小説「コーンポタージュから始まる恋」
ドロリとしたスープに、どっさりと入ったコーンとクルトン。
私はこのコーンポタージュが大好きだ。毎日作って飲んでいる。コーンのない生活なんて考えられないし、学校でコーンポタージュが給食に出る日は何杯もおかわりしてしまう。
「藍葉、まだ飲むの?」
友人はこう尋ねるが、まったく気にしない。美味しいから、最高だから。
「もう藍葉ってば、校庭行くよ!」
友人が袖を引っ張る。私は至福の時間を邪魔されたような気がして、なんだか気分が悪くなった。
「飲んだら行くから先行ってて」
私は友人たちを無理やり校庭に追い出した。……これで、安心してコーンポタージュが飲める。コーンポタージュは私の盟友で、一番の得意料理だ。
実を言うと、担任も、クラスメイトも、とっくに昼食を終えていた。しかし、私には水筒のコーンポタージュが残っていた。それを飲みたかったから、友人たちには悪いが、この昼休みは外に出たくなかった。
そんな私があなたに恋をするなんて。“運命の人”は彗星のように目の前に現れた。
「吉田さん、だよね?」
「はい、そうだけど……」
青色の瞳に、すらりとしたスポーツマンっぽい風貌。何より、アイドル顔負けのルックス。隣のクラスの佐々木くんだ。
佐々木くんは不思議な顔をして、こちらを見つめていた。ほどなくして、私が一心不乱に何かを飲み続けていることに気付き、こう尋ねてきた。
「コーンポタージュ、好きなの?」
「好きだよ」
どうして、佐々木くんは私がコーンポタージュを飲んでいることに気付いたのだろう?
兎にも角にも、聞いてみなければ!
「なんでわかった!」
私の叫びに、佐々木くんは唇を指差しながら答える。
「コーン、ついてる」
「あっ」
正直言うと、すごく恥ずかしかった。「私はそんなにコーンポタージュに夢中になっていたのか」って。でも、その後の佐々木くんの一言で、私は「この人に一生ついていこう」って決めた。
「いいよね、コーンポタージュ。なんだろう、コーンの甘みが、吉田さんのやさしい性格みたいだ」
佐々木くんの言葉は、ただの口説き文句ではなかった。側から見ると、私なんてただの“コーンポタージュオタク”だ。そんな私を、あの佐々木くんが認めてくれた。人気者の佐々木くんが!
「私のコーンポタージュ好きを見つめてくれる人がいるなんて」
この日を境に、私たちは二人で帰るようになった。人気者なのに色恋沙汰には無縁だった佐々木くんは、同じ“コーンポタージュオタク”の私とウマが合ったのだ。
そんな佐々木くんが、今日もコーンポタージュを作ってくれている。彼のコーンポタージュはどこか上品で、どこか懐かしくて、みずみずしい。数年間の交際を経て、佐々木くんは私のパートナーになった。
2020.3.10
坂岡 ユウ
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