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もぬけの殻でもいいじゃない

 ついにこの日が来ました。来てほしくないという気持ちもありつつも、ここが来ないと前には踏み出せない。だからこそ、しっかりと乗り越えなくちゃいけない。そういった心境です。

 改めてになりますが、退職の日に、今回の決断に至った経緯を綴らせてください。

 小さな舟に揺られるような人生を過ごしてきた私にとって、今回の決断はとても大きなものでした。未経験のストレスが原因による体調不良から、今の仕事が続けられないという事実は重すぎるほど痛切なものです。もちろん復帰する選択肢もありましたし、ギリギリまで熟考しましたが、地元に拠点を戻して治療を続けながら通勤することは現実的に不可能で、それならば「一度リセットした方が良いのではないか」という決断に至りました。

 そして、何よりも「創ること」や「創っている人を支えること」が好きな私、音楽やものづくりを愛する私に対して、何も挑戦せずに終わってしまっていいのかという疑念が消えず、現在の業界に対して、区切りをつけることにしました。復帰後の私を想像した時に、元の姿は浮かばなかったのです。

 現在の業界に入る時、とてつもなく大きな挑戦だと考えていました。これまでにほとんど仕事としての縁がなく、まっさらな状態から歩んでいくのですから、何があっても不思議ではないと考えていました。実際に、初めて経験することの数々に、とても大きな衝撃を受けました。ここまでやるからこそトップに立てるんだという納得と、新卒の私には受け止めきれないほどの規模感は、新たな価値観を芽生えさせるには十分すぎるほど。そして、いつの間にか身体が思うように動かなくなっていました。

 もともと、一度きりの挑戦と決めて飛び込みましたので、未練や後悔を抱えつつも、この夢はここで終わりです。ただ、最初は違和感を抱いたことも、最後の方になると自分なりに咀嚼して、きちんと仕事に打ち込めるようになったのも事実なので、そこは忘れずに記載しておきたいと思います。

 最後の日は雨が降っていて、できれば晴れてほしかったなと。帰り道くらいは、せめて曇り空にはなってほしかったなと。昨日までは晴れていたのに、降るなら昨日にしておくれよと恨み節を言いたくもなります。でも、やけに晴れていると、それはそれで感傷的にもなるので、この天気でよかったのかな。

 今回のタイトルは吉田拓郎さんのアルバム『吉田町の唄』に収録されている「そうしなさい」という楽曲からの引用なのですが、私自身が抱いていた夢に対して、これまで真摯に取り組めていたのかな……と考えることが最近増えています。就職活動の時も、周りの人やエージェントの方の流れに乗ろうとしていただけで、自分自身や適性ときちんと向き合えていなかったのかもしれない。本当にやりたかったことに挑まないまま、もしくは理由をつけて離れたまま、ここまで来てしまったのかもしれない。

 それでも、もぬけの殻でもいいので、今はとりあえず休んで、新しいことを始めようじゃないか。

 そういった決意はいつまでも忘れずに、胸の中でたしかに燃やしておきたいと思います。

 2023.5.19
 坂岡 優

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 いただいたサポートは取材や創作活動に役立てていきますので、よろしくお願いいたします……!!