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学部文化のない自由と不自由

 平成以降、大阪音楽大学は少しずつポピュラー系の専攻に力を入れ始め、2016年には100周年記念事業の一環として「ミュージッククリエーション専攻」と「ミュージックコミュニケーション専攻」が創設されました。

 映画音楽や歌ものの作・編曲を学ぶ専攻、地域や社会における文化創成を学ぶ専攻と、まったく位置付けの異なる両専攻ですが、授業内でのちょっとしたコラボレートによって学生間の繋がりはあり、少なくとも私は現在も良好な関係を続けています。

 私の所属しているミュージックコミュニケーション専攻は四学年が揃ったばかりの段階でしたが、高校や中学までと異なり、上下関係やしがらみのない雰囲気で、自由に立ち位置を選択できる環境でした。

 新専攻、新学部はひと回りかふた回りするまでは雰囲気が出来ていないので、変えるも伸ばすも自分たち次第という部分があります。結構、そういう土壌づくりが楽しい人はいいのですが(私も楽しい)、進学実績や確実性を求める人には難しいかもしれませんね。

 それと、そこはかとない異物感というか、場に馴染めていない雰囲気を醸し出してしまうのは難しいところ。音楽学のような音楽そのものを専門としない専攻はこれまであったのですが、ミュージックコミュニケーション専攻はそれとも性質が異なるものなので、譜面をほとんど読めない人もいます。私は「読めるが追えないタイプ」だったので苦労は少ない方でしたが、合唱や音楽理論の授業はなんとか上手くやり過ごそうと苦慮する学生もいました。

 ミュージックビジネス専攻が創設されてから、そういった部分へのフォローを行うようになりましたが、特に企画や外部プロジェクトは個人同士の関係性になることも多く、ちゃんと話ができる人がいないと成り立ちません。大学には各専攻ごとに慣習もあるので、何か企画ものをやりたい人は同じ専攻以外の人とどう関係を築けるかが大切なんじゃないかなあ……と考えています。

 ロールプレイのみだと実際に使えるかどうかわからない知識ばかりになってしまいますから、私はさまざまな現場でとにかく汗を流すことが良き経験となりました。学内の諸々をわりと活用していた気がします。

 ただ、外でバリバリ活躍している人もいますし、休学して国内外を飛び回っている人もいます。私自身も、学内のことに携わりながら、リモートならではのコライトやプロジェクト・ワークに携わってきました。「音楽大学としては」という注意書きは必要ですが、オープンワールド的な側面の強いミュージックコミュニケーション専攻はさまざまな生き方があります。

 ミュージッククリエーション専攻もそういった側面が強く、どの業界や作品にも活かせる音楽への関わり方を学び、実際に最前線で活躍する即戦力の作り手を育成している印象です。

 伝統のない不自由さも噛み締めながら、今しかできない経験を自由とともに謳歌した。私の大学生活を表面的に振り返れば、このような所感になるかと思います。

 2023.3.20
 坂岡 優

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