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いろはな防災 ~イニシエ少女の災活~ シーズン2 第02話

第02話 低気圧と台風のイロハ 気圧その2

※文中のhPaはヘクトパスカル(大気の圧力を表す単位)

花ちゃんの説明に仁淀川も興味しんしん。
雨はまだまだ降り続き、川のお水も増えました。

「高気圧の説明分かった?」
花ちゃん、優しく問いかけます。

「うん、なんとなくだけど解り申した。
今はあやふやだけど、これから自分で調べたり、ニュースとかで接していくうちに理解が深まっていくと思う。
アタシはいつもそうだから」

桜の答えに満足します。

01【低気圧のいろは】

「じゃあ、次は《低気圧》だね。
低気圧って聞いたことあるよね?」

「知ってる!台風は低気圧だよね」

「台風は熱帯性低気圧と言って、南シナ海とかで発生するんだ。
地図でいうと日本より少し下のほうだよ」

「台風ってなんで起きるの?」

「それはまた後で、先に低気圧の説明からだよ〜」

「分かりました、先生!ドーンと授業お願いしやす」
敬礼《桜》の表情見て、花ちゃんは可笑しくてたまりません。

「低気圧は気圧が《疎》つまり低くなってるってさっき言ったよね。

1気圧(1013hPa)より低いのが低気圧なんだ。


低気圧の特徴は
1.周囲の空気が中心に向かって流れ込み《上昇気流》が発生する。

2.これによって雲ができやすくなり、雨や雪が発生しやすくなる。

3.特に強い低気圧は暴風雨や大雪をもたらす場合がある。

4.雨を降らせる低気圧は天気予報の重要な要素。

かな、《高気圧》の逆って覚えてくれたらイイよ」

「花ちゃん、《高気圧》は上空の冷たい空気が下降気流で圧縮されて重くなって、温度が上がって《飽和水蒸気量》が増えたので、雨を含める量が増えたからお天気になりやすいって言ったよね」

「えらい!えらい!よく覚えてました。ワシャワシャ」
わんわん桜を揉みしだく。

ベロをだし、チンチンポーズで喜んでいる。

理解早いなー

「《低気圧》が発生するメカニズムは
1.暖かい空気と冷たい空気の塊が発生する所で発生しやすい。

2.暖かい空気は軽く、冷たい空気の上に持ち上げられて冷却される。

3.暖かい空気が上昇すると、そこの気圧が下がり上昇気流が生まれる。

4.暖かい空気が上空で冷却されると、飽和水蒸気量が減り、凝結した水分が雲になる。

5.その水分が一定以上の大きさになると雨となって地表に降ってくる。
だね。

上昇気流が生まれると、さらに地表から空気を吸って上空に暖かい空気を運び、《冷却ー気圧の減少ー雲の形成》が進んで雨や雪の作成を促進するの。

高気圧の時の桜の答え風に言うと、
「《低気圧》は
1.地表のの暖かい空気は冷たい空気より軽い。
2.それが上昇気流で重い冷たい空気の上に行く。
3.冷却されて飽和水蒸気量が減る。
4.余分な水分が凝結して雲になる。
5.その水分がくっついて、一定以上の大きさになると《雨》となって地表に降ってくる。
だね」

「ふーん、でも《高気圧》もそうだけど、何で発生するの?」

「それはね、地球の気象条件、つまり、
(温度差、上昇気流、ジェット気流、地形、湿度差、コリオリの力)の組み合わせで低気圧の卵が出来て、その時の環境が低気圧の発生に適していると大きく育つんだよ。

その過程はさっき説明したとおり。

今ではスパコンが発達しているから膨大な計算で予報を出してくれているんだよ。頭が下がるよ」

「うん、うちのお母さんも、最近は天気予報よく当たるっていってる。
昔は全然当たらなかったのにって」

「昭和はスパコン無かったからね」
花ちゃん、遠い目をして昔を懐かしみます、平成生まれなのに……

02【気圧勾配のいろは】

「あと、高気圧の時は風が緩やかって言ったよね。えーと、気圧??」

「《気圧勾配》だね」

「そうそう、それそれ!
何で《高気圧》は穏やかなのに、低気圧の親玉である台風は風が強いの?
夏の晴天時はあんまり風が強い印象ないよねー」

「それはね、高気圧より低気圧のほうが強力になりやすいからなんだ」

「1気圧(1013hPa)を基準にして、高気圧なら数値が高いと強力、低気圧は数値が低いと強力、これを念頭において考えると、

1.日本で一番強い低気圧は1959年の宮古島で908hPa、1気圧との差は《-105》。

2.日本で一番強い高気圧は1994年の三陸沖移動性高気圧で1038hPa、1気圧との差は《+25》。

この数値で見ると、高気圧の方が強力になりにくい。
つまり、《気圧勾配》が大きくなりにくい結果になる」

「つまり、高気圧の方が風の滑り台の傾斜が大きくならないでイイの?」

「そうだよ、でも、高気圧の横に強力な低気圧ができた場合は吸い込む力が強くなっていて、吹き出す風の量も増えるから注意は必要だね」

「こんなの見たことあるでしょ?
《高》が高気圧、《低》が低気圧、その周りの線が気圧が等しい所をつないだ線で4hPaごとに引かれてる。

これを見ると《低気圧》の方が間隔が狭いよね。

つまり、4hPaごとの変化の間隔が短い、つまり勾配がキツイってコト。
おわかり、桜ちゃん?」

「おー、今謎が解けました!そんな意味があったんだ。
気圧勾配の説明を聞いた後だとしっくり来ますな。
ひょっとして、《気象》って面白い?」

「分かってくると面白いね♡難しいけどね」

03【台風発生のいろは】

「じゃあ、桜、お待ちかねの《台風》の説明するよ♪」

「やったー、チョット待ってて!コロッケ買ってくる!!」

「いいよ、時間もったいないし、近くにコンビニ、ナイでしょ」
桜はちょっとシュンとして、ほっぺを膨らまして、お怒りです。

「台風は《熱帯性低気圧》といって、暖かい海域で発生するの。

発生する条件は、
1.熱帯地域の温かい海域で発生。
 海面温度が約26.5°C以上になると、蒸発する水分が増えて、大気中に
 大量の水蒸気が供給される。
 これが上昇し、冷たい上空で凝結して雲が形成され台風の発達を助ける。

2.上昇気流が発生しやすい大気の不安定な状態。
 温かい海面から上昇する湿った空気が冷やされて、上空で凝結する際に
 熱が放出されて、さらに上昇気流を発生させる。

3.地球の自転による影響で生じるコリオリの力が、
 上昇する空気を回転させ低気圧を形成する。
 これは台風の回転運動を生み出す重要な要素。

 ただし、コリオリの力が十分に強くなるのは赤道から離れた地域であり、
 そのため台風は赤道付近では発生しません。

4.今ある低気圧や熱帯波など、大気の擾乱が台風の核を提供する。
 熱帯波は東に向かうする気圧の低いもので、台風の発生の卵になることが
 ある。

「この1〜4が揃うと、台風が発生、発達する可能性が高い。
 台風が発生しやすい季節は、海水温が最も高い夏から 秋にかけてなの」

「うわーイッパイ言われた、混乱する〜」

「一番重要なのは(1)番かな。これだけ覚えていればイイかな」

花ちゃんの説明に少し考えて、
「質問いい?
 台風って、今まで日本の下側でできて、沖縄ー九州ー四国と上に進んでいたけど、今年は日本の横の方でできて、西に進んで、関東から上に行った台風あったよね。
なんでこんなコトになったの?」

「いいとこ付くね、それは(1)番の理由。
いままで海水温度が低かった地域が熱帯化して発生の条件がそろって来たんだよ。
つまり、温暖化の影響だと思うよ。

今年はラニーニャ現象もあったし、台風発生の条件がそろったんだと思うね」

「やっぱり異常気象の影響なのかな?」

「でも桜、異常気象って10年以上前から言われてるケド、もう異常じゃなくて、日本の周囲が温暖化による亜熱帯へ移行してるんだと思う。
それを認識して、熱くなっても大丈夫な備えをするべき。
それが《防災》だと思うよ」

「おお、つながった!
どんなコトも想定して備えなきゃね。
お母さんに言っとこ!」

04【台風進路のいろは】

「ねえねえ、花ちゃん、台風って色んな方向に行くでしょ、なんで?
発生場所は同じでも中国行ったり、朝鮮半島行ったりもするでしょ?
なんで進む方向はバラバラなの?」

「それはね、高気圧の影響なんだよ。
台風は基本的に高気圧の縁に沿って移動する性質があるんだ。
特に太平洋高気圧が日本列島にある場合、その縁に沿って北西方向に進む場合が多いんだ。
あと、偏西風や上空のジェット気流の影響も受ける。

気象現象の基本は《高気圧》と《低気圧》の関係性なんだよね。
コレが基本」

「今まで聞き流していたコトバだけど、天気はこの2つが支配してるんだね」

「そうそう、西と東の横綱って感じだよね」

日本人にしか分からないたとえをします。

「知らなかったわ、高気圧と低気圧ってこんなに大事なのね」

いきなりの声にびっくりするお二人さん。

「リ、リサリサ先生居たんですか!
びっくりした」

「ごめんなさい、いきなりビックリさせて」

「なんでこんな所に居るんですか?」

「職員室は湿度のせいで、オヤジの匂いが充満してるから、同じ臭いのでもJKのほうがマシかなと思って、校舎をウロウロしてたら、二人が話しているのを見つけてコッソリ聞いていたのよね〜

なかなか面白いお話だったわよ」
「どこから聞いていたんですか?」

「カミナリ様のくだりの辺りからかしら」
顎にてを当てて、色っぽく思い出しポーズ。

「最初からじゃないですか!」

「ウフフ、そうかもね。
でも、ためになる内容だったわよ。
わたしも知らないコトだらけだったし、生徒のみんなにも聞かせたいわ」

先生ぽいこと言ってます。
オヤジ臭いって言ってた人とは別人みたい。

「いやいや、それほどのことでは無いです。恥ずかしい!!」

「コロッケくれるならイイです」

お調子桜が本領発揮。

「防災国体での発表の予行練習としてイイかもね。
考えておくわね」

あれよ、あれよと決まります。
リサリサ先生も桜と一緒で人の話を聞かないタイプだな〜

05【台風進路のいろは】

「で、宮花さん、次は何を教えてくれるのかしら?」

「はい、次は、台風のシステムについて話します。

台風は《低気圧》なので、風は台風に向かって流れ込みます。
向きは進行方向に向かって反時計回りです」

「ねえねえ花ちゃん、台風は右側が風が強いって言われるけど、何で?
両方一緒じゃないの?」

「それはね桜、右側は進む力と風の向きが一緒だけど、左側は進む力と風の向きが反対だから、打ち消し合ってその分弱くなるの」

「分かった!流れるプールと一緒だね!!」

「ナニソレ??」

「だって、流れに乗ったら早く泳げるケド、逆らった全然泳げない!そういうコトでしょ!」

「まあ、そうかな」

「あと、日本では右側が雨も強くなるって言われてるの。理由は南から北に進むとして、南にある暖かい空気を吸い込んで、積乱雲を発生させ、さらに発達させる。それが大雨の原因となるの」

「ヘクトパスカルの数値だけじゃなく、進路も考慮しないと防災にはならないよね。

ネットで調べると出ては来るけど、テレビで言ってくれたらイイんだけどね」

「あと、台風のくる前に急に涼しくなる事がある気がするんだけど、ナンで?」

「台風の発生によって、周りの気象条件が不安定になるから。
夏は太平洋高気圧の影響で比較的安定した猛暑が続くけど、台風が発生すると周りの低気圧とかが動いて気温を下げたり、雨をもたらしたりするの。

これは台風本体とは違うから間違えないようにね」

「台風メッチャ遠いのにもう降ってるって思ってた!
イロイロあるんだね」

「そう、難しいけど解ってくると面白い。
人が知らないこと知ってるって思うと、全知全能の神になった気分。

下々の者よ〜我に跪け〜って感じダネ」

そんな花ちゃんに桜は「ははー」と拝みます。

(続く)

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