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星が降る街

 今日は10年以上前の思い出話を少しだけ。

 高校生のころ、僕は近くのスーパーで品出しのアルバイトをしていた。当時付き合っていた彼女は、同じスーパーでレジのアルバイトをしていた一つ年下の別の学校に通う女の子。

 ちょうど今頃の季節、その日は僕も彼女もアルバイトは休み。僕の親友がアルバイトをしていた中華料理屋へ晩御飯を食べに行く。僕達は以前にもその店に行ったことがあり、お店の人も僕達の事を覚えてくれていた。
 10時になる少し前に店に着き、友人のアルバイトが終わるの待ちながら先に注文を済ませた。

 アルバイトが終わった友人は、僕達が注文した料理と自分のまかない料理を運び、いつもの席でいつもと同じように、たわいの無い話で盛り上がっていた。

 閉店時間になり、三人でお店を出る。いつもなら、そのままカラオケに行っていたが、僕達はその日は何故かそのまま帰ることにした。理由は覚えていない。


 家が一番近かった友人の家へ向かう途中で缶コーヒーを買い、公園で少しだけ話をすることにした。別に大した話はしていない。僕達はまだ、話し足りなかったんだ。
 くだらない話で笑いながら、残っていたコーヒーの最後の一口を飲み干そうとした瞬間、空に一筋の光が見えた。僕は驚いて二人に尋ねる。
 「今の見た!?」と。少し驚いた表情の友人が答える。「見た、流れ星!!」
 彼女は見ていなかったらしく「えぇ、見たかった。」と空を見上げ、僕達二人も空を見上げた。するとまた一筋の流れ星。

 「あっ!」と声をあげる。そうだ、昨日のニュースでやっていた。その日は、しし座流星群のピークの日だ。そのことを二人に伝える。「もっと見やすいところに行こう。近くにグラウンドがある。」


 僕達は深夜のグラウンドの真ん中に並んで寝転び、空を見上げる。普段あまり星が見えない大阪の夜空に、絶え間なく現れては消えて行く流れ星。
 「一気に二つ流れた!」「今の流れ星、他のよりも長かった!」それまで見たことも無い光景に、興奮と感動それから寒さで体が震える。「速すぎて願い事が間に合わない」と笑いながらも、このとき僕は一生分の流れ星を今この瞬間に見ているかもしれないなと思った。
 美しく壮大な天体ショーは僕達の心を魅了し奪っていった。

 どれくらい経っただろうか。夜はまだまだ明けそうもなかったが、流れ星の数はしだいに少なくなり、やがて流れなくなる。缶コーヒーで体を温めてから、僕達三人は興奮が醒めないまま帰宅した。


 あの日三人で見上げた夜空は、僕にとって生涯忘れることのできない思い出として、今も心の中に大切にしまってある。

 友人とは今でもずっと親友だ。彼女は僕が高校を卒業して一年ほどしてから別れる事になった。僕の知らない誰かと結婚し男の子を一人出産した後に離婚した。別の友人がそう教えてくれた。


 来週の日曜日は、今年のしし座流星群のピークの日だ。毎年この時期になると、あの日の夜空を思い出す。

 僕は今年も流れ星を見れるだろうか。


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