もしも僕らがGAMEの主役で | 2000年生まれのポピュラー文化探訪 #76
なぜか観には行かなかったけれども、記憶に残っている映画はわりとあったりします。2017年8月に公開された映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』はまさにその中にある作品で、かなり話題になっていたものの、結局映画館へ足へ運ぶことなく、数年後にサブスクで初めて視聴しました。
ただ、主題歌は好きでした。米津玄師さんが作詞・作曲を担当した「打上花火」は恐ろしいくらいの勢いで皆が歌っていましたし、今でもカラオケへ行くと仲間の誰かが入れることがあります。わたしは原曲だとキーが出ないので、米津さんのヴァージョンで歌うことが多いのですが、たまにセットすることがあります。
この主題歌は米津さんとともに、ラップシンガーのDAOKOさんがヴォーカルを担当しています。何を隠そう、わたしはどちらかといえば、「打上花火」よりも他の作品にハマってしまったのです。2017年末に発表されたアルバム『THANK YOU BLUE』は当初「打上花火」を目当てに購入しましたが、結局は他の楽曲にハマりました。今も昔も、ラップやヒップホップをあまり聴きませんが、なぜかDAOKOさんのパフォーマンスには惹きつけられてしまったというのが不思議なところです。
彼女のヴォーカル、誰がどう聴いても、とてもスウィートですよね。かわいいに満ち溢れている。ただ、力強く歌い上げるパートも格好良くて、あらゆる顔を見せられる度にドキッとしてしまう。人の歌声を言葉で説明するのはいつの時代も難しいのだけども、この方の場合はとにかくスウィートなヴォーカルがたまらないんだ。
ムーンライダーズの「再開発がやってくる、いやいや」にゲスト参加した時も、いきなりDAOKOさんらしきヴォーカルがサビで割り込んできたのでびっくりしました。この楽曲はアルバム紹介の時に語り尽くしましたが、やっぱり突然のDAOKOさんはズルい。鈴木慶一さん、白井良明さんという還暦を越えた男性のヴォーカルが続いていく中で、まるで最初からいたように入ってくるのですから。
そんな彼女の楽曲の中でもっとも好きなのが「もしも僕らがGAMEの主役で」という楽曲。
往年のRPGゲームを思わせる歌詞に、彼女のヴォーカルが乗っていく。特に好きなのがラップパートで、ここはぜひ一度全体を聴いてみていただけると良さがわかると思います。
音楽を聴くとありとあらゆる感情が遡ってきます。DAOKOさんの楽曲を聴いていると高校時代を思い出すのですが、あの頃は特に、周りの顔色を見てばかりでした。なんとなく生きて、とりあえず夢を見て、それとなく走り続けていた。家に帰ったら、創作活動でそういったエネルギーを発散して。ゲームのように、全部を決めてくれる存在がいたらきっと楽なんだろうなあ……と今でも考えることがあります。
でも、きっと、それはそれでつまらない。初号機のように暴走してしまうかもしれない。
人間って、もやもやしながら走り続ける生き物だからこそ、おもしろいんだろうな。たとえ、ゲームの中であったとしても。2017年頃のDAOKOさんの話が中心になりましたが、今彼女がメインヴォーカルを務めるQUBITも大好きなので、またいつか紹介します。
2024.2.12
坂岡 優