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シンガポールに帰りたい #3

Sallyは、私より4つ年上のお姉さんだった。

身長が低くて、とっても細くて、顔が小さくて、屈託のない笑顔が素敵な人だった。メイクは薄くて、さっぱりとした感じ。他のシンガポール人2人は、しっかりメイクしていたからか、1番年上なのに、1番年下に見えた。性格も、さっぱりとした明るい人だった。


彼女たちは、キリスト教の宣教のために日本に来ていたから、一緒にいる時は、“God“の話をすることがあった。全部英語で書かれた聖書を私たちに見せながら、一生懸命説明してくれた。

私たちは、今までキリスト教の考えや聖書に触れてこなかったから、少し戸惑いもあった。けど、彼女たちが何を伝えようとしているか、一生懸命に聞いていた。

大学の近くに教会があって、彼女たちはそこに行っていた。外国人が多くいたこともあり、とてもオープンな雰囲気。そこで私たちは、授業の後にパーティをしたり、シンガポール料理を振る舞ってもらったり、一緒に歌ったり、とても楽しい時間を過ごした。その時に食べたチキンライスの味は今でも忘れられないし、彼女たちと過ごした時間は深く心に残っている。


私たち日本人3人、彼女たちシンガポール人3人。それぞれペアのように似たもの同士がいた。

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私は、Sallyと似ているようだった。

拙い英語しか話せない私、日本語のわからないSallyは、何故かお互い、通じ合っているように感じていた。

何がどうなのか、わからない。どうやって言葉にすればいいかわからない。だけど、今まで出会ったどんな人たちよりも、通じ合っていた。言葉の違いは、私とSallyには関係ないようだった。

Sallyと話すのが大好きだったし、一緒にいる時間が楽しくて仕方がなかった。一緒にいると、本当にあっという間に時間が過ぎていった。


けど、彼女たちがシンガポールに帰る時はやってきた。

すごくすごく、寂しかった。

「またいつか、会おうね。」

そんな約束をして、私たちは涙を流しながら、別れを告げた。


Sallyと過ごした時間は、たくさんあったように感じていたが、よく数えてみると、2週間にも満たなかった。

たった2週間。たったそれだけの時間だったけど、私の人生にはとても大切な思い出となった。



その後、私は、大学を卒業をして、就職をした。

他の人が進むように、私も同じ道を進んでいた。


忙しい日々に追われて、私は、Sallyとの「また会おうね」の約束を忘れてしまっていたのだった。


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