見出し画像

Barry Manilow 「2:00 AM Paradise Café」 (1984)

皆さん、バニー・マニロウって、どういうイメージをお持ちでしょうか。
楽曲でいえば「コパカバーナ」、ジャンルでいえばMOR、一般大衆的なポップスシンガー、そんなイメージが強いのではないでしょうか。そんなバニーが、やりたい音楽をやりたいように制作したアルバムが本作。1984年発表です…。
当時バニーは、ヒット狙いの音楽を作り出すことにストレスを感じ、一旦休業。気持ちをリセットして、自分は何をやりたかったのか熟考の末に本作は制作された経緯にあります。つまり売れることを全く狙っていないアルバムなんですね。そういった点もスゴイし、本作のコンセプト、つまり午前2時のパラダイス・カフェというジャズ・バーで、淡々とジャズを歌っていくコンセプトもいいし、全曲がバニーのオリジナル作品であるっていう点も、バニーの才能を感じさせ、GOODです。バニーって、こんな才能溢れる方だったんだ…と今更ながらに…(苦笑)。

画像1

本作の国内盤には、湯川れい子さんの渾身のライナーノーツが付いてます。当時、湯川さんも大絶賛されていたんですね。
そのライナーノーツによると、バニーは本作のために2週間で11曲書きあげると、すぐに面識も無かったマンデル・ロウに連絡したそうです。マンデル・ロウは40~50年代に活躍したジャズ・ギタリスト。他にジェリー・マリガン(Sax)、シェリー・マン(Ds)、ジョージ・デュヴィヴィエ(Bs)等が参加。そしてなんとサラ・ヴォーンメル・トーメといった大御所シンガーとのデュエットも実現。なんともゴージャスなジャズ・アルバムに仕上がりました。

アルバムトップを飾るタイトルトラックの①「Paradise Café」。リリカルなピアノに導かれるように、優雅なサックス、ギター、ベースが、夜のジャズ・バーで静かに流れ始めます。バニーのヴォーカルは決して気取るようなこともなく、いつものように歌ってくれてます。とことん、ジャージーなParadise Caféからメドレーで繋がる②「Where Have You Gone?」。美しいメロディを持つバラードを、ジャズ風味に仕上げたようなナンバー。

サラ・ヴォーンとのデュエットの④「Blue」も実に美しいナンバー。
素敵なピアノのイントロから、うっとりしてしまいます。徐に歌いだすサラの力強いヴォーカル、圧巻ですね。こんな素晴らしい熱唱が2テイクでOKだったとか。バニーのちょっと甘いヴォーカルとサラのハスキーなヴォーカルは、敢えて辛口に申せば、ちょっと合ってないかなって感じ。サラの貫録勝ち…ですね(笑)。

⑤「When October Goes」の作詞はジョニー・マーサー。
ジョニーはキャピタルレコードの共同設立者でありながら、作詞家でもあり、手掛けた作詞は1500曲以上。「Moon River」や「Days of Wine and Roses」は彼の作品です。彼の死後、未亡人から出版社経由で、彼の未発表の詞がバリーに送られてきたのが1983年。本作はその中のひとつ。10月が過ぎて、11月以降到来する冬…、確かに寂しいですよね。そういった感情が、うまく反映された素敵なメロディです。

もうひとつのデュエット曲の⑧「Big City Blues」。
メル・トーメとのデュエットです。ジャージーでブルージーな楽曲で、師走の季節に聴くと、何だか心が温まってきます。メルもさすが味わい深いヴォーカルですね。

本作からの最後のチョイスは⑩「I've Never Been So Low On Love」。
リラックスしたムードで展開していく、非常にドリーミーな楽曲。パラダイス・カフェもそろそろ閉店の頃…ですね(本作ではあと1曲ありますが)。

バニー・マニロウが、こんな素敵なジャズのアルバムを残していたことを知っている人は、意外と少ないのではないでしょうか。こうしたジャージーで、心温まる音楽が染みる季節はまだ先ですが、夜に聞くにはピッタリですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?