継承するような1曲です。パープルのベスト盤には本作からは概ねこの曲が収録されているかもしれません。第3期の代表曲といえば「Burn」と「Stormbringer」。なんだかお決まりのようになってますが、実は第3期の魅力はこれらの曲では全く分かりません。そしてこの2曲を良しとされる方にとっては、本作は駄作と判断されるし、ここから続く(特に②~④)楽曲は無視されているかもしれません。

それも何となく理解出来ます。とにかく②「Love Don't Mean A Thing」から驚かされました。イントロからリッチーのギターがなにやらおかしい。音が全く歪んでいません。そして音がやたらと黒くてファンキー。ここではデイヴィッドとグレンがヴォーカルを分け合ってます。個人的には太めなデイヴィッドのヴォーカルが好みです。そしてエンディングでは裏声を使ったコーラスが…。これは何かの間違い??
明らかに第2期パープルサウンドとは違います。リッチーが酷評するのも理解出来ます。ただ…、この音は決して駄作ではありません。

従来からのファンは駄作と決め付ける決定打の④「Hold On」。実は私はこの曲が結構気に入りました。ファンキーなハードロック。ともするとブギー調なんで、サザンブギー??とも思ってしまいます。ここでのリッチーのギターソロは「親指で弾いた」とも云われている「やる気のないソロ」です。でもこの曲にはこうしたソロが合っていたのかもしれません。ひょっとしたらアレンジ面を考えて、こうしたソロにリッチーが仕立てたのかもしれません。
デイヴィッドとグレンがヴォーカルを分け合うスタイルといい、イアンのシャッフルするドラミングといい、かなりいい曲だと思うのですが…、巷では今ひとつの人気のようです。

⑤「Lady Double Dealer」からがB面。A面トップが旧来のパープルサウンドであったように、B面も同じような構成です。ですから「Lady Double Dealer」も安心して聴けます(笑)。
私は①「Stormbringer」よりはこっちの方が断然好みです。「Highway Star」をよりポップにしたという感じでしょうか。スピード感があるし、スリリングです。

あ~、また問題作ですね(笑)。⑥「You Can't Do It Right (With The One You Love)」。グレンの趣味なんでしょうか、超ファンキーな1曲です。なんとリッチーがカッティングギターを弾いてます。そしてイアンは16ビートを叩いている!
サビをユニゾンで2人で歌うところなんか、カッコいい。パープルとしての評価は低くても、実は楽曲のクオリティが非常に高いと思ってます。

多くの方が指摘している通り、本作のハイライトはやっぱり⑧「The Gypsy」~⑨「Soldier Of Fortune」なんでしょうね。リッチーが本作で唯一気に入っている作品が⑧「The Gypsy」。なるほど、確かにリッチー好みの美しいメロディを持ってますし、どこか中世的な、後のレインボーにも繋がる音ですね。ギターソロもGood!
そしてこの曲はデイヴィッドとグレンがずっと2人で歌い続ける楽曲。この曲が第3期の新たな良さをよく現しているかもしれません。

第2期パープルのみを良しとするご意見の方にとっては違和感があるかもしれませんが、個人的には本作、駄作がないと思ってます。そういった意味では実は本作、かなりの名盤なのでは???と感じましたね。そしてグレンやデイヴィッドが持ち込んだ、この流れはもっと聴いてみたかった・・・と感じている方は私だけではないでしょう。

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