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信じても、いいのかな

パリのシャルル・ド・ゴール空港を朝7時に出るフライトには公共交通機関だと間に合わないので、5時過ぎに家を出てタクシーで向かった。6時前には空港に到着し、預け入れる荷物もなくそのまま手荷物検査。搭乗ゲートの前に着く頃にはまだ時間に余裕があった。

離陸前に寝て着陸後に起きた。ベルリン空港に到着したのは8時半。快適なフライトだった。

ベルリンは全くのはじめてで土地勘もなかったので、とりあえずベルリン中央駅に向かうことにする。迷ったり電車を逃したりしていたら到達が10時ごろになった。朝から何も食べていなかったのでカフェでカプチーノとクッキーをオーダーした。


今回のベルリン出張の最大の目的は、Andreas Murkudisで行っていたçanomaのポップアップを見に行くことだった。

suzusanというブランドが日本テイストのプロダクトを中心に集めて行っていたイベントで、çanomaにも声をかけてもらった。

本来はベルリンに到着した6月29日土曜日までのイベントだったが、なんとお店側の都合で28日に撤収してしまっていた、ということを29日の朝に知った。ポップアップが見れないのは残念だけど、販売していたスタッフにお客さんの反応でも聞ければいいか…と思い、開店直後のお店に向かった。

火曜から木曜まで徳島、木曜に東京に戻り、金曜はパリ、そして土曜はベルリン、と移動続きだったことに加え、土曜のベルリンはひどく暑かったので、私の頭は少しクラクラし始めていた。軽い熱中症だろうか。Andreas Murkudisでのミーティングは早めに切り上げよう、大して面白い話もないだろうし…疲れていた私は、そんなことを考えていた。


お店は思いの外広かった。白を基調とした空間に、服やバッグ、アクセサリー、陶器などが展示されていた。フレグランスコーナーもしっかり確保されていた。

お店の中をゆっくり歩いていると、なんとçanomaのフレグランスがまだ置かれていた。撤収されたと聞いていたので少し驚いたが、結果オーライだろう、私はこっそり何枚か写真を撮った。

ちょうどセールのタイミングだったこともあり、気になる商品を手に取っていると、金髪で背の高い男性店員に声をかけられた。試着をお願いし、購入する旨を伝えたのちに、実はあそこに展示されているフレグランスブランドのファウンダーであることを伝えた。すると彼は、「私は担当じゃなかったからちゃんとは見ていなかったけど、かなり盛況だったって聞いたわ。だからあなたのブランドだけ残してあるの」といった。

よく見ると、suzusanが主催していたイベントの括りで出展されていたのはçanomaだけで、あとの商品は普段取り扱っているものだった。


このお店のファウンダーであるAndreasはまだ来ていなかったので、私はホテルでアーリーチェックインをして少し休み、お昼過ぎにまたお店に戻った。先ほどの彼に案内されてAndreasがいる別の店舗に行き(私をそこに残して立ち去る時に、彼は私に投げキッスをした)、そこでAndreasと話す機会を得た。

先の販売員と同様、Andreasもまずはçanomaが過去のイベントと比較してもかなり好調だったことを口にした。顧客からのフィードバックも上々だったようだ。


「なぜヨーロッパでディストリビューションをしないの?」

そう尋ねられた私は、なんと答えるべきか迷った。今までヨーロッパ展開を躊躇っていた理由は、日本で手一杯だったということと、慎重になりたかった、ということ。

前者はさておき、後者に関しては他の日本ブランドを見ていて思うところがあった。海外、特にヨーロッパを特別視し過ぎていて、どこでもいいからとりあえず取引先を見つけたい、と躍起になっている姿が違和感だったのだ。ブランドのことを考えると、日本だろうが海外だろうが、取引先はきちんと選ぶ必要があると考えていた私は、香りも試さずに安易にコンタクトを取ってくるお店も、こちらのコントロールを離れて取扱店を増やしてしまうディストリビューターも、ポジティブに捉えることができなかった。

私はそのことを素直に伝えた。それに対し、彼はちょっとしたアドバイスをくれた。それは私にとって、非常に有益なものだった。


「イベント終了後なのに、ああやって展示が継続されているというのは、スタッフみんながそうしたいと思ったからなんだよ。わかるだろう?」

彼は最後にそう付け加えた。


店を後にした私はすっかり元気になっていた。彼らの言葉をどこまで真正面から受け止めていいかはわからないが、もし本当だとしたら素直に嬉しかった。そのお店や客層は、まさに私が求めていたものだった。ヨーロッパでもこういったお店にしっかり取り扱いをしてもらいたいと思える場所だった。


このポップアップに誘ってくれたsuzusanのオーナーに、イベント終了後なのにçanomaの商品はまだ展示されていたこと、Andreasに直接会えたこと、そして非常にいいフィードバックがもらえたことを、「どこまで本音で語っているかはわからないけど」と付け加えて連絡した。

すぐに返事がきた。

「搬入時の勉強会でも食いつきがよかったし、実際に完売商品も出たから、きっと本音だよ」

とのことだった。


信じても、いいのかな。


【çanoma公式web】

【çanoma Instagram】
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