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時代と芸術家との向き合い方

 大学で演奏家や作曲家とお付き合いしていると、時々「この人は卒業後にどう生きていくんだろう?」という疑問が一切浮かばないくらい、将来設計をちゃんと組まれている方に出逢うことがあります。納期や時間に厳格で、仕事も普通以上のものをいつも出せて、メンタル的にも安定している。すでにプロフェッショナルといっていいほどの働きぶりで、多忙な理由がすぐにわかるような方です。

 ただ、そういったケースばかりではないのも現実。不真面目な方はしょうがないですが、真面目な方であっても上手くいくことは難しいのが音楽や美術という分野です。たとえ変化球でも、きちんと生計を立てられている周囲の芸術家がいかに凄いかを実感されている人も多いと思います。

 ルネッサンス期やそれ以降の歴史上における芸術家を見渡してみると、芸術というものは、非常に時代に左右されやすい分野といえます。人生では必要不可欠なものといえますが、ただ生活していると思い浮かばない。それどころか、行政や社会で理解が薄ければ窓際に追いやられたり、補助金が打ち切られたりします。ひどい時は、その表現が制限されることも夢物語ではありません。

 現代は特に困難な時代で、存在証明を自らの手で行わなければいけません。噂や文書ではなく感想が直接伝わる時代なので、不特定多数の人が否定するものや伝わらないものは存在しないものと同じとみなされるのです。悲しい話に思えますが、実力のずば抜けている人や魅せ方の上手い人が、バックグラウンドに影響されなくとも這い上がれる時代。誰にでもチャンスがあって、それがそこら中に転がっている時代。チャンスに対しての準備が求められています。

 私自身は芸術に携わっていますが、それでご飯を食べていません。アーティストではなく、あくまでもクリエイターです。彼らの作品を最良の形で社会にお伝えするのが仕事。もしくは、依頼にお答えするのが仕事。

 いつかはプロデュースやマネージメントも行えるようになれたらと考えていますが、そのような立場になった時、アーティストをいかに時代から守っていけるか。時代に立ち向かいつつも、しなやかに耐えられる花や大木に成長させられるか。そこが大切な役割だと考えています。

 それを叶えるためには、私自身がクリエイターであり続ける必要があると考えているので、作ることはやめませんし、同じ視点で共につくっていける存在で有り続けようと思っています。

 2023.3.12
 坂岡 優

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