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「国の借金」は存在しない

割引あり

日本政府と日本銀行を連結した貸借対照表(バランスシート)を作成しました。

日本の財務省は、頑なに政府と日銀を連結したバランスシートを公表しません。なぜなら、財務省が推し進める緊縮財政、プライマリーバランス黒字化目標に都合の悪い情報だからです。

以下の情報源から作成した、2023年3月31日時点での貸借対照表です。

統合政府に共通する機能「通貨発行権」

現代貨幣理論(MMT)では、中央政府と中央銀行を別々の機関としてではなく、「統合政府」として一体のものとみなします。

この概念は、両者が「通貨発行権」という共通の機能を持つことから来ています。

自国通貨を発行する権利を持つ中央政府は、理論的には無限に資金を供給することが可能です。これは、政府が自国通貨での支払い義務を果たすことができるという意味で、財政的な自立性を保証します。

日本政府と日本銀行の連結バランスシート

まず、政府のバランスシートはこれです。

負債の部にある、国債1232兆円が財務省がしきりに喧伝する「国の借金」というものです。

次に、日本銀行のバランスシートがこれです。日銀は国債を582兆円資産として保有しています。

そして、統合政府のバランスシートがこれです。

連結したバランスシートでは、借方と貸方に同じ項目がある場合、相殺処理されます。政府の持つ国債1232兆円と、日銀の国債582兆円で相殺され、貸方に650兆円残ります。

日本銀行が政府の発行する国債を購入すると、国債は日本銀行のバランスシート上で資産として計上され、事実上の政府の負債が相殺されます。

つまり、借金が減ります。これが財務省が隠したいことです。

日本銀行が当座預金と銀行券に負う債務とは?

日本銀行は、日本銀行が発行する「日銀当座預金」と「日本銀行券」の保有者が支払い手段として使えるようにする義務を負います。

日銀当座預金や日本銀行券の保有者が、それらを使って支払いを行うとき、日本銀行はその支払いを受け取る側(売り手)に対して、日銀当座預金や日本銀行券を額面通りの金額として認める義務を負います。

ただし、この「債務」とは、日本銀行が日銀当座預金や日本銀行券を発行することによって生じる、それらの金融資産を通貨として受け入れ、使用させるという責任を指します。これは、伝統的な商業銀行が預金に対して負う債務とは性質が異なります。

実は、この内容は「表券主義」が主張していることと同じです。表券主義については、以下の記事に記載しています。

表券主義を日銀当座預金や日本銀行券に関して言い換えると以下のようになります。

  1. 国家が貨幣を制定する

    1. 日本銀行は国家の代理として行動し、日銀当座預金や日本銀行券を発行する権限を持つ

    2. 日本銀行は金融システムの中心として機能し、通貨供給を管理する役割を果たす

  2. 貨幣は財・サービスの支払いのための計算単位である

    1. 日本銀行は、日銀当座預金や日本銀行券を支払い手段として使えるようにする義務を負う

  3. 国家は租税を課し、貨幣を租税の支払い手段として定める

    1. 日銀当座預金や日本銀行券は、政府が課す税金の支払い手段として機能する

    2. 日銀当座預金や日本銀行券は法定通貨であり、すべての人々がそれを受け入れる義務がある(強制通用力)

従って、日本銀行は日銀当座預金や日本銀行券が貨幣として支払手段として使えるようにしているため、その証拠として貸方に負債として計上されているということです。

政府の債務「国債」とは?

「国債」とは以下の性質を持ちます。

  1. 政府発行の自国通貨建て債券

  2. 売買可能な有価証券

  3. 元本保証

  4. 満期あり

  5. 利息支払いあり

  6. 売却・満期で得られる貨幣は自国通貨

一方で、銀行における「定期預金」は以下の性質を持ちます。

  1. 元本保証

  2. 満期あり

  3. 利息支払いあり

  4. 解約・満期で得られる貨幣は自国通貨

上記のとおり、定期預金と国債の違いは「売買可能な債券」の形態か否かだけです。

銀行の負債である預金を「借金だから今すぐ返さなければならない!」と騒ぐ人はいません。

同じように、中央銀行の負債である中央銀行預金(政府預金; 政ヨ)に対しても「借金だから今すぐ返さなければならない!」と騒ぐ人はいません。

国債と定期預金の性質は似ていることから、現代貨幣理論(MMT)の視点では、国債は「利付きの貨幣」とみなすことができます。この「利付きの国債」に対しても「借金だから今すぐ返さなければならない!」と騒ぐのはおかしいと言えます。

国債と呼ばれる政府債務があることによって、世の人々が「貨幣」を金利収入の得られる「利付きの貨幣」に交換する機会を与えているに過ぎません。

中央銀行は「貨幣を生み出す銀行」であるのに対し、政府は「利付きの貨幣を生み出す銀行」と考えることができます。

「国の借金」というミスリード

日本の財務省のような緊縮財政を推進する立場の人々にとっては、政府の借金(国債残高)を簡単に減らされたら困ります。

財政支出削減や増税などのプロパガンダを仕掛けにくくなるからです。

日銀当座預金と日本銀行券は、過去に発行した「貨幣」です。

国債は前述の通り、過去に発行した「利付きの貨幣」です。

「国の借金」とは、一体どこにあるのでしょうか?

「国の借金」と呼ばれるものは、実際には政府が市場や個人から借り入れた資金ではなく、政府が貨幣を生み出すために発行した国家債務です。国債の額だけこの世に貨幣、日本円が生まれ、流通しています。

国債を、同じく政府機関である中央銀行が売買することで、政府は実質的に自らの負債を管理し、貨幣供給量を調整しています。

財務省が「国の借金」という言葉を使って緊縮財政を推進しようとするのは、財政支出の削減や、増税を正当化するためです。

しかし、現代貨幣理論(MMT)によれば、自国通貨を発行する権限を持つ政府は、実質的に「借金」で困る状況になることはありません。なぜなら、通貨発行権を持つ統合政府(中央政府と中央銀行)は、必要に応じて新たに通貨を発行し、その債務を返済することが可能だからです。

緊縮財政の主張は、しばしば政府の支出を減らすことで財政健全化を図るというものですが、これは経済成長を著しく妨げる可能性があります。

積極財政により経済が成長すれば税収は自然と増え、財政は健全化されます。政府の役割は、必要な時には支出を増やして経済を刺激し、不必要な時には引き締めることでバランスを取ることです。

結論として、財務省が緊縮財政や「プライマリーバランス黒字化」目標を強調するのは、国民を貧困に陥れ、更に国民に必要以上の増税を強いるためのプロパガンダと言えるでしょう。

重要なのは、政府が自国通貨を発行する権限を持っていることを理解し、その権限を適切に活用して完全雇用と低インフレを維持したまま経済成長を遂げ、国民全体の福祉を高めることです。

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