見出し画像

The Who「The Who Sell Out」 (1967)

急に寒くなってきて、あっという間に冬の到来を感じさせる季節になりましたね。皆さん、体調管理にご留意ください!

さて、本作は1967年に発表された、ザ・フー3枚目のアルバムです。
ザ・フーって結構好きなんですが、やっぱりよく聞くのは「Tommy」以降のアルバムで、それ以前の初期フーは、それほど熱心に聞いてきた訳ではありません。ただ今回、本作を聴いて、やっぱりピート・タウンゼントって素晴らしいソングライターでもあるし、企画マンとしても秀逸な人物だったんだなあと感心した次第。

本作は架空のラジオ放送局「Radio London」から放送されているように見立てた、所謂コンセプトアルバムってやつですね。曲の間にジングルが流れますが、もともとはこのジングルの部分に、本当の企業の広告を入れようとしていたらしいです。現実的ではないですが、面白いアイデアですよね。こうしたコンセプト・アルバムはもちろんビートルズの「サージェント・ペパーズ…」や、ビーチボーイズの「ペットサウンズ」から影響されたと思われます。でもこの作品に荒々しいハードなザ・フーを期待すると痛い目に会うかもしれません。初期、ザ・フーって、意外とポップなんですよね。本作もポップス集といえなくもないです(ただし相変わらずキース・ムーンのドラムはうるさいですね(笑))。

画像1

まずイントロからしてビックリ。前述の通り放送局のジングルですね。それに続くサウンドはノイジーで、ちょっとサイケなロックナンバーの①「Armenia City in the Sky」。この曲のみメンバー以外の作品で、スピーディ・キーンの作品。彼は後にサンダークラップ・ニューマン(ウィングスに加わるジミー・マッカロウも在籍)を結成し、「Something In The Air」のヒット曲を生み出します。それにしてもパワフルな楽曲です。キースのドラムはバタバタしているし、それ以上にジョン・エントウィッスルのベースが唸りをあげており、この曲の潜在的なパワーを引き出すことに成功してますね。間奏の逆回転テープ風なサウンドは、まさにサイケ。カッコいいです。

実にポップな⑥「Our Love Was」。間奏の♪Love,Love,Love…♪ってコーラスが実にチャーミング。個人的にはその部分、ドリカムを連想させて、ニヤッとさせられます。またこんなポップな曲なのに、なんでキースのドラムって荒々しいんだろうって、またまたニヤッと。でもよく聴くと、そのパーカッシブなプレイは、ひょっとしたらペットサウンズのハル・ブレインのプレイに影響されたのではないかと。またピートのギターの音色や、そもそも楽曲のテイストもペット・サウンズからの影響を感じさせます。

本作中、これぞザ・フーという楽曲が⑦「I Can See for Miles」でしょう。邦題「恋のマジック・アイ」。イントロからキースのダイナミックなドラムと、緊張感あるコード進行。聴けば聴くほどカッコいい名曲ですね。もちろんシングルカットされた楽曲ですが、やっぱりこのアルバムの流れの中で聴く「I Can See for Miles」がいい。
そしてアップする映像はやっぱり演奏シーンが映ったものがいいですね(口パクですが)。とにかくやたらとキースが目立ちます。しかも途中でスティックを落とすシーンまで映ってます(笑)。ちなみにキースのドラムセット、ハイハットがありません。彼はリズムを刻むのにハイハットではなく、シンバルを使うので、うるさいんですね。

これもまたポップスの⑧「I Can't Reach You」。というかソフトロックっぽいかもしれませんね。ピートのメロディメーカー振りが堪能出来ます。またヴォーカルもピートが歌ってます。激しいステージングのイメージが強いザ・フーですが、実は楽曲は親しみやすいものが多く、そういった2面性を併せ持つところが、彼らの最大の魅力かもしれません。

エンディングは組曲風の⑬「Rael 1」。次作「Tommy」を彷彿させるミニ・オペラと言えなくもないですね。もうこの時点では「Tommy」のアイデアがあったということでもあります。それにしてもこの曲、4分20秒過ぎからの展開、音作り等にもペット・サウンズの匂いが。でも明らかにThe Whoの世界観だし、演奏そのものがカッコいい。

ちなみにジャケットの左、ピートが持っているデオドラントは「Odorono」(4曲目の曲名)。ロジャーの持っている食べ物は「Heinz Baked Beans」(2曲目の曲名)。裏ジャケもキースは「Medac」(9曲目でジョンの作品)、ジョンが「Charles Atlas」というスポーツクラブ(これは曲間のCMに登場)を宣伝してます。面白いですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?