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松山優太
2022年7月27日 17:54
深夜、有都は自室のコンピューターに険しい顔で向かい合っていた。普通の日本人にとっては明らかにオーバースペックなコンピューターは、複数のモニターに次々とデータを出力していく。数ヵ国語で書かれた世界各国の未解決事件の、警察すら知らない情報と、きらびやかな宝石や王家の宝飾品の写真に有都は次々と目を通す。 目を通し終わった頃、一般には流通していない通信ソフトを介して、“Boss”と言う人物から有都に英
2022年7月17日 11:54
作:天野つばめ 監修:松山優太 しばしの沈黙の後、美織は先日の会議の際には言わなかった自身の推理を有都に告げた。「諏訪君は、有都が竪琴を盗みに来るのは笹流しがあの川で行われる日だって言ってたけど、もしそうなら『織姫が川に願いを流した日』じゃなくて『願いを流す日』になるはずでしょう?」「その通りだよ。諏訪君には、言わなかったんだね」「言わないよ。だって、私にだけ分かるように、予告状
2022年7月7日 10:47
金曜日の夜の喧噪も普段ならばすっかり静まり返っているはずの午前二時。平和な夜を壊すように何台ものパトカーのサイレンが輪唱する。 「いたぞ、あそこだ!」 一人の長身の刑事が十三階建てのビルの屋上を指差した。屋上には一人の男が佇む影。指示を聞いた刑事たちは次々にビルの非常階段を駆け上がる。 刑事たちが数分かけて階段を昇っている間、怪盗は大胆にも逃げずに屋上に留まり続けた。屋上のドアを開ける