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Bob Dylan「John Wesley Harding」(1967)

ボブ・ディランも来日しますね。コロナが落ち着いたと思ったら、ビッグアーチストの来日ラッシュ。嬉しい悲鳴…。チケット代は随分高騰してますが、これも世界的に物価が高騰しているからなのでしょうか(日本はまだ物価が安い方と感じます)。

1966年、ディランはロック史上、初の2枚組アルバム「Blonde On Blonde」で、フォークとロックの融合のひとつの頂点となる作品を発表し、最初の活動のピークを迎えるのですが、1966年7月29日、オードバイ事故で重症を負い、長い休養生活を送ることになります。

翌1967年より、ディランは後のザ・バンドと共にデモテープの制作に取り掛かりますが、それら音源はすぐにリリースされることはなく、後に「The Basement Tapes」として発表されます。
この1967年というのは、音楽でいうとサイケデリックミュージックが全盛を極めておりました。そしてクリームやジミ・ヘンドリックスなど、よりハードなロックが人気を博していました。そんな中、ディランはどんな作品を発表するのか、多くのロックファンが期待していたのです。
そして発表されたのが本作「John Wesley Harding」です。

本作はカントリーのメッカ、ナッシュビルで、1967年11月6日、17日、29日のわずか3日でレコーディングされ、なんと1ヶ月も経たない12月に、リリースされました。レコーディング・メンバーはナッシュビルでの腕利きミュージシャンを起用してます。そういったデータからも連想されるように、本作は時代の流れとは逆行したような、地味なカントリーミュージックが繰り広げられてます。
オープニングの①「John Wesley Harding」…。このメロディー、私はフォーク、カントリーの定番「Cotton Fields」にそっくりと思ってしまいました。往年のディランファンからすれば、演奏はシンプル、曲はフォーク、間奏にはハーモニカといった、デビュー当時のスタイルに戻った原点回帰として捉え、狂喜乱舞したのではないでしょうか。

本作で一番有名な楽曲は④「All Along the Watchtower」でしょう。なんといってもジミ・ヘンドリックスのカバーが強烈な印象ですよね。ディランの原曲バージョンは、ジミヘンの強力なギターリフはフォークギターで奏でてます。この曲もそうなのですが、アルバム全体を通じて、サビがない印象の楽曲が多いんですよね。アップしたのはディランとブルース・スプリングスティーンの強力な共演ライブの模様。やっぱりディランも本作でのバージョンではなく、ジミヘン・エレキ・バージョンで再演してますね。この曲はやっぱりアコギでの演奏より、エレキでの演奏の方がスリリングさが際立ちます。

地味ながら本作では美しいメロディのワルツ、⑨「I Pity the Poor Immigrant」が大好きです。この曲はジョーン・バエズやジュディ・コリンズもカバーしてます。アップしたのはジュディのバージョン。ここではスチールギターが効果的に使われてます。

あとジーン・クラークも4ビートスタイルでカバーしてますね。同じ曲なのに、違う曲に聞こえてしまいます。歌詞の持つ意味合いからすると、この曲はジーンの解釈よりかは、ワルツでしっとり歌う方が美しいと思います。

本作では貴重な明るい楽曲の⑪「Down Along the Cove」は、R&B的なノリのブギー。アップしたのはサンバのリズムを強調した別バージョン。

アルバム最後の⑫「I'll Be Your Baby Tonight」は本作にしては珍しいストレートなラブソング。なんかホッとしますね。

ディランはここで原点回帰し、次作Nashville Skyline(あのディランが笑っているジャケットで有名な…)で更にカントリーアルバムを押し進めます。本作はカントリー・フォークな感じですが、この後、バーズが「ロデオの恋人」を発表し、カントリーロックというジャンルの音楽が広く認知されていくようになります。そういった意味では、やはりディランは先駆者的存在だったんですね。

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