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Ce n’est pas si mauvais que ça.

フランクフルト経由でパリに戻ってきたが、道中なかなかハードであった。

羽田からフランクフルトに飛ぶ飛行機が遅れ、当初乗る予定だったフランクフルトからパリに向かう飛行機だとトランジットに間に合わない可能性が出た。羽田のチェックインカウンターで最初はフランクフルトを翌日出る飛行機が空きがないと言われたが、調べ直してもらったところ、当初の便から1時間半後のフライトに若干空席があったので、すぐにそちらに変更してもらった。

フランクフルトに到着したのは19時ごろ。EU圏に入る際の審査は、開いている窓口が限られていたり、やたらと審査に時間がかかる人がいたり、とかなり待たされた。もし元のままのフライトだったら確実に乗り遅れていた。

フライト変更に伴い、ルフトハンザ航空からフランクフルト空港で使えるバウチャーをもらっていた。それで美味しいサンドイッチを購入し、のんびりとフライトを待った。

パリ到着し、荷物を受け取り、タクシーに乗ろうと乗り場へ向かうと長蛇の列。一部道路の閉鎖や嵐によるフライト遅延等、複数の理由が重なり、空港までくるタクシーがほとんどないとのことだった。

その列を見て諦めてUberで配車を試みる人が、ひとり、またひとりと列から離れていった。相変わらずタクシーの台数は少なかったが、思いがけずすぐに私の順番が回ってきた。

タクシーの台数が少ないこともあり、相乗りになった。タクシーの運転手からすればホクホクだろう。空港からパリまでの運賃は決められている。運転自体は一度だがそれぞれのお客から空港とパリの間の定められた料金を請求できるのだから。

このようにして私は、無事にパリの自宅に戻ることができた。今はレンヌに向かう電車を駅で待っているが、こちらも早速遅延の連絡が入った。とはいえそこまでひどい遅れではない。きっとどうにかなるのだろう。

あ、腕時計を家に忘れてきたみたいだ。まぁいいさ。スマートフォンで十分だ。


ここ数日、仕事でもプライベートでも、細々とした悪いニュースが頻繁に入ってきたが、その度に、

“Ce n’est pas si mauvais que ça”

と口にしていた。意味は「そんなに悪くない」といったところ。英語だと“It's not that bad”だが、やはりなんとなく違いがあるように思う。フランス語がある程度わかる人には伝わると思うが、この「que ça」の部分が“いい味”を出しているのだ。

確かに好ましくない状況ではあるものの、想定されうるさらに悪い状況に比べると大したことはない。「不幸中の幸い」に近いが、よりポジティブなニュアンスが強いような気がする。

先述のフレーズは、悪い出来事に関する報告を受ける度に、自然とその相手にそう返していた。特段自分に言い聞かせていたわけではない。実際にそのように感じていたのは、状況そのものがそこまで深刻でなかったことも当然あるが、もしかしたら、私自身の度量が、ほんの少しだけ大きくなった証拠かもしれない。

これまで、いろいろあったからね…フランス生活はストやデモといった考慮しなければならない不確定事項ばかりだし、起業は想定外の連続だし。


とはいえ、悪いことばかりではなく、たまにはいいことも起きてほしい。ここ最近、いいことよりも、“Ce n’est pas si mauvais que ça”で乗り越えられる悪いことばかり起きているような気がする。

あるいは、実は「幸せ」とは、いいことがあれこれ起こることではなく、“Ce n’est pas si mauvais que ça”で済ませられることばかりが降りかかることなのかもしれない。どうなのだろう。


いや、やっぱり、たまにはいいことが起きてほしいな…何かないかな、いいこと…


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