デザイナーが語れること、語れないこと
京都伊勢丹での「サロンドパルファン2024」は今日で5日目。本をホテルに忘れてきた私は、ランチのビーフカツレツを待ちながらこの記事の執筆をはじめた。時刻はお昼1時。お腹はペコペコ。
朝からçanomaのブースをめがけて来てくださる方が多くいた。お昼過ぎくらいに一度落ち着きを見せたが、これからまた増えてくるのだろうか。
店頭サポートに入ってくれている伊勢丹の社員さんたちとあれこれ話すのが脚が疲れる店頭での小さな癒しとなっている。フレグランス四方山話を新鮮なリアクションと共に聴いてもらえるのが嬉しい。
そんな中、自分でブランドを細々とやっている、という話をすると、「お客さんからしてみたら、ブランドのディレクターさんと直接お話ができる方が嬉しいですよね」という返答をもらうことが多々あるが、私は必ずしもそうではないように感じている。
もちろん、ブランドのディレクターから直々に話を聴きたい客層はいる。ただ、マジョリティはどちらかというとライトな接客を受けたい人々で構成されているものと思慮する。
あ、オニオンスープがきたから小休止。
オニオンスープ、美味しかった。
ビーフカツレツも到着。ちょっと待ってね。
…このビーフカツレツ、美味しいな…
完食。
で。
そのマジョリティの中には、とりあえず香りを試したいだけで余計な説明は必要のない人もいるし、「これいい香りですよね〜」という“フワッとした”接客を求めている人も多い。だから私が事細かに説明しようとするのを煩わしく感じているはずだ。
さらに、私の立場上、積極的には言いにくいことがある。
例えば、「このブランド、すごいんです」ということは本来であれば言えないと私は考えている。すごいかどうかはやっている本人は判断するものではなく、周りが評価することである。販売員の方が第三者的な立場から言う分にはなんの差し支えもないのだが、ブランドのファウンダーが言うのはなんだかおかしな話であるように思える。
一度、とあるセレクトショップで接客を受けている際、「このブランド、おすすめです。世界一生地にこだわっているんです」と説明されたが、後になってその言葉を発した人がそのブランドのデザイナー張本人だったと知り、強い不信感を抱いた。「世界一生地にこだわっている」という自負も持つことは結構だが、それを第三者を装って話すのは私は違うと思うのだ。「私は生地に強いこだわりがあって、そのこだわり具合は私調べでは世界一です」くらいに言ってくれればよかったのだ。とはいいつつ、気軽に「世界一」とのたまう人を私は好きになれないのだが。
さて、そろそろ店頭に戻るか。
………4時間後………
ただいまおやつ休憩中。フルーツワッフルとコーヒーを注文した。
さて、少しの間続きを書こう。
作り手ができる接客、あるいはやるべき接客というのはどういうものか、ということについていつも考える。一般的な意味合いでの接客に関しては、私は上手にできないことは重々承知しているが、それでは私に求められている店頭での役割は何であろうか。
それは思うに、「事実を伝える」ことである。すごい、いい、かっこいい、おしゃれ、等の言葉は、周りの評価によるものだ。そうではなく、何が入っていて、どのような構造になっていて、その裏にどういう意図があって、ということを、一般の販売員以上の正確さをもって語ることにつきる。
そうであるがゆえに、先述の通り、それを本当に求めている客層というのは必ずしも多くない。一般的にはもっと当たり障りのない、ふわりとした接客を欲しているはずだ。ただだからこそ、çanomaは卸先をたくさん用意して、そういったただ香りを試したいだけのニーズにも対応しているつもりである。「サロンドパルファン」等のポップアップにおける私の接客は、より細かい部分を理解したい、背景を知りたい、という人向けのものになっていると思う。もちろん、私なりに考えながら、そうでない人向けの、より“一般的な接客”も頑張っているが…いかんせんそれは下手っぴだと思う。接客の際はどうあれ、私がçanomaの作り手であることは積極的には明かさないので、「あのヒゲのおじさん、接客下手だったね」と感じたお客さんも、あるいは多いかもしれない。
と、ここでフルーツワッフルが到着。残りは夜ホテルに戻ってから書くことにしよう。
………8時間後………
途切れることなく接客をした後、肉を食べに行き、そのまま京大吉田寮に拉致られ踊っていた。ホテルに戻ったのは深夜0時を回ったところだった。
明日は「サロンドパルファン2024」の最終日。閉場の夕方6時まで、下手っぴながらも頑張って接客し続ける予定だ。
私は最後まで、事実を伝えることのみに専念しようと思う。私にはそれしかできないのだから。
最終日、来てね。待ってます。
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