「郷秀樹＝団時朗さん」がつくった新たなヒーロー像

　嬉しいことと悲しいことは、いつも同じ瞬間にやって来ると聞きます。真夏竜さんの投稿をひと目見たときは「同姓同名の別人であってくれ」と願う気持ちすらありましたが、所属事務所の投稿でこの出来事が現実であると認識しました。

　昨日、地球にやって来た四人目のウルトラマンがもっとも愛した地球人・郷秀樹を演じた団時朗さんが旅立ったという一報がありました。

　団さんは近年の特撮ヒーローファンにとっても馴染み深い存在で、ウルトラ兄弟の中で現代もとりわけ精力的に活動されている俳優のひとりでした。特にMG5のCMや郷秀樹を一目見た時のあまりの格好良さは鮮烈で、目や顔つきに圧倒されるほどの存在感がありました。近年も目の強さは変わっておらず、スクリーンや舞台のどこに居ても「あ、団さんだ！」とわかる稀有な俳優のひとりです。

　連続ドラマ『帰ってきたウルトラマン』という作品は、特撮作品にとって非常に画期的な展開が目白押しの作品でした。ウルトラマンやウルトラセブンを観てきた人にとって、主人公・郷秀樹が時に脆さを見せるところ、仲間である隊員たちとは一枚岩とは行かないところ、作品のそこかしこに散りばめられた衝撃的な展開など、第二期ウルトラシリーズと呼ばれる作品の幕開けとして現在も鮮烈な存在感を放っています。円谷一さんとすぎやまこういちさんの作詞・作曲で、団さん自身が歌った主題歌も印象的でしたね。

　同時期のヒーローでいえば、仮面ライダーが特に強力な存在に成長していきましたが、橋本洋二さんならではのドラマへの拘りは現代まで続くTBSの作風も飲み込んだ上で、子どもに限らず様々な人々へ広がっていきました。

　今も、正直にいうと、私は団さんの訃報を信じたくはありません。信じたくないし、信じられない。ただ、いつかはこのような日が来るとは分かっていたので、いざその日が来た時のあまりのショックを受け止め切れていないだけです。

　郷秀樹の後も、アンチラ星人に、村野博士に、怪人二十面相に、青井博士に、怪盗ソルトマに、霞一鬼に、赤松政秀に、舞台作品のあらゆるキャラクターたちにと大活躍でした。特に怪人二十面相に代表される神出鬼没の怪盗役は歴代の俳優の中でもトップクラスに合っていたのではないでしょうか。

　団時朗さん。本当にありがとうございました。あなたの演じたキャラクターたちはずっと輝きを放つでしょう。この先も、ウルトラの星で永遠に。今夜もM78星雲の方角を見つめながら。

　2023.3.25
　坂岡 優