適切な購買
ときにふと思う。私は「適切な人」に販売できているのか、と。
以前もどこかで書いたが、「どんな人にçanomaの香水を使ってほしいか」という質問に、私はいつもうまく回答できないでいる。香りを気に入って、設定された定価を出すことに抵抗がない人であれば、どんな人であれ嬉しい。
上記2条件を満たす人がどこにいるのかわからないため、私は呼ばれればどこにでも行って店頭接客を行なっていた。それが“正しい”ことだと信じて疑わなかった。
ブランドを運営してあと2ヶ月ほどで3年になるが、この間に今まで見えていなかったものが見えるようになった。特に、それまではいかに露出を多くするかを考えていたが、それが必ずしもいいことではないと思うようになったのは、私の中でのブランドに関する大きな発見のひとつであろう。
露出が多くなればなるほど、人気も上がってくる。人気になると、商品そのものが気に入ったわけではないにも関わらず購入する人が増えてくる。この状態を「人気先行」と呼び、ブランドにおいては飽きられるひとつの大きな原因となる。
ただし、「いい商品」であるだけで露出がなければ、誰の目にも触れられず、結果としてその商品を気に入ってくれる人さえも購入せずに終わってしまう。そういう意味で、ブランドの実力に合わせた適切な露出は重要なのだが、その「適切な露出」というのがまたまたどうして難しい。いつの時代も、難しいのは「適切」とか「適量」とか「適切」とか、「適」がつくものなのだ。
ブランドの「適切な露出」の難しさは、そもそもその「適量」がどの程度なのかがわかりにくい上に、その「適量」が刻一刻と変わるところにあろう。ブランドが大きくなる中で、「適量」も併せて増えていかなければならない。ただその「適切な露出」をいつも「適量」でできているブランドなんて、ほぼ存在しない。だいたい「過剰」か「過小」なのだ。
そんなことを考えていると、çanomaの「適量」はどこにあるんだろう、今は「過剰」なのか「過小」なのか、どっちなんだろう、と悩んでしまう。正直にいうと、現状は若干だが「過剰」なのではないか、と私は思っている。先の2条件を満たす人だけではなくて、「人気」を理由とした購買が多少なりとも出ているように感じているのだ。
仙台藤崎でのポップアップで店頭に立ちながら、私は今の「適切な露出」を探している。「適切な人」にどうやってきちんとアプローチをして、より価値のある購買をしてもらえるか、ずっと考えている。どこまで私が店頭に立つのが正しいのか、ポップアップへの参加は減らすべきなのではないか、等々…悩みは尽きない。
「プレミア感を出すためにクリエーターの店頭接客時間を意図的に減らすべき」という主張をよく耳にするが、本質的な議論ではないように思料する。大切なのは「人気」と「露出」のバランス、そして「適切な人」にきちんと語りかけることなのだ。
私はそんなふうに、思うな。
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