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たべたび。05:只見線にて出会う、へそありカボチャの『奥会津金山赤かぼちゃ』

只見線、11年ぶりの全線開通おめでとうございます。

私は鉄道に詳しいわけではないけれど、只見線がずいぶん前に災害で
電車が普通になっていることは知っていた。そして通らない鉄道の代わりに、バスにて代行輸送を行っていることも。

それが2022年の秋、ついに被災していた箇所の修復が終わり、全線が開通したのである。ニュースでも取り上げられていたし、鉄道ファンにとっても、そして沿線住民にとっても喜ばしいことに違いない。

只見線は全国でも有数のローカル線であり、またその車窓からの眺めの良さがとても有名だ。私もいずれは乗ってみたいとは思っていたが、
そのアクセスの悪さと一日の本数の少なさになかなか重い腰を上げられなかった。

だが只見線が秋に全線開通するということを聞き、私は一念発起した。

「そうか、なら11年間走り続けてくれた代行バスに感謝の乗車をしに行こうじゃないか」

私はひねくれものだ。ストレートなものよりも、少々曲がっているくらいが好みである。

感謝とは言ったが、本音は少し違う。

この機を逃したら、再び被災した区間と同じ場所が代行輸送になることはないかもしれない。バスからその区間を眺めることはないかもしれない。謎のもったいない精神で、初の只見線に乗車してきたのである。

そして私は、そのカボチャに出会った。


出会ったのは晩夏の暑い日だった


代行バスに乗り、会津大塩にて下車する。

私はそこにあるという世にも珍しい天然の炭酸水が湧き出る湧き水と、そこの温泉を目的にこの地にやってきた。

その途中で、地域のおばさま方が営んでいた野菜の直売所を見かけた。
気になったので、ふらりと立ち寄ってみる。

売られている野菜はどれもみずみずしい。と、その中の一番目立つ場所に。

「なんだこのカボチャは?」

それはあったのだ。



奥会津金山赤カボチャ


奥会津金山赤カボチャ

重かった、とても重かった……。

重さ2キロ越えの塊を袋に入れて持ってくるのは結構しんどかった。
しかもこれだけでなく他にも重いもの(酒とか)も持っていたから、
いやはや疲れた。

旅先で後先考えず物を手に入れてしまうのは悪い癖だが、
どうにも旅先での一期一会の魅惑に逆らえない。

「今手に取らなかったら、もう会えないかもしれないぞ?」

毎度のごとく物欲と所有欲の悪魔が、私をなまめかしく誘ってくる。その誘いへ見事に乗ってしまうのだから、なんとも意志の弱いというか、なんというか。

しかし結局後悔をあまりしないのだから、この悪癖はきっと治りそうもない。

ともかく苦労して持ち帰ってきたこのカボチャだが、名前を『奥会津金山赤カボチャ』といい、会津地域の中でも金山町でブランドにしている特産のカボチャだ。


鮮やかなオレンジ色と特徴的な『へそ』

特徴は皮の鮮やかなオレンジ色と、裏側にある『へそ』だ。

通常のカボチャは緑色のものが一般的だが、このカボチャは全体がオレンジ色である。
そして一番特徴的な裏側のへそ。オレンジ色の真ん中でドカンと主張してくるので、最初見た時はちょっと驚いてしまった。

このカボチャはその栽培方法が独特で、通常カボチャは株を地面を這わせて栽培するので、実も地面に転がるように付く。

しかしこのカボチャは蔓をパイプとネットで作ったトンネルに絡ませることにより空中で栽培し、実もまるでトマトのように宙に浮かんだ状態で育てるのだ。

これにより実の形や色がきれいに育ち、また実の全体に太陽が当たることでカロテンの含有量が増え、より甘くなるのだという。


厳しい基準を乗り越えた証

そして表面に貼られているこのシールこそ、このカボチャが『奥会津金山赤カボチャ』と認められた証だ。

よくあることだが、ブランド品として認められるには、決められた基準をクリアする必要がある。同じモノであっても、どれだけよくできていようとも基準に満たなければ名乗ることは許されないのだ。

厳しいようだが、これも地域を盛り上げるための大切なことである。
(基準に満たなかったものが安く売られていたら、間違いなくそれを手に取ってしまうだろうことは内緒)

乗り越えたものだけが名乗れる名とその証のシールを、カボチャは誇らしげに掲げているように見えた。


意外に柔らかく、そしてとても甘い


中まで綺麗なカボチャ色

包丁を入れ、一気に真っ二つ。

意外と皮は薄く、刃は入りやすかった。

へそのところはもしかしたら硬いかも、と身構えていただけに意外である。

実はみっちりと詰まっていてキメも細かく、水分もたっぷりだ。

実はこのカボチャは甘味が豊富であるがゆえに保存がききにくい。買ってきてから少し経っていたので状態が悪くなっていないか心配だったのだが、どうやら大丈夫なようである。

どうやって食べるか迷ったが、やはりここは定番のカボチャの煮物で行こう。カボチャを程よい大きさに切り分ける。

と、春に採ったタケノコが瓶詰で余っていたのでそれもついでに追加。
これも程よい大きさに切り分ける。

それらを鍋に入れ、醤油と酒、みりんで味付け。味が染みるまで煮込んでいく。


奥会津金山赤カボチャとタケノコの煮物

しばらくしたら完成!

彩り的にも、タケノコを入れてちょうどよくなった気がする。

では、初の奥会津金山赤カボチャ、じざ実食!

口に入れてかみしめる。

皮は意外と柔らかく、食べていてもあまり気にならない。
と、聞いた通り豊かな甘さが口に広がる。
普通のカボチャよりも密な肉質なようで、ホクホクとした食感はとても食べ応えがある。

確かにこれは、普通のカボチャとは格別の味わいだ。

ブランドとして売り出すだけあり、とても上質なカボチャだ。
これを自分の家でも育てられたら、どんなに良いだろう。


保存もきかず、生産数も少ない奥会津金山赤かぼちゃは8月中旬から9月下旬の1か月ほどで生産が終了してしまう希少品だ。

中々出会うことは難しいかもしれないが、しかし出会ったならすぐに手に取ってもよいだろう。

きっとその味に後悔はしないはずである。

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