見出し画像

チーム戦術を仕込む




前回の記事の続きです。


まだお読みでない方はぜひご覧ください。


僕は小学3年生の時に地元の少年団で
本格的にサッカーを始めました。

なんと初日は練習ではなく、
いきなり試合から参加でした。

ミニサッカーのようなローカル大会で
周りには経験者もいました。

右も左もわからない自分に、当時の先生は
僕にこんなことを教えてくれました。

「いいかい、攻めるゴールと守るゴールがあるだろ?味方がボールを持ったら攻めるゴールの方に走るんだよ。これが上がれという意味だ。敵がボールを持ったら自分達のゴールの方に走るんだ。これが下がれという意味だよ。」

僕はその試合、
先生や味方が「上がれ」と言ったら前に走り、
「下がれ」と言ったら自分のゴールに戻りました。

初心者、初日、初試合の僕でしたが、
とてもわかりやすい内容でした。

そしてそれを僕だけではなく、
チームのみんなが実行していました。

今思い返すと、あれは立派なチーム戦術であり、
勝利を目指す上で必要なことだったと感じます。

勝利を目指す集団スポーツであるならば、
チームとしてどう動くかはとても大切ですよね。

「チーム一丸となって戦います」とは言うものの
あなたのチームは
個人で頑張ることが多くありませんか?

チーム一丸・一体となって
戦うとはどういう意味でしょうか。

我々が夢中になっているスポーツはサッカーです。
集団です。チームスポーツです。
まずはその観点を忘れずにいきましょう。



現代ではサッカーが進化し、
様々な戦術がトレンドとして
使われることも増えてきています。

僕も実際にサッカー指導者になって
戦術を選手達に教えることがあります。


今回は、
チーム戦術を落とし込む時に大切な伝え方
僕なりに書いていきます。

トレーニング方法はお伝えしません。

机上で説明する際に大切なポイントのみです。


これも僕の主観や経験を元に書く内容です。
参考にするもしないもご自由にお願いします。




今回もポイントを絞って書き進めていきます。




◾️目的をしっかりと



まずは目的。
「何のために」そのチーム戦術を用いるのかを
選手達に説明することです。

ここが最初ですが、非常に重要です。


例えば
シーズン開幕前に【GKからのビルドアップ】を
構築したい時。1番最初の説明はこんな感じです。

「今年のリーグ戦の相手はどこも強い。全チーム君たちが普通に戦っても3点以上取られることは目に見えている。自分達が少しでも優位に試合を進めるためにはボールを持つ時間を少しでも長くすることが大切になる。相手は自分達よりも体も大きくて強い。ビビってボコボコ蹴っていては全部ボールを拾われて反撃されるよ。攻撃されたら失点する可能性も高まるし、そんなやられっぱなしのサッカーじゃ1年間楽しめないよね。だったらうちの攻撃はGKからパスを繋いでいく方がいいと思う。難しいかもしれないけどやる価値はあるよ。相手が強いからこそボールを繋いで攻める。まだ試合までは時間があるからやってみよう」


と説明してから聞くビルドアップの説明の方が、
子どもたちのメンタル面を前向きにし、
そこから始まるトレーニングまたは試合全てに
繋がりができて選手達は吸収しやすくなります。


「最初のきっかけ」「なんのためにやるのか」
その目的をハッキリと共有しておくことが、
まずは何より肝心です。

ここの目的をすっ飛ばして、
「いい?今年はGKからボールを繋ぐよ。
この時は〇〇がここの立ち位置を取って、
こうなったら〇〇がここに走る」

といきなり説明しても、子どもたちは

「え?なんでわざわざそんなことするの?
難しそうだしめんどくさそう…」

と、メンタル的にアクティブさがなくなる状態で
話を聞き、その後のトレーニングや指導者の話も
ほとんど入っていかない可能性もあります。

そんな状態でいくら熱心な指導をしたとしても、
得られる効果は薄いです。


試合のハーフタイムに
チーム戦術を変えようとする場合でも
「目的」を伝えることが大切です。
さらっとでいいのです。

目的があるかないかで、
選手がやろうとするかしないかの
メンタル面が大きく変わります。








◾️やり方には自信を持つ



目的がバッチリ決まれば、
ようやく「やり方」に入ります。


やり方はそれぞれの指導者や選手のレベル、
チーム事情、試合や大会の背景等を考慮した
ベストなものを自分なりに伝えられれば
良いと思います。

やり方は指導者が
10人いれば10通りあると思うので、
自信を持って選手に伝えていきましょう。

自信のない歯切れの悪い伝え方は、
選手がついてきません。

一度自分の中でやり方が決まったら
自信を持った姿勢で伝えることが大切です。


ただ、話す時に1つ気をつけることがあるなら
「話が長くなりすぎないようにすること」です。

現代の子どもは、ショート動画やTikTokなど
15秒くらいのものしか見ていられない
(聞いていられない)特徴があるそうです。

そんな時代の子どもの特性を考えても、
話は長くなりすぎないように気をつけましょう。

ビジネスの世界でもよく聞きますが、
シンプル、ショート、ストレート
3Sを意識して伝えることをおすすめします。



◾️仕組みを伝えて深みを出す



今回の最重要部分です。

チーム戦術は「仕組み」によって
どれだけ深みを出しながら選手が理解できる
伝え方ができるかだと思います。


細かい話になるので具体例は挙げられませんが、
「表があれば裏があることを伝える」
ことが大切かなと思います。

例えば、
・これをやるとここが手薄になる
・これをやるとこれをやり返される可能性がある
・これをやったら相手はこう対応してくる。
 だからこそ、そのあとはこれが効く

など

「このカラクリでこの戦術は成り立つ」
ということを伝えることです。


もっと難易度を下げる言い方をすると、

「相手はこうされたら困るよね?
 ここに動かれたら君ならどう対応する?」

と、わざと相手(敵)側の立場に立って
その戦術を〝される〟ストレスを考えてみる方法も
いいかもしれません。

この伝え方を意識することで
選手に対して一方通行なコーチングを
避けることもできます。


上記のことから、
通常よりも一歩踏み込んで
選手に理解させたいのならば、
やりたい戦術だけを教えるのではなく、

・それに対する表と裏を考えること
・失う可能性のあることを考えること
・相手(敵)側の立場に立って考えてみること

など、客観的に俯瞰して戦術を捉える思考を
持つことが大切かもしれません。

小学年代からそのような〝サッカー思考〟を
持つことは、後に圧倒的な差になります。


また、大前提として頭に入れておきたいのは
「プレーするのは選手であり、
指導者の脳内を100%共有することはできない」
ということです。

選手達がピッチで生き生きするためには、
選手の頭がクリアになり、
体がアクティブになることです。

やらされてる感が出ると、
頭も体もぎこちなくなります。
それではどう頑張っても上手くいきません。

だからこそチーム戦術を仕込む上で、
仕組みを伝える対話を選手と重ねることが
僕の経験上、最も重要で必要なことです。




以上がチーム戦術を伝える上で大切な3つです。

目的  やり方  仕組み


先に目的をしっかりと伝えた後に、
やり方と仕組みを駆使しながら
選手に伝えることが、僕のおすすめです。


また補足ですが、
1つのチーム戦術に固執してはいけません。

1つの軸を持ちながら、
頭を緩くしておけるかが勝負の分かれ道です。

例えば大本命を射止めたいと思った時、
一つの方法だけでは崩せませんよね。

これが無理ならあれ、
こうなったらこっちのパターン、
ここが手詰まったらすぐこれに変える、
この時間は一回引く、
ここは強引に畳み掛けるところ!

など様々な準備をしながら、
いつでも引き出しを出せる状態で
試合を見守りましょう。


もちろんそれには経験値も必要ですが、
経験値を得るためにも、
普段の練習や練習試合から分析の目を持って
チームを観ておくことが、
試合でも引き出しを出せることに繋がります。




日本は全体的に戦術を毛嫌いする国です。

口を開けば個人のことばかり。
あの選手のターンが、ドリブルが、足の出し方が、
ここの時のボールタッチが…


何度も言いますが
サッカーはチームスポーツです。

僕は指導者として
まずはチームをマネジメントし、
いいチームを作り、
個人の特徴を最大限伸ばして、足りない部分を
様々な方法で埋めるサポートを行います。


小学年代からでもチーム戦術は多くのチームが
多用していけばいいと思いますし、
それをやり合うチームが増え、
それを語る指導者が増え、
チームと個人の両方に着眼点を持って
サッカーを観れる人が増えれば
日本のサッカーの発展に繋がると感じます。



最後まで読んでいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?