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手間や体験を楽しむために書店へ足を運ぶ

自ら目的地へ行かなくても、大抵のものは手に入るようになった。携帯1つで商品検索・注文・支払いと、すべてが完結してしまう。日時の指定だって問題ない。私たちは、ただ注文した商品が届くのを待てばいい。本当に、便利な世の中だと思う。

頻繁ではないけれど、私もお世話になる時がある。とくに本は仕事の納期が重なり、動けない時に限って「これは読みたい!」や「あの時買っておけばよかった!」と、見つけたり思い出したりするので(あの現象は何なんだろう)、注文し自宅に届けてもらえるのは本当にありがたい。

けれど、できれば書店へ足を運び、直接選びたいのが本音だ。ずらりと並ぶ本の中から、気になるタイトルを見つけ、手にとり帯に書いてあるキャッチコピーや推薦文をじっくりと読む。(本に帯を付けるのは日本特有の文化らしい。帯について調べている時に知った) その後、パラパラと軽く中身を読み、買うか買わないかを決める。

何の変哲もない、いたって普通の選び方だけど、この過程が結構大切だと思っている。 どんな文章に出合えるのか。自分は、この本のどこに惹かれて、どのページで手を止め、購入しようと思うのか。そして、しっかりと本の質感や重さを確かめながらページをめくり、新書特有の匂いを感じながら読み進めていく。

ただ読むだけではなく、こういうことをひっくるめて、紙の本を買う楽しさだと思う。だから画面越しではできない、紙の本でしか味わえない楽しみを体験するために、書店へ足を運ぶ。

「効率性」や「時短」が好まれる世の中では、足を運んでまで、手間をかけてまで何かをする、ということが少なくなっている。それによって、「楽しさ」や「特別な体験をする機会」が減っているのかもしれない。便利になること自体は悪いことではないが、せめて、自分の好きなものを手に入れる過程で起こる、手間や体験はなくさないでおこう。小説を買うために入った書店で、ふと、そんなことを思った。





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