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守護霊にフレンチクルーラー

あれから一年が経った。


2024年3月26日午前4時30分頃、母はあの世へと旅立った。「死の瞬間」をどのように定義するかは非常に難しい問題だが、ここでは「息を引き取る」という言葉通り、呼吸が停止した時がそのひとつの一般的な解釈だろう。

ケアマネージャーからは「最期は大きく息を吸うか、大きく息を吐くか、どちらかの人が多い」という話を聞いていたが、母の場合はそのどちらでもなく、呼吸がだんだんと弱くなっていき、最期はそのまま静かにそれが消えていった。

死の直前の1週間は特に大変だった。きちんとした意思疎通が取れるような状況ではなかったし食事もほとんど摂れていなかったから体力なんてほとんど残っていなかったはずなのに、どういうわけか何度もベッドから出ようとした。立ちあがろうとする彼女の意思と力は思いがけず強く、それをなだめて寝かしつけるというのを一晩中繰り返した日もあった。

だから正直にいうと、死の直前はそれから解放されることに少しだけ安堵した。それを不謹慎だと捉える人も中にはいるかもしれないが、それだけ私は追い込まれていた。


一つ前の記事を投稿するために見出し画像を探していた際、スマートフォンに保存されている写真を新しいものから順にスクロールして母の介護中に撮った写真に辿り着くまでの間、4つの季節が過ぎていったことを知った。流れゆく写真がまるで走馬灯のようだった。

たった4つの季節しか過ぎていなかったが、その間に多くのことがあったような気がする。

気のせいかもしれないけど。


今朝(26日)は4時に起きて、noteの加筆修正をして4時半にアップした。その後このnoteをつらつらと書いている。なんだか筆が進まない。もう6時半だ。

ふと思い立って、母に線香をあげることにした。いつも通り「çanoma 3-17 早蕨」のお香だ。母のお気に入りだった。

普段は家を出る前や仕事前に焚くことが多いが、今日は早めにしてみた。箱から線香を一本取り出してライターで火をつける。毎日使っているからだろう、ライターの火がかなり小さくなってしまった。

お香を立てて、おりんを鳴らす。高岡で買った砂張のおりんはきっと母も気に入ってくれているはず。

目を瞑って手を合わせる。今日はいつもより長めにしてみよう。

目を瞑りながら、母のことを感じようと試みる。すぐそばに母がいるような気がする。私の右後ろ、母が私の肩にその小さくてあたたかい手を置く。


「守護霊になってあげるから」

生前母はよく私にそういった。その時はいつか母がいなくなってしまうことすらよく理解できていなかった。

今母は、間違いなく私のそばにいる。私はそれを、今朝目を瞑りながら、改めてしっかりと感じることができた。


そうか、本当に守護霊になったんだ。


この記事は26日の早朝に書かれている。今日は思い切って私のわがままで一日休みにすることにした。母との思い出を改めて振り返りながら、守護霊になった彼女を労わってあげたい。ミスドでフレンチクルーラーでも買ってあげようかな。

そして私自身も、この一年「母のいない世界」に慣れるために思いがけず試行錯誤した。今はそれにだいぶ馴染めてきたが、きっとかなり疲労も溜まっているはず。今日は一息つこうと思っている。

私は、オールドファッション、かな…


きっと守護霊は、私に向かってこういうのだ。

「またオールドファッション。絶対フレンチクルーラーの方が美味しいのに〜」


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