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サッカーで本当に「認知」すべきもの


今回はサッカー(試合)における〝認知〟について。

小学生から大人、プロの世界まで
共通している普遍的な内容を書きます。


あなたはサッカーの試合において
「何を観て情報を得るべき」と教えらていますか?
または教えられた経験がありますか?

もうご存知の方は多いと思いますが、日本では
ゴール、ボール、味方、相手、スペース
一般的にこの5つだと教わります。

僕が中学生の頃、トレセンに参加した時も
同じことを教わりました。

少なからず15年前から日本では言われています。

日本サッカー協会が一律で設けている基準ですね。


しかし、僕には気になることが…

今回も自分なりの視点からメスを入れていきます。




当然、
上記の5つを観てプレーすることを
知識として知っておくことは重要です。

ただ、それを選手が毎度毎度、
全てを意識しながらプレーすることは
本当に必要なのか?可能なのか?
という部分が今回の論点です。

僕は指導者として、選手に対しては
なるべくシンプルに物事を伝えることを
心がけています。

難しい戦術だとしても要点を押さえて、
「こうなったらこうする」
「ここが大事だからこうなったらこっち優先」など
できるだけ選手の理解に落ちるよう伝えます。

その時に意識している内の1つは
「多すぎる情報を一気に与えない」ことです。

【多い×難しい】情報は選手の理解力を妨げ、
体のアクティブさを奪います。

人間の脳は情報を縮小して取捨選択することが
防衛本能として備えられているからです。

なので、多くの難しい情報を選手に伝えたところで
「何も伝わっていない」と僕は思っています。


前述した、サッカーで観るべき5つのモノに
話を戻します。

これらも優先順位の低いものは
なるべく削ぎ落として伝えることが
大切という考え方に至ります。

少なからず僕はそのような考えです。

では5つの観るべきモノの中で、
あなたが優先順位をつけるとしたら?


おそらく、ほとんどの人は

1位:ゴール
2位:ボール
3位:味方
4位:相手
5位:スペース


という順位をつけるのではないでしょうか。

人によってはゴールとボール、味方と相手が
逆のパターンもあるかもしれません。
でも大方こうなると思います。

ちなみに僕が優先順位をつけるとすれば

1位:相手
2位:スペース
3位:味方
4位:ゴール
5位:ボール

極限に2つに絞れと言われば
3位以下は捨てられます。


僕は、「相手」「スペース」の2つが
サッカーをプレーする上では
最重要情報だと認識しています。

しかし、日本サッカーでは
「ゴールを観る(意識する)」ことが
最重要視されていますよね。
あまのじゃくの僕にはあまり理解できません。

もちろん、ゴールに近づいてきたエリアや
シュートを打つ前にゴールは見ます。

でも選手が目指すゴールから
まだ遠いエリアでプレーしている時にも
「ゴール見てる?」「どこ目指す?」「目的は?」
のようなコーチング(情報)って本当に必要なのか。

たしかにGKが前に出ていて
ゴールが空いてることもある。

常にゴールを見ておくことでチャンスがあれば
シュートを狙うことは大切だという発想。

たまにハーフライン付近からの
スーパーロングシュートを見かけますが
「たまに」なんですよ。

確かにスーパーロングシュートを決めた人は
ゴールを見ていたんだと思います。素晴らしい。

でもその基準を一律に揃えて
選手に「ゴールを見ろ」という情報をプラスする
コーチングってほぼ無意味じゃないかな…

もちろん必要か必要じゃないかで言うと、
サッカーの価値観は幅広いので
間違ってることではないと思いますが、
あまりにもそこを正義としている風潮を
僕は理解できません。

おそらくですが
「ゴールを見る(意識する)」ことで
一気に前方を見渡せるという
大胆な発想なんだと思います。

でもそれって結局前方を見渡しながら
本当に認知させたいものってゴールではなく、
相手がどれくらいプレスに来ているのか、とか
スペースはどの辺にあるのか、とか
味方がどこにいるのか、とかを
認知させたいからこその
「ゴールを見ろ」ですよね?

サッカーというスポーツが
ゴールの位置が時間帯によって動くなら
「ゴール見てる?」「どこ目指してる?」という
コーチングは頻繁に必要だと思います。

でもゴールは動かず、いつでもそこにある。

ゴールを目指すことなんて重々承知。

でもそのゴールを目指したくても
目指せないんですよ。相手が邪魔してくるから…

めちゃくちゃ押し寄せてくるし、
体にも接触してくるし、
圧力をかけてくるんですよ…

そんな中でもゴールを見るの?
見なきゃいけないの?

見れないし、そんな余裕ありません。
というか見てません。そこにあるから。

例えばDFが
「ゴールを意識する」選手なら
何も考えず前線へロングボールを放るでしょう。

しかし、DFが
「相手とスペースを意識する選手」なら
フリーな味方やスペースが自ずと見つけられます。

相手DFの背後にスペースがあるなら
そこへ味方を走らせるためにロングボールを
放るでしょう。それは判断として正しいです。

「ロングボールを放るプレー」でも
それを「ゴールを意識して蹴った選手」と
「相手とスペースを認知して蹴った選手」とでは
その先の選手としての判断能力に
雲泥の差が開くでしょう。

つまり、ゴールまでの距離が遠いにも関わらず
ゴールを意識してプレーすればするほど
スピードも上がり、判断ミスも生まれ、
結局ボールを失うこと(ミス)に繋がります。


なので僕は、ゴールを意識するよりも
相手とスペースに意識を向けて
プレーすべきだと考えるのです。


相手の裏にスペースがなければ
どこかの手前のスペースが空いている。

相手が自分の近くにいるのであれば
自分から遠くが空いている可能性がある。

そこを探す全ての認知基準は
「相手とスペース」なのです。

裏を返した言い方をすれば
「相手とスペース」が今あなたに
何をすべきか教えてくれるのです。


ただ、スペースを見つけるには訓練が必要です。

普段から選手にはよく言っていますが、
スペースというのは「ここだよ(キラキラ)」と
ピッチが光ることはないし、
誰かがいちいち教えてくれるモノでもない。

自分の目で観て瞬時に見つける能力が必要です。

いずれにせよ、
相手とスペースを認知してプレーできる選手は
いつの間にか相手の邪魔を掻い潜り、
気づいた時にはゴールに近づいています。

ただ、目的からの逆算という言葉もあるように
ゴールを観ることで色々な情報を得る
という考え方自体は悪くないと思います。

でも、それなのに目の前で起きている現象を
選手が理解していなかったり
選手が解決策を見出せてないのであれば
「ゴールを観る」ことは意味がないですよね。

「ゴールを観てゴールを目指し、
あとはその都度考える」
のような思考状態ではあまりにも抽象的過ぎます。

さらに言うと、
小学校低学年もゴールを観る習慣を
意識付けさせることが大切だと言われます。

これまた優先順位を教えるために。

あれ…でも低学年であればあるほど
ゴールを目指しまくっているような…
団子になってみんなでゴールに向かってます。

つまり極論を言うと、
ゴールを目指すことなんて
サッカーをプレーする限りは
誰でも潜在的に知っているのです。

だからわざわざ言う必要はないんですよ。
ゴールを目指せなんて。みんな目指してるから。


例え年齢が上がったからといって
ゴールの意識が薄れるわけでもありません。

試合でゴールを目指してないように見えるのなら
それは「エリアや段階としてまだ目指せない」
「指導者が本質から外れたことを教えているか」
のどちらかでしょう。


何が大切で、何を観てプレーすれば
サッカーをうまくプレーできるのか。

その答えを教えてくれるのは
相手とスペースだと、僕は思うのです。


あまり触れていませんでしたが
味方を観ることも大切ですね。

しかし、味方の情報は
観ることよりも〝観ておくこと〟が大切です。

事前準備の段階で、どのように味方と
繋がり合っているかがプレーをスムーズに
進められるかの鍵を握っています。


そんな感じで認知するものは整理しながら
絶対に観るべきものは押さえながら
サッカーを楽しむと、より上手くいくでしょう。


では、ボールは観なくてもいいのか?

逆に聞きますが、
試合を通してずーっとボールを目で追いますか?

もちろん「蹴る時」はボールを見るでしょう。

でも「プレーする時」には
ボールを極力見ない方がいいです。

その理由は今回の内容を読んでいただいた
皆さまは既にわかると思います。



話を簡単にまとめます。

・サッカー(試合)で
本当に認知すべき情報は「相手」と「スペース」

・「味方」は観るよりも観ておくこと

・「ゴール」はゴールに近くなれば観るべき
・「ボール」はボールを蹴る時に観るべき

・「ゴール」を意識すればするほど
ミスが生まれやすいことも頭に入れておく

〝相手とスペースを認知できる質が上がれば
サッカーはうまくプレーできる〟

相手がどこから来ているか、
相手がどれくらいの速さと強さで来ているか、
スペースはどこにあるのか、
スペースはどこが空いたのか、


これらの必要最低限の認知を
しっかりとできるようになることで
試合のコツを掴んでプレーできるようになります。

実際に実行(プレー)できるかはまた別の話。
今回は「認知」の話なので。


今回は図を使うことはせず
全て文章で書いたので、
わかりにくい部分もあったかもしれません。


もしも今回の内容でイメージができなければ
下記の試合を見てみてください。

10年以上前の試合ですが、バルセロナが
レアル・マドリードをボコボコにします。

特に後半のバルセロナはまさに
相手とスペースの認知の連続でプレーします。
まさに彼らは認知の鬼です。

ゴールを猛烈に目指しているようには見えません。

相手を見て、スペースを突き続けることで
結果的に5得点を奪います。

素人が見ても面白い試合だと思いますので
興味のある方はぜひご覧ください。


僕は選手を上手くさせるためには
「難しいことを簡単に伝えられる力」
指導者には必要だと思います。

日本サッカーを批判することはありますが、
否定しているわけではありません。

今後も僕なりに咀嚼させてください。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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