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男性名詞女性名詞

私がある程度のレベルのフランス語を理解できることを知った人の、ざっと見積もって8割ほどがまず最初にその言語の難しさを(それは想像でしかないケースも多いが)指摘する。

そのうちの約半数が、その難しさの一例として「名詞の性の存在」を挙げる。「男性名詞と女性名詞があるんでしょ…意味がわからない」と口にするのだ。

実際のところ、名詞に性があることがフランス語を極端に難しくしているとは思わない。確かにいちいち「パイナップル“ananas”は男性名詞で、りんご"pomme"は女性名詞で…」と覚えるのは大変ではある。しかしそれ以上に、私はフランス語の学習において、複数ある過去時制の使い分けや接続法、あるいは冠詞の正しい使い方に悩まされた。

また、名詞の性別を間違えることはクリティカルなミスにはなり得ない。例えば女性名詞であるpommeに男性名詞の定冠詞をつけてしまっても、「無教養な外国人ね」と鼻で笑われ、嫌味ったらしく訂正される程度だ。それによって意味やニュアンスが変わることはほぼないし、とりあえず伝わる。

さらに、ラテン語系の言語において、名詞の性が各言語ごとにそれぞれ一致しているかというと、そんなことはない。フランス語でアンズ"abricot"は男性名詞だが、イタリア語の"albicocca"は女性名詞だ。つまり、名詞の性に何か“本質的な”意味合いがあるわけではないのだ。男性名詞だからといって何か男性らしい要素があるわけではないし、女性名詞にしたってそれは同様だ。


ところで、なぜフランス語には名詞に性があるのだろうか?性があるとどういったメリットがあるのだろうか?きっと調べれば色々なことがわかるのだろうが、あえてそうせず、ここでは私なりの見解を述べていこうと思う。

日本語に名詞の性がなく、かつフランス語を学習したところでその性は煩わしい以上のものではないことを鑑みると、それを覚える労力に比べて得られるものはほぼないと言っても過言ではなかろう。むしろそれがあることにより、「性の一致」といった細かい(余計な)文法事項が発生する。

それが有用であると唯一感じられるのは、代名詞になった時だ。

前出の名詞が直接目的語として再度使われる時、それが代名詞となると、男性名詞ならば“le”、女性名詞ならば“la”に置き換えられる。名詞が多数登場する文章において、代名詞としてどの名詞を受けているのかわからなくなる可能性があるが、代名詞が男性か女性かで異なると、それによってどの前出の名詞を受けている代名詞かが多少ではあるが判別しやすくなる。

あまりいい例ではないかもしれないが、『星の王子さま』から一部抜粋する。

Il y avait, sur une étoile, une planète, la mienne, la Terre, un petit prince à consoler ! Je le pris dans les bras. Je le berçai.

Antoine de Saint-Exupéry "Le petit prince"

この部分の日本語訳は下記の通り。

ある星に、惑星に、僕の星に、地球に、なぐさめてあげなければいけない小さな王子さまがいるのだから!僕は王子さまを抱きしめた。やさしく揺すった。

『星の王子さま』河野万里子訳

フランス語の抜粋における太字の“le”は前に出てくる唯一の男性名詞“un petit prince”を受けている。フランス語ではこのように代名詞で対応できるが、日本語訳の方では日本語名詞に性差がないため、「王子さま」(太字部分)を再掲せざるを得ない。


また、「なぜ2種類の名詞の区分が“男性”と“女性”なのか?例えば『右名詞』と『左名詞』でもよかったのではないか」という疑問が浮かぶかもしれないが、これは単純に男性と女性であれば、人称代名詞との併用が可能だからだろう。前出の名詞が主語にくれば人称代名詞“il/elle”(英語の"he/she")で対応できるし、逆に直接目的語であれば先ほどの"le/la"は人を受けることも可能だ。


以上が、フランス語の名詞に性が存在するメリットを、私なりに積極的に探した結果だ。一方で、間接目的語には性差がなかったり、実際に直接目的語の性がわかることによって文意が正確に把握できるケースは稀だったりと、それがあることでの煩わしさに比べると得られるものはごく僅かであるように思料する。

それでも、フランス語にそれが存在してしまっている限りにおいて、私たちはそれをきちんと覚えなければならない。誠に遺憾である。


これからフランス語を学習する予定で、名詞の性に恐れ慄いているそこの子羊のあなた。それは重要な文法事項ではないので、まずは安心してほしい。

そんな些細なことよりも、あなたをかき乱すであろう、日本人からすると理解に苦しむその他の文法事項がたくさん、待ち受けているのだから…


語学の学習って、楽しいね…ふふふ…


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