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旅先で食べる朝ごはんが好きだ。


旅先で食べる朝ごはんが好きだ。

その日最初の食事が"いつもより特別"だと、それだけで良い一日になりそうな気がする。

普段は目玉焼きトーストとか、ご飯にお味噌汁とか、ごくごく普通の朝ごはんで済ませているから尚更特別に感じるのかもしれない。(もちろん普段の朝ごはんも美味しいし好きだけど)

人によっては「朝ごはん一つで大袈裟だな」と思うかもしれない。でも、それくらい私にとって、旅先で食べる朝ごはんは特別なものになっている。

そして今回泊まった旅館の朝ごはんは、良い一日が一週間続きそうな朝ごはんだった。

小鉢に少しずつ入れられたおかずに、温泉たまご。焼き鮭と手作りのおぼろ豆腐もついていて言うことなしなのに、さらに鶏肉と那須を2種類の出汁で炊いたものまでついている。

仲居さんがよそってくれた釜だきの白ご飯も、一粒ひとつぶがつやつやと輝いていた。

もちろんお箸は止まることなく、おかずと白ご飯を往復する。やっぱり炊飯器で炊くのとは違う。米粒がみずみずしく、ほんのり甘い。

写真を撮り忘れたけれど、白ご飯に削りたての鰹節と生わさびを乗せ、お醤油を少し垂らす食べ方も試した。うっかりわさびを入れすぎて鼻の奥がツンとなったけれど、口に広がる爽やかさと鰹節の風味に、また箸が進む。


ひとしきりご飯とおかずを楽しんだところで、黒いお椀の存在を忘れていたことに気づく。

お椀の蓋を開けた瞬間ふわっと出汁が香る貝汁は、口に含むと頬が自然とゆるんだ。丁寧にとられた出汁は味噌と合わさり、まるくて優しい味がする。思わず溜め息をつきたくなるような、じんわりと体に染み込んでいく感覚。

これは良い一日にならないはずがない。

そんなことを考えながら、ゆっくりと味わっていく。時間を気にせず、ゆっくりと。時折外の景色を眺めながら。


最後のデザートまでしっかりと楽しんだ。


いつもと違う場所で、いつもと違う朝ごはんを食べる。この"特別"を味わえる時間が、私はたまらなく好きだ。

旅の楽しみ方は人それぞれだけど、ちょっと朝ごはんに注目してほしい。

非日常の中で、時間を気にせず「美味しい」に集中できるって本当に贅沢なことだと思うから。

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