あるサービスが生まれてから死ぬまでの物語(まだ死んでないけど)

あるサービスが生まれてから死ぬまでの物語(まだ死んでないけど)

ワタリユウタ@ハンズオン支援家

5ヶ月ぶりのnote更新。こうやって、忘れたころにフラっと戻って来れるのは、noteの良いところだなぁと思う。


いつか書こうと思いつつ5ヶ月も経ってしまったけど、2018年前半に頑張ってつくっていたdocoikという「家族のためのお出かけサービス」の話を、ここに残すことにした。


ちなみにこのサービスは、友人で複数社のプロダクトマネジャーとして活躍するきゅーいくん(@library_fit)と2人で作った。すでに僕たちのコンビは解消しているけど、今もほぼ毎日Slackでお互いの事業を壁打ちしたり、良い関係が続いてる。

これから書くことは、彼と僕、2人で半年間走り抜けた思考の記録みたいなものだと思ってほしい。


「事業を終わらせた」ということを、なぜ記録しようと思ったか

ベンチャーバブルの現代においては「EXITした」「資金調達した」「事業を開始した」というニュースやツイートで溢れかえっているが、こと「事業を終わらせた」という記録は(実態として発生している件数に対して)ものすごく少ない。


振り返るのは、めちゃめちゃつらいからだ。本気の事業であればあるほど、「あぁ、あそこの判断はミスってたな…」とか「なんでここで踏ん張れなかったんだろ…」という後悔の思いが、自身の中でむくむくと湧き上がる。

実際、僕もこのnote を書くのに5ヶ月もかかってしまった。


しかし、「事業を終わらせた」という、この情報には間違いなく価値があると思っている。

自分自身の内省のため。そして、近い将来に同じような領域で挑戦する誰かのため。あるいは起業を志す若い世代のため。



「ググらないお出かけ先提案サービス」

僕たちが作ったのは、子育て世帯のためのお出かけサービスだ。

僕には4歳と3歳になる男の子がいて、めちゃめちゃお出かけをする。

動物園、遊園地、プール、キャンプ、博物館...


「家族のお出かけ」という領域はSEOの激戦地帯で、検索サイトだと「いこーよ」や「コモリブ」。施設予約サイトだと「asoview!」や「SOTOASOBI」なんかが大手プレイヤーだ。


ただ、すでに世に出ているこれらのサイトでは満たせていない僕の悩みがあった。

①予算/年齢/距離/天候/食事など複数の因子が絡み合い、最適なお出かけ先にたどり着けない

②サイトそのものが文字情報メインで、楽しそうじゃない(=決められない)

ざっくり言うと、こういう自分自身の悩みを解決したいと考えた。きゅーいくんは未婚独身だが、僕が相談を持ちかけたときに快諾をしてくれて、2018年2月から、夜や週末の時間を使って2人で議論を重ねてきた。


そして2018年4月に完成したサイトが、コレ。(画像をタップすると実際のサイトに遷移します)


着想から3ヶ月弱で、ほぼ今の形にたどり着けたのは、きゅーいくんの凄さだろう。彼はまじですごい人なので、もっと有名になってほしい。


docoikで活用しているのは、以下のような情報だ。

・スマホの位置情報
・インスタから収集した画像データ
・AWSが認識した写真の子どもの年齢
・手動で登録する施設情報(恐竜がテーマ、雨の日でもOK、など)

これらをフル活用して、「ググらなくても、最高のお出かけ先がみつかる体験」を目指した。


公開後には多くの方からポジティブな反響をいただき、手応えもあった。




今でも「画像 × 位置情報」を軸としたアプローチは正しかったと思うし、PSF(Problem Solution Fit)のフェーズまではかなりキレイに作れたよねーと、最後解散するときにも2人でも振り返っていた。


それでも終わらせた理由

サイトをGW前日の4月27日に公開してから約2ヶ月半の検証を経て「これ以上、この領域を掘るのはやめよう」という結論に至った。

そこに至るまでの経緯は語りつくせないほどのものがあるけど、あえて短い言葉にするなら、

・かなりの長期に渡って赤字を掘り続けることが、この領域で成功を修める必要条件であることがわかったこと。

・それに対して自分たちの「覚悟」が伴わなかったこと。

この2点に尽きる。


ユーザーインタビューを通じて見えてきた事実

サイトを公開してから1ヶ月くらいをかけて、50世帯以上の子育てファミリーに対してインタビューを行った。

↑実際に集まったユーザーの声(ドキュメント管理はkibelaを使っていて、かなり良かった)


世帯年収(推定)も600万円〜3000万円超まで、エリアも都心から地方まで、かなり幅広くリサーチをしてきた結果わかったことは、2点だった。

①お出かけ先を決定する因子が、当初の自分たちの想定よりもかなり複雑

②世帯年収に占める「お出かけ予算」が、当初の自分たちの想定よりもかなり少ない


ファクト①:
お出かけ先を決定する因子が、当初の自分たちの想定よりもかなり複雑


サービスを立ち上げたそもそもの課題感でもあった「因子」の話。

その日おでかけ予算、子どもの年齢、親の好み、車の有無、その日の天気、世帯年収、最近行った場所...

こうした因子が複合的に絡みあって「お出かけ先」は決定される。


たとえば、

「3歳の女の子を育てている世帯年収1000万円の世帯に、雨の日にぴったりのお出かけ先をオススメする」

という課題をイメージしてほしい。

・3歳
・女の子
・年収1000万
・雨天

この4つの情報だけでも、そこそこ良いお出かけ先は提案できそうなものだけど、これがなかなかうまくいかない。

「女の子は、体を動かすのが好き?絵本を読むのが好き?」
「先週末はどこに行った?」
「パパとママは疲れてない?長距離移動いける?」
「車、電車、チャリ、どれで移動したい?」
「お給料日前だけど、お財布余裕ある?」

実際にお出かけ先をパパやママが考えるときには、無意識でこういうことを複合的に考慮して、お出かけ先を決定している。

また、年収や年齢といったファンダメンタルな情報によって、項目の重みも変わってくる。(0歳ならオムツ替えのしやすさとかママの食事が重要だけど、4歳になると子どものやりたいことが優先されるとか)

しかもそれぞれの質問に対する回答内容が、毎日、毎週変化し続けるのだから難しい。


これらを単一のサービスで解決するのは、ほぼ不可能だという結論に至った。

おそらくサービスラインをいくつか分けるとか、ターゲットを極端に絞ることで解決はできるだろうけど、、


ここで追い打ちをかけるように自分たちを悩ませたのが、もう1つのファクトだ。


ファクト②:
世帯年収に占める「お出かけ予算」が、当初の自分たちの想定よりもかなり少ない


別の言葉で言い換えるなら、僕(=ワタリ)が、家族のおでかけにめちゃめちゃお金を使っているということが分かった。

僕は月収の10%くらいは、家族でキャンプしたりプチ旅行したり、遊園地にいったりに充ててている。これが当たり前だと思っていたけど、一般家庭とくらべるとすごく高い方であるようだった。

たしかに言われてみると年齢の割に貯金ができていない(笑)

「渡家、節約しようね」という笑い話で終われば良かったんだけど、これが示すのは以下の2つだ。

・お出かけ先の施設に十分な広告予算がないという可能性
・家族の、新しいお出かけ先を探すエネルギーが高くない可能性


実際、競合サービスの決算をひととおりチェックしたところ、サイトのトラクションの伸びに対して収益の伸びが弱い。もちろん官報情報なので詳しいことはわからないが、施設サイドからのマネタイズに苦戦しているであろうこと、施設側が「広告疲れ」を起こしている可能性については容易に想像できた。


こうしたリサーチと平行してVCやエンジェルの方々と壁打ちをしていても、「5年くらいは潜る覚悟で、最初からガッツリ資金入れて、ユーザーサイドから取り込んでいく戦略が良いだろう」というアドバイスを多くいただいた。

もともと趣味で始めた週末プロジェクト。当然、事業領域やサービスへの想いは強かったけど、「お前に覚悟はあるのか」と問われた瞬間に、一瞬躊躇をしてしまったというのが本音だ。


↑最後の振り返り資料の一部。「みんなじゃなくて誰か」、「稼げる場所じゃないことに後から気づいた」という記述は、まさに先に挙げた①②を示している。


学んだこと

そんなわけで今年7月に幕を閉じた複業趣味プロジェクトだったが、学んだものは計り知れない。あえて10個ほど挙げてみると、こんなところだろうか。

・「誰の、どんな悩みを解決するのか」をシンプルに語ること

・ユーザーに愛されるために、ユーザーを巻き込むこと

・「自分はこうだから」という感覚を信じてはいけないこと

・ユーザーに会うことを怠らないこと

・家計に占める予算割合から、ユーザーの熱量を推し量ること

・睡眠を犠牲にしてはいけないこと

・たとえ趣味でも、ゴールを明確にすること

・複業チームでやるなら、目線合わせを疎かにしないこと

・振り返れるように丁寧にドキュメントを残すこと

・自分でプロダクトを作るのは、めっちゃ楽しいということ


そもそもtoC向けのサービスを企画すること自体が初めての経験だったし、PM的な役回りでサービスを設計することも初だった(その点、きゅーいくんがPMの師としても色々手ほどきしてくれたことにめっちゃ感謝している)。上に挙げた10項目についても、実体験を伴って自分の血肉にすることができた。


さいごに、docoikを応援してくれていた人たちへ

docoikがんばってほしい!と応援してくれていた方々。本当にありがとうございました。

一部のユーザーさんが中心になって「docoikファンクラブ」というLINEグループも作っていただき、楽しかったお出かけ先の共有をしてくれたり、ボランティアでお出かけレポートを書いてくれたり。多くの方のご協力・応援があって、自分たちもここまで頑張って来れたと思います。

docoikはしばらく更新はしないと思うのですが、僕が個人的にお出かけ先を探すのに使っているので、閉じることもしないです(けっこう使えますw)。

何かのタイミングで思い出したら、使っていただけると嬉しいです。


本当に本当にありがとうございました。

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ワタリユウタ@ハンズオン支援家
従業員700人がリモートワークするキャスターの執行役員/2020年に事業譲渡しjoin/BizDev、マーケ、経営管理などやる何でも屋/東北大→総合商社で資源ビジネス→ユニラボ取締役→wib創業→M&A→キャスター/podcast #マイサブジェクト配信。