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受付嬢京子の日常

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「受付嬢 京子の日常」 1日に通る利用客は3万人。とある駅ビルに勤める原田京子は、この仕事について2年目の受付嬢。色の白さと大きな目が他の受付嬢と並んでいても目立つ、自分の売り…
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#駅ビル

受付嬢京子の日常⑱〜ワインの澱

受付嬢京子の日常⑱〜ワインの澱

「シフト代わってもらって、助かりましたぁ」

「いいよいいよ。ほんと大丈夫だった?」

沢木佳奈が両手を合わせる。眉をハの字にしても可愛いなぁと原田京子は思う。2日前、佳奈の代わりに京子が出勤した。京子たちが働くのは、駅の直結施設のインフォメーションだ。佳奈の実家で飼っている猫の様子がおかしく、病院に連れて行きたい、と連絡があった。佳奈も1日違いで休みだったので、シフトを交換したのだ。

「はい。

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受付嬢京子の日常⑰〜冷える指先

受付嬢京子の日常⑰〜冷える指先

「お気をつけて」

道案内をして送り出す原田京子の笑顔に、目の前にいた男は反応することなく無表情で去っていく。3月5日。まだ朝だと言うのに、人が多い。

人が多くなれば、道案内も多くなる。京子は、ふうっと息を吐いた。顔を上げると、同じく早番で出勤している片岡聖奈がにっこりと微笑んで道案内していた。

入ってきてから、お客様に笑顔で接さない。髪色が明るすぎる。足を引きずって歩いていて、いかにもやる気

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