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「霜月祭り」復興プロジェクト

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『霜月祭り』復興プロジェクト 霜月祭り編

霜月祭りは、毎年12月、長野県の遠山郷の神社で行われる祭りである。この祭りの主な目的は日本中の神々をお湯に招き、一陽来復を願うこと。祭りでは、神々の名前を呼びながら、舞を奉納する。この湯立て神楽の世界観は映画千と千尋の神隠しのモデルになった。
この『霜月祭り』復興プロジェクトは、私達、郁文館グローバル高校の生徒が、人口減少に悩み10年前から中断されてる遠山天満宮の霜月祭りを、再興するプロジェクトである。

朝からの準備が終わった。薪を火に焼べ、湯釜に水を注ぐ。霜月祭りの開始だ。

急いで法被に着替え、スタンバイする。とても寒い。
霜月は旧暦の11月、そして冬至の時期である。
本来は夜通し行われる祭りであるから、とてもタフな祭りだ。

太鼓のある楽堂の前に集まる。
神々を招く宣命をして、神楽歌を歌う。面の数だけで約40枚ある。日本各地から神様が集結する。本来は一時間程かかる行程だが、今回は多くを省略した。

いよいよ舞を奉納する時間だ。

遠山の小学生の踏み鳴らしの舞から始まる。学校で霜月祭りのクラブがあるらしく、村民の方々は幼い頃から祭りと関わっていく。
五方を踏み固め、床が落ちないことを神様に示す。

そして遂に私達の番だ。
名前が呼ばれ、太鼓が始まる。

湯釜の前はとても暑い。焚き火から火の粉や灰が舞い上がる。

舞っている最中は、扇や剣の向きに気をつけ、大きく舞うことを意識しながら、
四角を一周する。一つ一つの動きにしっかり意味がある。それを体現しようと試みた。

多くの人がカメラを向けながら見守ってくれていた。

舞を奉納すると、鎮めの湯、やおとめ、面おろしをして、面の登場である。
ちなみに遠山では面をオモテと呼ぶ。一つ一つの面が神様を表している。

面おろしで面が現れる。水の王を先頭に神々が湯を楽しむシーンだ。

水の王が現れると社内に緊張が走る。湯切りが始まるからだ。
水の王が角に立ち、熱湯を手で切る。
参詣者にもお湯がかかる。社内が熱気に包まれ、お祭り騒ぎ。
霜月祭りで一番盛り上がる箇所だ。

水の王になった保存会の方の手には水ぶくれができていた。

後を追うように、他の神々が出てくる。私達も面をつけて後に続く。

神になりきり、堂々と湯の周りを歩く。

神様が湯を楽しんだ後はかす舞。
神様にかすしか残ってないことを示し、帰ってもらう。

そして最後は金劔の舞だ。湯の上飾りに残っている悪魔を追い払う。
飾りを全て切り払うと祭りは終了。

10年ぶりの霜月祭りは、多くの方の協力を得ながら無事に行われ、
賑やかに終えることができた。
本来の祭りとは違い、昼のうちに全てを終える簡略バージョンだったが、
村中から多くの方に見に来て頂いた。ローカルの新聞記者やテレビも訪れ、インタビューして頂いた。後日新聞を見ると、私達が一面に記載されていた。嬉しかった。
遠山の方々の祭りに対する熱意を感じることができた2日間であった。

長い歴史を通じて伝え継がれてきた風習を体験するのは今回が初めてだ。
遠山の人々の感じる神様との繋がり、祭りが生活の中にある感覚は、
私達にはとても新鮮だった。

大切に受け継がれてきた年月の重みを受け止めながら、
後世に伝統を受け継ぐ意識で祭りに参加した。

この祭りを後輩へと受け継いでいき、祭りのさらなる再興を目指す。
 

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