テッド・チャン『息吹』
SFには映像のほうが向いているか文章のほうが向いているか、という論争に参戦するつもりはないけど、表題作「息吹」は間違いなく文章のほうがいい。人間ではない何者かの主人公は、とある疑問から自らを生きながらに解剖し、脳の中を覗こうとする。その針の穴ほどの視界に見えるものから、世界の真実を手繰り寄せていく、というスリル感は文章ならではの体験だ。
主人公は、解剖を進めながらこうつぶやく。
この景色についてじっくりと考えながら、わたしの体はどこにあるのだろうと思った。(中略)本質的に