「塞翁が馬」みたいな話
「話が聞きたい」や「香水業界について教えてほしい」といった類の連絡をよく受ける。見落としていない限りにおいて、私はそういったメッセージに返事をしなかったことがない。私の持っている知見が何かの役に立てば、という考えは今も昔も持ち続けている。
ただ、残念なことではあるが、以前に比べると失礼に感じてしまうメッセージややり取りが少々増えたような気がする。情報提供に関してお礼の一言がないとか、やり取りの途中でプツッと連絡が途絶えてしまったり、と、以前はあまりなかったようなことが多くなった印象をここ最近受けているのだ。
中でも増えたのは、何を聞きたいのかが不明瞭なメッセージだ。「お話聞きたいです!」だけ送られても、こちらはどう返信すればよいのか困ってしまう。言葉遣いがそこそこ丁寧だとしても、回答する側への配慮が欠如している点において礼を失する行為だと私は思料するがいかがだろうか。
本来であればこういった連絡は無視するべきなのかもしれないが、何か話を聞きたいという気持ちに嘘はないのだろうし、上記のようなコミュニケーションが普通である“世代”もあるいはあるのかもしれないという考えに基づき、私はとりあえず返信をしてどうにかこうにか会話を繋ぐようにしている。
ただし、これも非常に残念なことなのだが、こちらがどんなに寄り添っても、最初のメールが失礼であるケースにおいて、いい帰結を迎えたことは今のところ一度もない。毎度私が多かれ少なかれ嫌な思いをして終わることになる。
返信に困るとあるメッセージを受け取ったのが1ヶ月ほど前のことだった。そこから私は例によってなんとかやり取りを繋げ、最終的にメッセージの送り主から「会って話を聞いてほしい」と依頼された。
先週その方とカフェで会った。まだ学生のその方の要領を得ない話し方故に、会話の意図を把握するのに大変苦労したが、あれこれ質問しているうちになんとか私にメッセージを送った“モチベーション”のようなものを理解することができた。ポップアップ等での販売サポートに興味がある、ということだったので、また別の日にブランド説明などをするミーティングを設定してその日は解散した。
ミーティングの日、その方からメッセージが。
「尊敬できる人と働きたいから今回は辞退する」
と書かれていた。ミーティング開始の2時間ほど前だった。
腹立たしかったがそれ以上にガッカリした。ガッカリしたのはその子に期待していたからではなく、失礼なメッセージにささやかな希望を託していたのが見事に裏切られたからだ。結局、失礼なメッセージには返事をするべきではない、という結論を早々と出すべきなのかもしれない。
失意の中、遅めのお昼は近所の蕎麦屋にした。キノコの天ぷらに箸を伸ばしたその時、また違う方からメッセージを受信する。
「お迎えに上がりましょうか?」
なんのことやら…と思っていると、翌日予定されていたミーティングの相手からだった。
私は、スケジュールを一日間違えていたのだ。スケジュール帳には翌日の予定として記載されていたが、先方とやりとりしていたメールを確認すると蕎麦を啜っているその瞬間は本来ミーティングがすでに開始されているはずだった。
心臓が、キュッ、っとなった。
慌てて蕎麦をかきこみ、タクシーに乗ってミーティング先に向かった。結果的に40分ほどの大遅刻をかました。
無事に(?)ミーティングを終えオフィスに戻る途中、ふと、もし先の学生とのミーティングが予定通り行われていたら、ダブルブッキングになってしまっていてより大変なことになっていたことに気がついた。ドタキャンによって私はある意味では救われた形になった。
こう考えると、塞翁が馬、なのかな…?
いずれにしても、今日ここで書きたかったのは、私はとても傷ついているので慰めてほしい、ということと、私の話が聞きたいというリクエストには今後もきちんと対応しようと考えているが、メッセージは最低限の常識を持って送ってきてほしい、という2点である。
何卒よろしくお願いいたします。
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